日経ビジネス電子版 SPECIAL
第1回目のテーマは「食品産業の新潮流~緑と健康生活~」 第1回目のテーマは「食品産業の新潮流~緑と健康生活~」
第1回目のテーマは「食品産業の新潮流~緑と健康生活~」
食品関連産業が「嘉興」に注目する理由

 中国浙江省・嘉興(ジャーシン)市の経済技術開発区が、主に日系企業を対象に「嘉興未来会」と名付けた交流会を始めた。

 嘉興未来会は、嘉興における産業発展の方向性を考えるという趣旨で開催する勉強会を兼ねた交流会。開発区として自らの強みや政策の特色を理解してもらうとともに、開発区としても企業のニーズを把握したうえで、「WIN-WIN」の関係となるような誘致を目指したいという思いから、毎回テーマを決めて、年に数回開催することにした。

 第1回目は2021年4月に上海市内のホテルで開催した。テーマは「食品産業の新潮流~緑と健康生活~」。日系の食品関連企業など20社近くが集まった。

 揚子江デルタ地域の中心に位置する嘉興経済技術開発区は、上海や蘇州、杭州、寧波の4大都市の中間地点という地の利を生かし、都市型の開発区として発展してきた。とりわけ、高速鉄道開通後は、上海・虹橋駅から約20分と交通アクセスも良くなった。上海の“ビジネス新都心”として注目されはじめ、多くの外資系企業からの関心を集めている。

 コロナ禍からいち早く経済を回復させた中国では、食品需要が伸びている。揚子江デルタ地域は一大消費地。ロジスティクス面から見ても、食品関連企業が嘉興に拠点を設ける利点は大きい。

 嘉興経済技術開発区は、食品関連企業の集積を目指して、開発区内に「馬家浜(マージャーバン)健康食品小鎮(園区)」を設けた。「馬家浜」は嘉興市内の地名で、約7000年前の稲作文化の発祥の地ともいわれる。「食」にまつわる歴史が深いだけに、今後は「健康食品製造業」や「同サービス業」、「文化体験旅行業」の3つの産業を重点的に発展させていく方針だという。

 この健康食品園区には、アイスクリーム博物館など、同地に製造拠点を設けた外資系企業の施設も相次いでオープンし、一般に開放している。嘉興経済技術開発区としては、ただ単に工業発展を目指すだけではなく、今後注目されるであろう「産業ツーリズム」も意識している。

第1回 嘉興未来会(左)馬家浜園区内の遺跡 (右)アイスクリーム博物館馬家浜健康食品園区の全景

(上)上海で開催された「第1回 嘉興未来会」 (中左)馬家浜園区内には約7000年前の遺跡も。稲作文化の発祥の地ともいわれる (中右)アイスクリーム博物館 (下)馬家浜健康食品園区の全景

ハイエンド食品産業が集積する「馬家浜健康食品園区」

 さて、交流会は、嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任 俞亜明氏の挨拶から始まった。まずは日中間の食文化の深いつながりを紹介。日本の饅頭は、嘉興が位置する中国・揚子江デルタ地域から伝わったといわれる。日本に初めて饅頭を伝えたとされる林浄因(りんじょういん)を祀った饅頭神社・林神社が奈良県にあることを例に、中国の食文化が日本に与えた影響について言及。省政府から認証を得た「馬家浜健康食品園区」の強みについて説明した。

 中国では、消費者のより良い生活を求めるニーズが高まり、健康食品が一層重視されるようになってきた。「健康食品を生産するグローバル企業を集積させ、食品産業のグリーン発展の推進を目指している」と力強く語った。

 馬家浜健康食品園区は3.05平方キロメートルの敷地に、20社以上の食品企業が進出している。米国の菓子メーカー「MARS(マース)」やフランスの「MONIN(モナン)」、イタリアの「ISU」、そして今後の発展が期待される植物性人工肉メーカーの「Beyond Meat(ビヨンド・ミート)」など。日本の味の素ベーカリーの関連会社「ABPan」も進出済みだ。

 さらに同園区内には、食品の製造機械や包装などのメーカー、食品関連の科学研究機関などもある。嘉興経済技術開発区は、ハイエンド食品産業のサプライチェーンの構築や、エコシステムの整備を進めている。

嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏

嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏

馬家浜健康食品園区のゲート

馬家浜健康食品園区のゲート

「レトルト化傾向」「健康志向」が日本企業の追い風に

 続いては講演のセッション。まずは、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)中国の高級経理・林偉氏が、「アフターコロナの食品業界の概観と中国における日本食品の発展」について話した。

 「中国ではコロナ禍以降、消費者の食生活と健康に対する意識が大きく変わった」とし、健康食品市場が急成長していることを指摘した。統計を見ても、食品業界の収益の回復が見られ、2025年には約5%の成長が予測できるとした。

 また、消費習慣の変化と急速に進む細分化について言及し、①レトルト化傾向、②健康志向について紹介した。なかでも最近は、「プロテインバー」や「ノンシュガー飲料」への関心が高まっているとし、今後もこうした傾向が継続していくことで、「日本の食品にとって有利な消費市場に変化しつつある」とした。

 なぜ日本食品の人気が高いのか。この点については、「淘宝網(タオバオ)による日本食品に関するコメントから見ると、『食感が良い』『高品質』『個別包装』『口当たりの良さ』『パッケージデザイン』『贈答用に最適』などが挙げられる」とした。

コールドチェーンの智能化や機能性食品の開発も

 続いて登壇したのは、馬家浜健康食品園区に拠点を構える「浙江清華長三角研究院食品与健康研究所」の蔡強所長だ。

 同研究所は2020年に馬家浜健康食品園区に進出した。「食品産業には高品質な発展が必要。そのためのニーズに積極的に対応し、食品の革新技術についての研究開発や、研修及びコンサルティングサービス、一般食品及び特別医療目的食品(FSMP - Food for Special Medical Purposes)などの領域にフォーカスし、ハイエンド食品業界の発展に貢献していく」とした。

 蔡所長によると。同研究所は、食品安全標準に関するサービスにも長けているという。国の乳児用粉ミルクに関する各種基準の制定などへの参加をはじめ、植物性人工肉の基準づくりにも関与している。また、ハイエンド食品産業園区の管理体系基準づくりなどにも従事。製造やコールドチェーンなどの智能化開発、機能性食品の研究開発なども手掛けることで、「食品産業の高品質な発展の推進へ向けて智慧を発揮している」と、研究所の活動を紹介した。

 馬家浜健康食品園区に進出した食品企業との交流にも積極的だ。新製品開発をはじめ、品質管理などにおいても交流や提携を進めつつ、人材確保などでも協力し、「食品産業が革新的な活力を維持していくことを支援していきたい」と話した。

PwC中国の高級経理・林偉氏

PwC中国の高級経理・林偉氏

浙江清華長三角研究院食品与健康研究所の所長・蔡強氏

浙江清華長三角研究院食品与健康研究所の所長・蔡強氏

進出企業が伝える「馬家浜健康食品園区」の魅力

 交流会の後半では、「馬家浜健康食品園区」にすでに進出している企業からの講演が続いた。

 米国の食品大手である「MARS」は、馬家浜健康食品園区にアジア最大のチョコレート工場を設けている。「Dove」「m&m’s」「Snickers」「Be-KIND」といったチョコレートを製造し、中国国内市場のみならず、日本や韓国にも輸出されている。

 屠芳洲・華東区公共事務総監は、MARSのグルーバル戦略における中国市場のポジションについて説明。全世界約10万人の従業員のうち約1万人が中国の従業員であることや、中国での事業ビジョンを紹介した。

 MARSの製造拠点は、北京や上海、広州にもあるが、さらに嘉興に工場進出した理由について、「地の利と関係者のきめ細かなサービスがあったからだ」と語る。また、国内市場の40%近くが上海などの華東地区で消費されていることや、物流インフラの優位さを考えると、「今後の大きな成長を見込めることから嘉興を選択した」とした。

 「進出後は、開発区関係者の対応の良さに驚いた。定期的に工場を訪れてくれ、工場や生活での『困りごと相談』に乗ってくれる」。快適なビジネス環境の下、「工場を安全に稼働することができている」と繰り返し伝えていた。

