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中国・嘉興(ジャーシン)に世界企業が続々進出 上海の“ビジネス新都心”に熱視線 地元開発区の「アフターフォロー」に高評価 中国・嘉興(ジャーシン)に世界企業が続々進出 上海の“ビジネス新都心”に熱視線 地元開発区の「アフターフォロー」に高評価
中国・嘉興(ジャーシン)に世界企業が続々進出 上海の“ビジネス新都心”に熱視線 地元開発区の「アフターフォロー」に高評価

揚子江デルタ地域の主要都市から「1時間経済圏」

嘉興経済技術開発区(JXEDZ)に世界の有力企業が続々と拠点を設けている。
中国経済の中心地・上海からクルマでわずか1時間。今や上海の“ビジネス新都心”となった。
地元開発区は日本企業の誘致に積極的だ。最大の売りは「アフターフォロー」だ。

 中国浙江省の嘉興市は、上海に隣接した常住人口480 万人の都市。上海の中心部からクルマで1 時間(高速鉄道では上海・虹橋駅から30 分)と身近ながら、日本での知名度はそう高くない。そもそも嘉興を何と読むか。
日本では「かこう」と呼ぶ向きもあるが、「ジャーシン」と読むのが一般的だ。

 中国のほとんどの人は嘉興の名を知っている。有名なのは、2021年に結党100周年を迎える中国共産党の「記念の地」としてだろう。共産党の成立を宣言した第1 回全国代表大会の閉会式は、嘉興市内中心部にある南湖の紅船で行われた。南湖の写真は数々の書物にも載っており、全国から訪問者は絶えない。

 古代文明の遺跡が発見されたり、数多くの文化人を輩出したりもしている。市内には運河の面影を残す街並みもあり、観光客も多い。

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世界的企業も選んだ「JXEDZ」

 そして今、この嘉興は「ビジネス新都心」として脚光を浴び始めた。

 中国最大の経済発展地域であり、国を挙げて一体化戦略を進める「揚子江デルタ地域」の中央にある。上海、杭州、蘇州、寧波といった大都市に囲まれ、いずれもクルマで1 時間程度の距離。2010 年に国家級の経済技術開発区に指定されて以降、工業用地などを急ピッチで整備。世界的な企業が製造拠点として続々と進出してきた。

 デンマークの玩具大手「LEGO(レゴ)」や、米国の食品大手「MARS(マース)」などは、アジア最大級の工場を嘉興に設けた。日系企業の進出も加速し、JXEDZ 内では2020 年9 月時点で72 社に。パナソニックは家電事業としては16 年ぶりになる新工場の建設地として嘉興を選択、2020 年9 月に起工式を行った。中国で需要が伸びている調理家電の製造を担う。

 コロナ禍で大打撃を受けた世界経済の中で、中国の復調ぶりは目を見張る。その牽引役は内需の強さ。食品や生活関連などの中国内需に対応するモノづくりの拠点として、揚子江デルタ地域の中央に位置するのは魅力だ。製品を中国国内に効率的に運びやすい。港や空港にも近く、輸出入のしやすさもある。しかも工業用地の地価などビジネスコストは上海などと比べて安い。

 開発区内ではマンションなど不動産開発も進む。まさに「職住接近」した嘉興の魅力はますます注目されてくるだろう。

嘉興が選ばれる主な理由
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地図
若い高度人材が集まりやすい理由

 地の利は、ヒト集めにも効く。新たな需要を喚起するためにはイノベーションが欠かせない。カギを握るのは生産技術や研究開発、設計、企画などを担う「人材」の確保だ。この点、上海や杭州からの通勤が可能という地の利は大きい。さらに、嘉興に定住しようという若い層も増えてきたという。

 嘉興の生活コストは低い。住宅取得価格は上海に比べ圧倒的に安い。若年層でも、住宅を取得して家庭を築くという夢を実現できるため、嘉興に高度人材が集まりやすい構図になっている。安心してイノベーションに挑めるわけだ。環境も良く、市内は緑にあふれている。


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困りごと相談に乗る地元開発区

 嘉興に既に進出した日系企業の評価はどうか。口を揃えてほめるのが、「地元開発区のきめ細かな対応」だ。進出前の綿密な打ち合わせはもちろん、進出した後に発生する諸問題の解決に奔走してくれるのだという。

 嘉興経済技術開発区管理委員会主任の盛付祥氏のモットーは、「誘致企業と開発区のWIN-WIN の関係づくり」だ。誘致企業が発展することで開発区も勢いづくという考え方の下、事前調査や事後の問題処理に全力を傾けるのが同開発区の指針になっている。

