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「嘉興未来会」第2弾  北京で開催 テーマは「ものづくりイノベーションの新潮流」 「嘉興未来会」第2弾  北京で開催 テーマは「ものづくりイノベーションの新潮流」

2021年7月に北京で開催された、第2回「嘉興未来会」。約60社が集まった

「嘉興未来会」第2弾  北京で開催 テーマは「ものづくりイノベーションの新潮流」

2021年7月に北京で開催された、第2回「嘉興未来会」。約60社が集まった

 中国浙江省・嘉興(ジャーシン)市の経済技術開発区は、日系企業を対象とした交流会「嘉興未来会」の第2弾を、2021年7月中旬に北京市内のホテルで開催した。

 「ものづくりイノベーションの新潮流」をテーマとし、日系の製造関連企業を中心に約60社が参加した。

 嘉興市は、上海や杭州(浙江省)など揚子江デルタ地域の主要都市からの交通アクセスがよく、近年は上海の“ビジネス新都心”として注目を集め、日系企業をはじめ、多くの外資系企業からの関心も高い。嘉興経済技術開発区も、都市型開発区としての地の利を生かし、急速に発展している。

 嘉興経済技術開発区内には、嘉興未来会の第1回目で紹介された「馬家浜(マージャーバン)健康食品小鎮(園区)」以外に、今回のテーマとも関連する“ものづくり”の拠点「嘉興経開区先進製造業産業基地(総計画面積23.22k㎡)」が設置されている。

嘉興経開区先進製造業産業基地

嘉興市内の「嘉興経開区先進製造業産業基地」

 中国浙江省・嘉興(ジャーシン)市の経済技術開発区は、日系企業を対象とした交流会「嘉興未来会」の第2弾を、2021年7月中旬に北京市内のホテルで開催した。

 「ものづくりイノベーションの新潮流」をテーマとし、日系の製造関連企業を中心に約60社が参加した。

 嘉興市は、上海や杭州(浙江省)など揚子江デルタ地域の主要都市からの交通アクセスがよく、近年は上海の“ビジネス新都心”として注目を集め、日系企業をはじめ、多くの外資系企業からの関心も高い。嘉興経済技術開発区も、都市型開発区としての地の利を生かし、急速に発展している。

 嘉興経済技術開発区内には、嘉興未来会の第1回目で紹介された「馬家浜(マージャーバン)健康食品小鎮(園区)」以外に、今回のテーマとも関連する“ものづくり”の拠点「嘉興経開区先進製造業産業基地(総計画面積23.22k㎡)」が設置されている。

嘉興経開区先進製造業産業基地

嘉興市内の「嘉興経開区先進製造業産業基地」

嘉興経開区先進製造業産業基地 レンタル施設

嘉興経開区先進製造業産業基地は、レンタル施設も充実している

嘉興経開区先進製造業産業基地 レンタル施設

嘉興経開区先進製造業産業基地は、レンタル施設も充実している

中国で成長するには「企業の変革力」が必要に

 交流会の冒頭では、嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏から、中国の製造業におけるイノベーションの実態について、有意義な交流ができることを期待するとした挨拶があった。嘉興経済技術開発区は、交通の利便性、ビジネスコストの優位性及びスタッフのきめ細かなサービスなどで、すでに数多くの大手外資系企業が進出、或いは進出を検討している。

俞亜明氏

嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏

 折しも、2021年7月1日に中国共産党建党100周年を迎え、中国共産党の発祥地の1つとして有名な「南湖」が嘉興市にあることから、嘉興市も国内外から大きな注目を集めた。俞副主任は、「嘉興市は中国共産党の記念すべき『始まり』の地であるが、外資系企業における“ものづくり”の拠点としても、ここ(嘉興)から多くの製造業がさらに大きな発展を促進できるものと確信している」と述べた。

 かねてより“ものづくり”において、日系製造業は海外から高い評価を受けているが、中国市場において加速する「製造業のイノベーション」の波に乗るためには、「企業の変革力」が必要である。中国でビジネス展開する外資系企業にはどのような姿勢や取り組みが求められるのか、成功事例を紹介する講演を通じて理解を深めてほしい、と交流会の背景についても説明した。

