レガシーシステムを待ち受けるレガシーシステムの維持がますます厳しくなることは認識しつつも、モダナイゼーションがうまく進まない企業も多いようです。なぜでしょうか。
西尾モダナイゼーションのアプローチに問題があると感じています。
企業はまず、今のシステムを丸ごと新しいシステムに「リビルド」することを考え、開発に着手します。いわゆるDXの考え方で、企業の基幹システムを含めたデジタル化を一気に進める方法です。確かに、理想像に向けてゼロベースで開発を行うことはベストな方法に思えます。しかし実際は、そう簡単にはいきません。事実、途中で頓挫して巨額の損失を計上した例や、企業と開発ベンダーの間で訴訟にまで発展する例もあります。
その理由は、基幹システムの規模が大きすぎて、作り替えが事実上不可能だからです。ここを理解する必要があります。大企業が長年にわたり運用してきたレガシーな基幹システムは、何万本のプログラム、何千万のプログラムステップで構築されています。これらをすべて解読し、作り替えるには少なくとも5年、数百億円の費用がかかるはずです。それが可能な体力があるのは、ごく一部の企業だけです。
中野また、リビルドではレガシーシステムに付随した業務を全面的に見直すことが必要になります。企業にとっては、ここが大きな障壁になるでしょう。既存の業務プロセスと組織を抜本的に見直すためには、現場の説得、IT部門の抵抗勢力との戦いなど、相当のエネルギーが必要です。
その中で、作り替えに代わる現実的な方法として近年注目されているのが「リライト」です。これは、既存のCOBOLなどで書かれたプログラムコードを、自動でJavaというコードに書き換えるものです。既存の業務プロセスを変えないため、ビジネス戦略上の変化はありませんが、維持管理費用の高騰、メインフレームサーバーの管理者やCOBOLエンジニアの枯渇など、これまでお話ししてきた「2025年の崖」にまつわる諸問題を解消することができます(図1)。
図1:モダナイゼーションのアプローチ方法
他にモダナイゼーションに当たって、注意したほうが良いことはありますか。
西尾多くの企業が、モダナイゼーションの際にレガシーシステムを維持管理しているベンダーに依頼してしまいがちですが、それが正解とは言えません。
ベンダーも、一企業ですから、既存の基幹システムの維持管理である程度の売り上げを立てている取引先に、自らコストダウンの提案をしてくることは考えにくいです。また、言いすぎかもしれませんが、最悪、モダナイゼーションのプロジェクトが頓挫しても、引き続き既存システムの面倒を見れば収益は維持できます。そうしたモチベーションのベンダーに相談するのは、良い結果を生まないでしょう。
企業の基幹システムは、まさに事業の根幹を担う心臓部です。その将来像は、ベンダーの商売の都合に左右されるものであってはいけません。企業経営者は、この観点に立ってレガシーの見直しを考えていただきたいと思います。