 次に登壇したのは、味の素ベーカリーとシンガポール発の焼き立てパンチェーン「BreadTalk(ブレッドトーク)」との合弁会社「ABPan」の冨川正史総経理。味の素ベーカリーは、日本では量販店向けなどに冷凍パン生地を供給している。2019年に進出した馬家浜健康食品園区では、主にBreadTalk向けの冷凍パン生地を製造している。

 同社は以前、上海に製造拠点があった。工場移転を検討する際に、交通アクセスが良く、ビジネスコストも安価な嘉興が候補に挙がった。税に関する優遇政策も魅力的だったが、何と言っても決め手となったのは、「開発区関係者の手厚いサポート体制だった」と振り返る。専門的でかつ優れたサポートチームがあり、スピーディーな対応だったので、安心して進出でき、様々なことを気軽に相談できた、という。

 気になる生活インフラについても、「緑が多くとても住みやすい、と嘉興に住む他社の駐在員も口を揃えている」と太鼓判を押す。上海・虹橋駅からも高速鉄道で約20分と交通の便がよく、住居コストも上海に比べて圧倒的に安いため、人材も集まりやすい。そのため、「日系企業が悩みがちな現地人材の確保にも強みがあるのではないか」と語った。

 馬家浜健康食品園区への日系企業の進出はまだ少ないのが現状。しかし、今後多くの企業が進出することで、日系企業間のみならず、外資系企業や中国ローカル企業などとの、原材料の共同購入や共同配送、新商品開発などの協業が生まれてくる可能性もある。まさに、食品産業のエコシステムである。

 馬家浜健康食品園区の中心には、「サービスセンター」も設置されており、進出企業の相談や協業推進などにも力を入れている。

 交流会の参加者からは、「多くの誘致説明会に出ているが、このように専門的かつ具体的な内容で、欲しい情報を入手できる交流会は多くはない。とても参考になった」との声が多く聞かれた。

 次回の交流会は、2021年7月に、北京での開催を予定している。

馬家浜健康食品園区内にあるサービスセンター

馬家浜健康食品園区内にあるサービスセンター

嘉興経済技術開発区(JXEDZ)

 2021年春現在、中国には「国家級経済技術開発区」が219カ所ある。嘉興市にある嘉興経済技術開発区(JXEDZ)もそのうちの1つで、2010年に国家級開発区に昇格して以降、ものづくりの拠点として発展を遂げてきた。世界的な企業が製造拠点として続々と進出し、中国商務部が公布した統計データ「2019年全国経済開発区総合評価ランキング」においても、第12位にランクインしている。

 嘉興は、「魚米の郷」と称され、五芳齋のチマキ、文虎醤鴨(アヒルの醤油づけ)、南湖の菱、嘉善黄酒など国内外でも名高い名産がそろっている。今日では、米国のMARS、Abbott(アボット)、Hormel (ホーメル)及びフランスのMONIN(モナン)といった国際的に知名度の高い企業が進出し、馬家浜健康食品園区を中心とした健康食品産業群を形成、嘉興市におけるハイエンド食品産業の発展を促進している。

 嘉興市には、健康食品産業企業が約300社あり、そのうち上場企業が68社。2020年嘉興市生産総額は5509.52億元。そのうち、工業生産総額は2560.40億元に達している。2021年嘉興市の常住人口は540万人に達し、中心区は150万人を超えている。

食品関連産業が「嘉興」に注目する理由

 中国浙江省・嘉興(ジャーシン)市の経済技術開発区が、主に日系企業を対象に「嘉興未来会」と名付けた交流会を始めた。

 嘉興未来会は、嘉興における産業発展の方向性を考えるという趣旨で開催する勉強会を兼ねた交流会。開発区として自らの強みや政策の特色を理解してもらうとともに、開発区としても企業のニーズを把握したうえで、「WIN-WIN」の関係となるような誘致を目指したいという思いから、毎回テーマを決めて、年に数回開催することにした。

 第1回目は2021年4月に上海市内のホテルで開催した。テーマは「食品産業の新潮流~緑と健康生活~」。日系の食品関連企業など20社近くが集まった。

 揚子江デルタ地域の中心に位置する嘉興経済技術開発区は、上海や蘇州、杭州、寧波の4大都市の中間地点という地の利を生かし、都市型の開発区として発展してきた。とりわけ、高速鉄道開通後は、上海・虹橋駅から約20分と交通アクセスも良くなった。上海の“ビジネス新都心”として注目されはじめ、多くの外資系企業からの関心を集めている。