交流会会場

「ものづくりイノベーション」への関心は高い

 嘉興経済技術開発区としての開催趣旨の説明を受け、日本貿易振興機構(JETRO)北京代表処所長、北東アジア地区中心総代表の高島竜祐氏が登壇。嘉興経済技術開発区が北京に駐在事務所を設け、日本語でコミュニケーションができるスタッフなど4名を常駐させているなど具体的な対応を挙げ、嘉興経済技術開発区が日系企業のニーズや課題に対して真摯に向き合う姿勢があることを紹介した。さらに、ソフト面においても手厚いサポートがあることから、ストレスフリーのコミュニケーションができるのでは、と述べた。

 嘉興市は、上海市や杭州市、蘇州市などからのアクセスが良いうえに、上海浦東国際空港付近に発着する、新たな高速鉄道も建設されている。実は、一人当たりのGDP 10.62万元が中国の平均を上回ることからも豊かで恵まれた土地という印象を受けるとし、嘉興市のさらなる発展への期待感の高さを示した。

毎年開催する「桜祭り」

 嘉興市の常住人口は550万人で、日本で言うならば兵庫県の人口に相当する。外資誘致額が全国5位にランクインするなど、揚子江デルタ地域の中心にある嘉興市は優れた投資地としても名高い。新しい高速鉄道が完成すれば、上海浦東国際空港からもおよそ30分の移動時間になる。外資系企業にとっても、海外との交通アクセスが多様化することで、「地の利」の価値がさらに高まる。

 また、嘉興経済技術開発区では、誘致後の企業へのサポートにも余念がなく、常に企業の立場にたって外資系企業が抱える課題や悩みに対応しているという。嘉興経済技術開発区のサービスクオリティーが年々上がっており、「企業の発展こそが開発区全体の発展につながる」という理念で、一貫して「共に発展していく姿勢」を見せ、企業と地元をつなぐ交流などにも力を注いでいる。毎年、日系企業主催での「桜祭り」を支援、既に10回開催した。

 嘉興経済技術開発区による、開発区の具体的な魅力について流暢な日本語での紹介を終えると、続いて講演のセッションに入った。今回は3者が登壇した。

 最初の講演は、中国最大級の技術・スタートアップ専門メディア「36Kr Global」のCEO・馬成氏が、「ものづくりイノベーションの新潮流」について、テックメディアという視点から日系企業へ提言した。

日系企業のイノベーションを阻む壁とは

 36Kr Globalは、中国語、英語、日本語(「36Kr Japan」)で、中国とアジアのスタートアップ企業に対する総合的な支援活動を行っている。馬成氏は、中国の製造業におけるオープンイノベーションについて「伝統的なメーカーがスタートアップ企業と提携することで、大きく変化した」点を指摘し、中国のスタートアップ企業と提携した日系企業の事例を紹介した。

 現在は、「国を問わず、伝統的産業はとりわけ優秀なスタートアップ企業と提携することを望んでいる」と話し、デジタル社会においては、いかに素早く「変革」するかが重要な鍵となることを強調した。

 そのうえで、日系企業のオープンイノベーションのチャンスを阻むものとして、日系企業には①企業文化 ②組織体制 ③言語 ④馴染みのない中国の市場環境、などの課題があることを指摘。スピード感を重視する現在の市場において、日系企業とスタートアップ企業とで対話のチャネル(思考のスピード)を一致させることの難しさについて語り、日系企業に求められるのは、イノベーション対応の専門部門の設置や人材確保、長期的な目標を掲げイノベーション体制を構築することなどと説明した。

馬成氏

36Kr GlobalのCEO(最高経営責任者)、馬成氏

会場

中国のスタートアップ企業と提携してイノベーションに挑む日系企業の事例などを紹介

市場の変化に迅速に対応せよ

 次に登壇したのは、既に嘉興経済技術開発区に進出している「荷美尔(中国)投資有限公司」(以下、ホーメル)の中国区副総経理、万小明氏である。ホーメルは、1891 年にアメリカで設立された食品大手企業。中国では、北京(1994年)、山東省(2013年)、そして嘉興(2015年)の3カ所に製造拠点を構えている。