 「開発区として、できることとできないことをはっきりさせるのが大事。できないことは約束しない。曖昧なままに『大丈夫です』と言いたくない。信頼関係はそこから生まれない」。盛主任はそう語る。

 進出希望の企業からは、事前に数多くの質問や要望を受け付けて、徹底的に開発区内で検討する。進出した後での「アフターフォロー」も特徴だ。10 人以上在籍する日本語堪能なスタッフが、企業訪問を繰り返す。「困りごと相談」だ。企業が抱える様々な問題について、開発区として解決の一助を担えるかどうかを考える。

 中国に新規の進出を考えている企業はもちろん、中国での追加投資を検討している企業にとっても、「ジャーシン」を訪れてみる価値はありそうだ。

嘉興経済技術開発区の盛付祥主任に聞く 企業と一緒に全力で課題解決

問:嘉興はどんな街ですか?

 中国共産党の発祥の地(上海と嘉興)として知られています。2021 年に共産党結党100 周年を迎えます。再び脚光を浴びるのは間違いありません。

 この地は長い歴史があります。約7000 年前の稲作を中心とした古代文明の遺跡もあります。市内には運河のある街並みが残り、観光客も多い。歴史と文化は嘉興の人々に心の余裕を育みました。だから外来者に対しても優しい。海外企業の皆さんから、「住みやすい」と言ってもらっています。

問:経済技術開発区の特長は?

 何と言ってもロケーションです。揚子江デルタ地域の中心にあるため、上海や杭州など主要都市は「1 時間経済圏」です。東京でいえば、横浜のような位置づけでしょうか。製品を揚子江デルタ地域はもちろん、全国にも届けやすいです。

 そしてビジネスコストが安い。生活コストも安いから若い人たちは家を持ち、貯金もできる。安心して暮らしながら働けます。技術者の新規流入率は中国で第4 位です。

 開発区としてのプラットホームは充実しています。2019 年に全国219 か所の国家級開発区で12 位にランキングされています。浙江省では1 位です。

問:開発区として心がけていることは。

  開発区の仕事は、美辞麗句を並べて誘致し、それを実現してしまえば終わり――そんなことではいけません。事前に徹底的に課題をディスカッションし、誘致を実現してからも、困りごとはないかを常に伺っていくことが必要です。

 企業との事前打ち合わせでは、開発区として「できること」と「できないこと」をはっきりさせる。できないことは約束しません。誠実に答えます。私は日本企業が好きです。なぜなら日本企業は投資する前にしっかり調査する。話し合う余地が大きいから、開発区としても、やり甲斐があります。

 結婚前にお互いの気になる点を解決しておけば、結婚後のいざこざは避けられますね。それと同じです。そして結婚後もきちんとアフターフォローして、信頼関係を持続させる。企業と開発区のWIN-WIN 関係を築くのも同じだと考えています。

嘉興経済技術開発区管理委員会 盛付祥 主任嘉興経済技術開発区管理委員会 盛付祥 主任
世界的企業も選んだ「JXEDZ」

 そして今、この嘉興は「ビジネス新都心」として脚光を浴び始めた。

 中国最大の経済発展地域であり、国を挙げて一体化戦略を進める「揚子江デルタ地域」の中央にある。上海、杭州、蘇州、寧波といった大都市に囲まれ、いずれもクルマで1 時間程度の距離。2010 年に国家級の経済技術開発区に指定されて以降、工業用地などを急ピッチで整備。世界的な企業が製造拠点として続々と進出してきた。

 デンマークの玩具大手「LEGO(レゴ)」や、米国の食品大手「MARS(マース)」などは、アジア最大級の工場を嘉興に設けた。日系企業の進出も加速し、JXEDZ 内では2020 年9 月時点で72 社に。パナソニックは家電事業としては16 年ぶりになる新工場の建設地として嘉興を選択、2020 年9 月に起工式を行った。中国で需要が伸びている調理家電の製造を担う。

 コロナ禍で大打撃を受けた世界経済の中で、中国の復調ぶりは目を見張る。その牽引役は内需の強さ。食品や生活関連などの中国内需に対応するモノづくりの拠点として、揚子江デルタ地域の中央に位置するのは魅力だ。製品を中国国内に効率的に運びやすい。港や空港にも近く、輸出入のしやすさもある。しかも工業用地の地価などビジネスコストは上海などと比べて安い。

