日本の製造業が河野日本の製造業は、「根本からの自前主義」が大前提だったと思います。
島田当たり前ですが、他社でもできることは自社の強みにはなりません。なので、例えば、1番になるまで取り組むなど、強みと答えられるまで徹底的に追求する必要があります。自社の既成概念を超えて取り組まなければいけません。
企業間の取引でも同じです。例えば電気自動車の時代に、クルマは全く違う構造になるはずです。そのときに、ガソリン車の磨き込んだサプライチェーンがあっても、部品の調達ができるのか、根本から考えなければいけないのです。
河野東芝では島田さんがリードして、レシートのデジタル化である「スマートレシート」と、IoTサービスの「ifLink」を軸としたサービス事例が早くも出てきています。これらは新しいつながりと価値を生み出すものとして進めているということですね。
島田はい。スマートレシートは、グループ企業の東芝テックが、POSレジで圧倒的なシェアを持っているからこそ始めたサービスです。今まで紙を受け取るだけでほとんど活用していなかったレシートの購買データを個人が管理できるサービスを作ることで、ネットワークを広げようとしています。またこれは、企業がマーケティングや生産に活用することもできます。
欧米の巨大企業は、既存の法律が存在しないところにも賢く攻め込んできます。しかし日本企業は逆で、法律がないところに進んではいけないと考えている。この差は非常に大きいと思います。時代によって常識は変わるのです。今時点の常識が、絶対的なものと考えず、自ら新しいコンセプトを打ち立てていき、そのコンセプトと社会を合致させていくよう、対話を重ねていくことが必要です。
新しい社会の標準を作る際に、どういう方法を取るかも大事です。多大な資金が必要な米国式の「お金を燃やす」、複数の国同士が協議して決める欧州式の「デジュール」がありますが、どちらも相当の経済規模が必要です。そこで私は第3の道である「アセットオープン化」を勧めています。自社の資産を先に公開し、共創の場をつくる方式が、日本には一番合っていると思います(図1)。
図1:スケールフリーネットワークを作る方法
河野日本の製造業の現場には、長年蓄積してきた強みがあります。しかし、なかなかその強みを生かすことができずにいます。どうやって活性化させればいいのでしょうか。
島田私は「宝の山」と呼んでいますが、現場には地道に磨いている研究開発の強みが隠されています。そこを見直すことで、次のコンセプトにつなぐことができます。東芝では量子暗号通信に関する研究を20年以上続けてきたからこそ、ここから本格的な取り組みが始められるのです。
最大の問題は、強みを再構成して、実ビジネスに生かすことができる人材がほとんどいないことです。日本企業は内部留保も多く、その気になれば投資できます。私は冗談で「バブル時代を思い出して、大胆にいったほうがいい」と話しています(笑)。