 95年に中国進出を果たし、99年から中国市場において販売を開始以降、大きな成長を遂げている背景について、万氏は、「中国市場は大きく、消費者の変化も早い。消費の主体となる90年代や2000年代生まれの消費者の変化を素早くキャッチしていかないと、商品は市場から淘汰されていく」と、市場の変化に迅速に対応できる現地でビジネスを展開していく必要性について語った。

 2021年、嘉興経済技術開発区に「イノベーションを行い、模倣しない」ことを経営理念とした「アジア太平洋地域研究開発センター」を設立。食品基礎及び応用研究開発、試験、評価などを中心とし、アジア太平洋地域の業務発展に貢献するとしている。

 中国市場はホーメルにとっても重要な位置付けであり、現地における発展には、進出先の開発区サポートは欠かせないとし、嘉興経済技術開発区の外資系企業に対する支援に感謝の意を示した。

万小明氏

荷美尔(中国)投資有限公司(ホーメル)の中国区副総経理、万小明氏

ホーメル製造拠点

ホーメルは2015年に中国3カ所目の製造拠点として嘉興に進出した

 最後に登壇したのは、松下電器(中国)有限公司中国東北亜社 経営企画センター副総経理、松下厨電科技(嘉興)有限公司総経理の下林伸行氏である。講演タイトルは「パナソニック 中国・北東アジア地域の取組みー調理事業強化と嘉興新拠点についてー」だった。

遊び心のあるキッチン商品の開発も

 下林氏はまず、「中国の調理家電市場は右肩上がりの成長となることが予測され、毎年、中国独自の新しい調理家電カテゴリーが各ブランドから生まれている」と、現在の調理家電市場を取り巻く環境について説明した。さらに、コロナ禍下で、若い世代も“おうち時間”が長くなり、家庭で調理をする機会が増えてきたという、食文化の変化を指摘した。市場の消費はZ世代が牽引するなど、若年化しているため、調理家電に対しても、機能だけではなく、フォルムやカラー、デザインなど美観や“SNS映え”するものが求められている、とした。

 市場の変化に対応すべく、商品価値としても「イノベーション」が必要で、これまでのような実用的機能だけで良いわけではなく、気分が高まるような、遊び心のあるキッチン商品の開発を強化することも不可欠と述べた。今後、日本品質として信頼のある「安全・安心」に重点を置きながらも、顧客との接点を強化し、スピーディーに消費者ニーズを把握し、特長ある商品を提供していくことを強調した。

 下林氏は、嘉興経済技術開発区に進出した松下厨電科技(嘉興)有限公司の総経理を兼任している。華東地域における拠点として「嘉興」を選択した背景について、「人が財産。技術(人材)リソースを最大限に活用できる地域が嘉興だった」と述べた。嘉興は、グループ会社や製造・設計開発拠点が集積する上海、無錫及び杭州のいずれからもアクセスが良い。設計開発者が活動しやすく、設計開発と製造との連動も図りやすいことが評価点だったという。また、嘉興経済技術開発区の丁寧なサポートがあったことも含め、総合的に評価したと説明した。

 現在、揚子江デルタ地域においては人材確保に頭を悩ます企業は多い。その点、嘉興は今後、若い世代の居住人口が増えてくるのではないかと言われている。住宅コストなど生活コストが上海や杭州などと比較して低く、居を構えやすいからだ。企業にとって「人材」として期待される、こうした若い世代の増加は嘉興の大きな強みになりそうだ。

下林伸行氏

松下電器(中国)有限公司中国東北亜社 経営企画センター副総経理、松下厨電科技(嘉興)有限公司総経理の下林伸行氏

嘉興拠点の定礎式

嘉興拠点は2020年に定礎式を行い、本格稼働は23年からの予定

嘉興拠点の完成予想図

嘉興拠点の完成予想図。スマートキッチン家電製品の開発・製造などを行う予定

「嘉興未来会」の第3回目は21年秋に嘉興で

 嘉興未来会は今回で2回目となったが、嘉興経済技術開発区の強みや政策の特色などをわかりやすく紹介するほか、各界を代表する企業の多彩な講演があり、参加者からも最新動向や開発区の取り組みについてより具体的に理解できるとして好評を得ている。