 開発区内ではマンションなど不動産開発も進む。まさに「職住接近」した嘉興の魅力はますます注目されてくるだろう。

嘉興が選ばれる主な理由
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パナソニックの新工場起工式

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高速鉄道「嘉興南駅」周辺の将来。都市開発が進む

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上海や杭州にはクルマで1時間の近さ

地図
若い高度人材が集まりやすい理由

 地の利は、ヒト集めにも効く。新たな需要を喚起するためにはイノベーションが欠かせない。カギを握るのは生産技術や研究開発、設計、企画などを担う「人材」の確保だ。この点、上海や杭州からの通勤が可能という地の利は大きい。さらに、嘉興に定住しようという若い層も増えてきたという。

 嘉興の生活コストは低い。住宅取得価格は上海に比べ圧倒的に安い。若年層でも、住宅を取得して家庭を築くという夢を実現できるため、嘉興に高度人材が集まりやすい構図になっている。安心してイノベーションに挑めるわけだ。環境も良く、市内は緑にあふれている。

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(上)市内中心部にある「南湖」 (中左)月河古鎮、観光客も多い (中右)南湖紅船 (下)発展を続ける開発区

困りごと相談に乗る地元開発区

 嘉興に既に進出した日系企業の評価はどうか。口を揃えてほめるのが、「地元開発区のきめ細かな対応」だ。進出前の綿密な打ち合わせはもちろん、進出した後に発生する諸問題の解決に奔走してくれるのだという。

 嘉興経済技術開発区管理委員会主任の盛付祥氏のモットーは、「誘致企業と開発区のWIN-WIN の関係づくり」だ。誘致企業が発展することで開発区も勢いづくという考え方の下、事前調査や事後の問題処理に全力を傾けるのが同開発区の指針になっている。

 「開発区として、できることとできないことをはっきりさせるのが大事。できないことは約束しない。曖昧なままに『大丈夫です』と言いたくない。信頼関係はそこから生まれない」。盛主任はそう語る。

 進出希望の企業からは、事前に数多くの質問や要望を受け付けて、徹底的に開発区内で検討する。進出した後での「アフターフォロー」も特徴だ。10 人以上在籍する日本語堪能なスタッフが、企業訪問を繰り返す。「困りごと相談」だ。企業が抱える様々な問題について、開発区として解決の一助を担えるかどうかを考える。

 中国に新規の進出を考えている企業はもちろん、中国での追加投資を検討している企業にとっても、「ジャーシン」を訪れてみる価値はありそうだ。

嘉興経済技術開発区の盛付祥主任に聞く 企業と一緒に全力で課題解決

問:嘉興はどんな街ですか?

 中国共産党の発祥の地(上海と嘉興)として知られています。2021 年に共産党結党100 周年を迎えます。再び脚光を浴びるのは間違いありません。

 この地は長い歴史があります。約7000 年前の稲作を中心とした古代文明の遺跡もあります。市内には運河のある街並みが残り、観光客も多い。歴史と文化は嘉興の人々に心の余裕を育みました。だから外来者に対しても優しい。海外企業の皆さんから、「住みやすい」と言ってもらっています。

問:経済技術開発区の特長は?

 何と言ってもロケーションです。揚子江デルタ地域の中心にあるため、上海や杭州など主要都市は「1 時間経済圏」です。東京でいえば、横浜のような位置づけでしょうか。製品を揚子江デルタ地域はもちろん、全国にも届けやすいです。

 そしてビジネスコストが安い。生活コストも安いから若い人たちは家を持ち、貯金もできる。安心して暮らしながら働けます。技術者の新規流入率は中国で第4 位です。

 開発区としてのプラットホームは充実しています。2019 年に全国219 か所の国家級開発区で12 位にランキングされています。浙江省では1 位です。

問:開発区として心がけていることは。

 開発区の仕事は、美辞麗句を並べて誘致し、それを実現してしまえば終わり――そんなことではいけません。事前に徹底的に課題をディスカッションし、誘致を実現してからも、困りごとはないかを常に伺っていくことが必要です。

 企業との事前打ち合わせでは、開発区として「できること」と「できないこと」をはっきりさせる。できないことは約束しません。誠実に答えます。私は日本企業が好きです。なぜなら日本企業は投資する前にしっかり調査する。話し合う余地が大きいから、開発区としても、やり甲斐があります。

 結婚前にお互いの気になる点を解決しておけば、結婚後のいざこざは避けられますね。それと同じです。そして結婚後もきちんとアフターフォローして、信頼関係を持続させる。企業と開発区のWIN-WIN 関係を築くのも同じだと考えています。

嘉興経済技術開発区管理委員会 盛付祥 主任嘉興経済技術開発区管理委員会 盛付祥 主任