eコマースを通じてなぜ、大手eコマースサイトに頼っていると、小売企業の競争力は低下してしまうのでしょうか。
正木eコマースにおいて、消費者が最も気にする点は価格です。インターネットでは価格の比較が瞬時にできるため、常に価格競争にさらされることになります。一方で、大手のeコマースサイトは手数料がかかります。そこに商品を卸して生き残るためには、薄利多売の道しかありません。品質や機能性よりも、価格を重視して商品を開発しなければいけなくなるからです。利益が薄いことを前提にした戦略では、負のスパイラルに陥っていきます。
私は、オンライン中心の時代に小売企業が生き残る究極の道は、受注生産だと思っています。しかし、これまでの受注生産品のように、長く待たされるものではだめです。デジタルの力を使い、企業全体が俊敏に動くことで、それが実現できると思っています。
加藤企業と消費者の新しい関係を築くには、単純に顧客接点を連携させるだけでなく、組織のあり方、人事評価の仕組みなども含めて手を入れなければいけません。ビジネスそのものを変革し、企業全体を変える必要があります。これをアクセンチュアではBX(ビジネス・オブ・エクスペリエンス)と呼んでいて、セールスとコマースの変革は、BXの4つの重点領域のうちの一つと位置づけています。
2021年2月、ビジネットシステムがアクセンチュアの一員となりました。これはBX推進のためのコマース強化策でしょうか。
加藤はい、そうです。アクセンチュアでは、リアルな店舗、eコマース、コンタクトセンターという3つの顧客接点を連携して、消費者に一貫した体験を提供する「シームレスカスタマーエクスペリエンス」を意識して企業を支援しています。ですが、マーケティングとサービスにおける豊富な実績に比べて、コマースの部分は能力が不足していました。そこを埋めるために最もふさわしい企業がビジネットシステムだったのです。
ビジネットシステムは、Salesforceのコマース製品である「Commerce Cloud」の導入実績が日本で最も豊富な開発企業の1社です。Salesforceは、CRMをはじめ、マーケティング、サービスなどのアプリケーションが同一のプラットフォームで稼働しており、すぐに連携が可能です。ビジネットシステムの開発力を得たことで、アクセンチュアとしてシームレスな顧客体験を支援できる体制が整ったと考えています(図2)。
図2:両社一体となり、シームレスな顧客体験を実現
正木一般的に、eコマースサイト開発会社ではUIやUXを重視し、サイトのデザインやボタンの大きさ、配置などに対するノウハウを持っていて、それを実装していきます。もちろんそれらは大事なことですが、オンライン上の顧客体験の本質ではありません。いくら表面を着飾っても、バックのオペレーションが弱いと結局は優れた体験が実現できません。そこで、ビジネットシステムではバックエンドのシステムも独自に開発して、注文された商品が素早く出荷できるよう支援をしてきました。
ですが、コロナ禍でeコマースが急増し、例えば、購入後のサポートやサービスの部分で困っている消費者が急増しています。ビジネットシステム単体では、eコマースサイトとそのバックのシステムしか提供することができませんでした。アクセンチュアに参画したことで、バリューチェーン全体を最適化し、小売業界を変えていくお手伝いができるようになると考えています。