嘉興経済技術開発区(JXEDZ)

 2021年春現在、中国には「国家級経済技術開発区」が219カ所ある。嘉興市にある嘉興経済技術開発区(JXEDZ)もそのうちの1つで、2010年に国家級開発区に昇格して以降、ものづくりの拠点として発展を遂げてきた。世界的な企業が製造拠点として続々と進出し、中国商務部が公布した統計データ「2019年全国経済開発区総合評価ランキング」においても、第12位にランクインしている。

 嘉興は、「魚米の郷」と称され、五芳齋のチマキ、文虎醤鴨(アヒルの醤油づけ)、南湖の菱、嘉善黄酒など国内外でも名高い名産がそろっている。今日では、米国のMARS、Abbott(アボット)、Hormel (ホーメル)及びフランスのMONIN(モナン)といった国際的に知名度の高い企業が進出し、馬家浜健康食品園区を中心とした健康食品産業群を形成、嘉興市におけるハイエンド食品産業の発展を促進している。

 嘉興市には、健康食品産業企業が約300社あり、そのうち上場企業が68社。2020年嘉興市生産総額は5509.52億元。そのうち、工業生産総額は2560.40億元に達している。2021年嘉興市の常住人口は550万人に達し、中心区は150万人を超えている。

中国で成長するには「企業の変革力」が必要に

 交流会の冒頭では、嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏から、中国の製造業におけるイノベーションの実態について、有意義な交流ができることを期待するとした挨拶があった。嘉興経済技術開発区は、交通の利便性、ビジネスコストの優位性及びスタッフのきめ細かなサービスなどで、すでに数多くの大手外資系企業が進出、或いは進出を検討している。

俞亜明氏

嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏

 折しも、2021年7月1日に中国共産党建党100周年を迎え、中国共産党の発祥地の1つとして有名な「南湖」が嘉興市にあることから、嘉興市も国内外から大きな注目を集めた。俞副主任は、「嘉興市は中国共産党の記念すべき『始まり』の地であるが、外資系企業における“ものづくり”の拠点としても、ここ(嘉興)から多くの製造業がさらに大きな発展を促進できるものと確信している」と述べた。

 かねてより“ものづくり”において、日系製造業は海外から高い評価を受けているが、中国市場において加速する「製造業のイノベーション」の波に乗るためには、「企業の変革力」が必要である。中国でビジネス展開する外資系企業にはどのような姿勢や取り組みが求められるのか、成功事例を紹介する講演を通じて理解を深めてほしい、と交流会の背景についても説明した。

交流会会場

「ものづくりイノベーション」への関心は高い

 嘉興経済技術開発区としての開催趣旨の説明を受け、日本貿易振興機構(JETRO)北京代表処所長、北東アジア地区中心総代表の高島竜祐氏が登壇。嘉興経済技術開発区が北京に駐在事務所を設け、日本語でコミュニケーションができるスタッフなど4名を常駐させているなど具体的な対応を挙げ、嘉興経済技術開発区が日系企業のニーズや課題に対して真摯に向き合う姿勢があることを紹介した。さらに、ソフト面においても手厚いサポートがあることから、ストレスフリーのコミュニケーションができるのでは、と述べた。

 嘉興市は、上海市や杭州市、蘇州市などからのアクセスが良いうえに、上海浦東国際空港付近に発着する、新たな高速鉄道も建設されている。実は、一人当たりのGDP 10.62万元が中国の平均を上回ることからも豊かで恵まれた土地という印象を受けるとし、嘉興市のさらなる発展への期待感の高さを示した。

毎年開催する「桜祭り」

 嘉興市の常住人口は550万人で、日本で言うならば兵庫県の人口に相当する。外資誘致額が全国5位にランクインするなど、揚子江デルタ地域の中心にある嘉興市は優れた投資地としても名高い。新しい高速鉄道が完成すれば、上海浦東国際空港からもおよそ30分の移動時間になる。外資系企業にとっても、海外との交通アクセスが多様化することで、「地の利」の価値がさらに高まる。

 また、嘉興経済技術開発区では、誘致後の企業へのサポートにも余念がなく、常に企業の立場にたって外資系企業が抱える課題や悩みに対応しているという。嘉興経済技術開発区のサービスクオリティーが年々上がっており、「企業の発展こそが開発区全体の発展につながる」という理念で、一貫して「共に発展していく姿勢」を見せ、企業と地元をつなぐ交流などにも力を注いでいる。毎年、日系企業主催での「桜祭り」を支援、既に10回開催した。

 嘉興経済技術開発区による、開発区の具体的な魅力について流暢な日本語での紹介を終えると、続いて講演のセッションに入った。今回は3者が登壇した。

 最初の講演は、中国最大級の技術・スタートアップ専門メディア「36Kr Global」のCEO・馬成氏が、「ものづくりイノベーションの新潮流」について、テックメディアという視点から日系企業へ提言した。

日系企業のイノベーションを阻む壁とは

 36Kr Globalは、中国語、英語、日本語(「36Kr Japan」)で、中国とアジアのスタートアップ企業に対する総合的な支援活動を行っている。馬成氏は、中国の製造業におけるオープンイノベーションについて「伝統的なメーカーがスタートアップ企業と提携することで、大きく変化した」点を指摘し、中国のスタートアップ企業と提携した日系企業の事例を紹介した。

 現在は、「国を問わず、伝統的産業はとりわけ優秀なスタートアップ企業と提携することを望んでいる」と話し、デジタル社会においては、いかに素早く「変革」するかが重要な鍵となることを強調した。

 そのうえで、日系企業のオープンイノベーションのチャンスを阻むものとして、日系企業には①企業文化 ②組織体制 ③言語 ④馴染みのない中国の市場環境、などの課題があることを指摘。スピード感を重視する現在の市場において、日系企業とスタートアップ企業とで対話のチャネル(思考のスピード)を一致させることの難しさについて語り、日系企業に求められるのは、イノベーション対応の専門部門の設置や人材確保、長期的な目標を掲げイノベーション体制を構築することなどと説明した。

馬成氏

36Kr GlobalのCEO(最高経営責任者)、馬成氏

会場

中国のスタートアップ企業と提携してイノベーションに挑む日系企業の事例などを紹介

市場の変化に迅速に対応せよ

 次に登壇したのは、既に嘉興経済技術開発区に進出している「荷美尔(中国)投資有限公司」(以下、ホーメル)の中国区副総経理、万小明氏である。ホーメルは、1891 年にアメリカで設立された食品大手企業。中国では、北京(1994年)、山東省(2013年)、そして嘉興(2015年)の3カ所に製造拠点を構えている。

 95年に中国進出を果たし、99年から中国市場において販売を開始以降、大きな成長を遂げている背景について、万氏は、「中国市場は大きく、消費者の変化も早い。消費の主体となる90年代や2000年代生まれの消費者の変化を素早くキャッチしていかないと、商品は市場から淘汰されていく」と、市場の変化に迅速に対応できる現地でビジネスを展開していく必要性について語った。

 2021年、嘉興経済技術開発区に「イノベーションを行い、模倣しない」ことを経営理念とした「アジア太平洋地域研究開発センター」を設立。食品基礎及び応用研究開発、試験、評価などを中心とし、アジア太平洋地域の業務発展に貢献するとしている。

 中国市場はホーメルにとっても重要な位置付けであり、現地における発展には、進出先の開発区サポートは欠かせないとし、嘉興経済技術開発区の外資系企業に対する支援に感謝の意を示した。

万小明氏

荷美尔(中国)投資有限公司(ホーメル)の中国区副総経理、万小明氏

ホーメル製造拠点

ホーメルは2015年に中国3カ所目の製造拠点として嘉興に進出した

 最後に登壇したのは、松下電器(中国)有限公司中国東北亜社 経営企画センター副総経理、松下厨電科技(嘉興)有限公司総経理の下林伸行氏である。講演タイトルは「パナソニック 中国・北東アジア地域の取組みー調理事業強化と嘉興新拠点についてー」だった。

遊び心のあるキッチン商品の開発も

 下林氏はまず、「中国の調理家電市場は右肩上がりの成長となることが予測され、毎年、中国独自の新しい調理家電カテゴリーが各ブランドから生まれている」と、現在の調理家電市場を取り巻く環境について説明した。さらに、コロナ禍下で、若い世代も“おうち時間”が長くなり、家庭で調理をする機会が増えてきたという、食文化の変化を指摘した。市場の消費はZ世代が牽引するなど、若年化しているため、調理家電に対しても、機能だけではなく、フォルムやカラー、デザインなど美観や“SNS映え”するものが求められている、とした。

 市場の変化に対応すべく、商品価値としても「イノベーション」が必要で、これまでのような実用的機能だけで良いわけではなく、気分が高まるような、遊び心のあるキッチン商品の開発を強化することも不可欠と述べた。今後、日本品質として信頼のある「安全・安心」に重点を置きながらも、顧客との接点を強化し、スピーディーに消費者ニーズを把握し、特長ある商品を提供していくことを強調した。

 下林氏は、嘉興経済技術開発区に進出した松下厨電科技(嘉興)有限公司の総経理を兼任している。華東地域における拠点として「嘉興」を選択した背景について、「人が財産。技術(人材)リソースを最大限に活用できる地域が嘉興だった」と述べた。嘉興は、グループ会社や製造・設計開発拠点が集積する上海、無錫及び杭州のいずれからもアクセスが良い。設計開発者が活動しやすく、設計開発と製造との連動も図りやすいことが評価点だったという。また、嘉興経済技術開発区の丁寧なサポートがあったことも含め、総合的に評価したと説明した。

 現在、揚子江デルタ地域においては人材確保に頭を悩ます企業は多い。その点、嘉興は今後、若い世代の居住人口が増えてくるのではないかと言われている。住宅コストなど生活コストが上海や杭州などと比較して低く、居を構えやすいからだ。企業にとって「人材」として期待される、こうした若い世代の増加は嘉興の大きな強みになりそうだ。

下林伸行氏

松下電器(中国)有限公司中国東北亜社 経営企画センター副総経理、松下厨電科技(嘉興)有限公司総経理の下林伸行氏

嘉興拠点の定礎式

嘉興拠点は2020年に定礎式を行い、本格稼働は23年からの予定

嘉興拠点の完成予想図

嘉興拠点の完成予想図。スマートキッチン家電製品の開発・製造などを行う予定

「嘉興未来会」の第3回目は21年秋に嘉興で

 嘉興未来会は今回で2回目となったが、嘉興経済技術開発区の強みや政策の特色などをわかりやすく紹介するほか、各界を代表する企業の多彩な講演があり、参加者からも最新動向や開発区の取り組みについてより具体的に理解できるとして好評を得ている。

嘉興経済技術開発区(JXEDZ)

 2021年春現在、中国には「国家級経済技術開発区」が219カ所ある。嘉興市にある嘉興経済技術開発区(JXEDZ)もそのうちの1つで、2010年に国家級開発区に昇格して以降、ものづくりの拠点として発展を遂げてきた。世界的な企業が製造拠点として続々と進出し、中国商務部が公布した統計データ「2019年全国経済開発区総合評価ランキング」においても、第12位にランクインしている。

 嘉興は、「魚米の郷」と称され、五芳齋のチマキ、文虎醤鴨(アヒルの醤油づけ)、南湖の菱、嘉善黄酒など国内外でも名高い名産がそろっている。今日では、米国のMARS、Abbott(アボット)、Hormel (ホーメル)及びフランスのMONIN(モナン)といった国際的に知名度の高い企業が進出し、馬家浜健康食品園区を中心とした健康食品産業群を形成、嘉興市におけるハイエンド食品産業の発展を促進している。

 嘉興市には、健康食品産業企業が約300社あり、そのうち上場企業が68社。2020年嘉興市生産総額は5509.52億元。そのうち、工業生産総額は2560.40億元に達している。2021年嘉興市の常住人口は550万人に達し、中心区は150万人を超えている。