 コロナ禍からいち早く経済を回復させた中国では、食品需要が伸びている。揚子江デルタ地域は一大消費地。ロジスティクス面から見ても、食品関連企業が嘉興に拠点を設ける利点は大きい。

 嘉興経済技術開発区は、食品関連企業の集積を目指して、開発区内に「馬家浜(マージャーバン)健康食品小鎮(園区)」を設けた。「馬家浜」は嘉興市内の地名で、約7000年前の稲作文化の発祥の地ともいわれる。「食」にまつわる歴史が深いだけに、今後は「健康食品製造業」や「同サービス業」、「文化体験旅行業」の3つの産業を重点的に発展させていく方針だという。

 この健康食品園区には、アイスクリーム博物館など、同地に製造拠点を設けた外資系企業の施設も相次いでオープンし、一般に開放している。嘉興経済技術開発区としては、ただ単に工業発展を目指すだけではなく、今後注目されるであろう「産業ツーリズム」も意識している。

image (左)馬家浜園区内の遺跡 (右)アイスクリーム博物館 第1回 嘉興未来会

(上)上海で開催された「第1回 嘉興未来会」 (中左)馬家浜園区内には約7000年前の遺跡も。稲作文化の発祥の地ともいわれる (中右)アイスクリーム博物館 (下)馬家浜健康食品園区の全景

ハイエンド食品産業が集積する「馬家浜健康食品園区」

 さて、交流会は、嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任 俞亜明氏の挨拶から始まった。まずは日中間の食文化の深いつながりを紹介。日本の饅頭は、嘉興が位置する中国・揚子江デルタ地域から伝わったといわれる。日本に初めて饅頭を伝えたとされる林浄因(りんじょういん)を祀った饅頭神社・林神社が奈良県にあることを例に、中国の食文化が日本に与えた影響について言及。省政府から認証を得た「馬家浜健康食品園区」の強みについて説明した。

 中国では、消費者のより良い生活を求めるニーズが高まり、健康食品が一層重視されるようになってきた。「健康食品を生産するグローバル企業を集積させ、食品産業のグリーン発展の推進を目指している」と力強く語った。

 馬家浜健康食品園区は3.05平方キロメートルの敷地に、20社以上の食品企業が進出している。米国の菓子メーカー「MARS(マース)」やフランスの「MONIN(モナン)」、イタリアの「ISU」、そして今後の発展が期待される植物性人工肉メーカーの「Beyond Meat(ビヨンド・ミート)」など。日本の味の素ベーカリーの関連会社「ABPan」も進出済みだ。

 さらに同園区内には、食品の製造機械や包装などのメーカー、食品関連の科学研究機関などもある。嘉興経済技術開発区は、ハイエンド食品産業のサプライチェーンの構築や、エコシステムの整備を進めている。

嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏

嘉興経済技術開発区党工委副書記、管委会副主任の俞亜明氏

馬家浜健康食品園区のゲート

馬家浜健康食品園区のゲート

「レトルト化傾向」「健康志向」が日本企業の追い風に

 続いては講演のセッション。まずは、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)中国の高級経理・林偉氏が、「アフターコロナの食品業界の概観と中国における日本食品の発展」について話した。

 「中国ではコロナ禍以降、消費者の食生活と健康に対する意識が大きく変わった」とし、健康食品市場が急成長していることを指摘した。統計を見ても、食品業界の収益の回復が見られ、2025年には約5%の成長が予測できるとした。

 また、消費習慣の変化と急速に進む細分化について言及し、①レトルト化傾向、②健康志向について紹介した。なかでも最近は、「プロテインバー」や「ノンシュガー飲料」への関心が高まっているとし、今後もこうした傾向が継続していくことで、「日本の食品にとって有利な消費市場に変化しつつある」とした。

 なぜ日本食品の人気が高いのか。この点については、「淘宝網(タオバオ)による日本食品に関するコメントから見ると、『食感が良い』『高品質』『個別包装』『口当たりの良さ』『パッケージデザイン』『贈答用に最適』などが挙げられる」とした。

コールドチェーンの智能化や機能性食品の開発も

 続いて登壇したのは、馬家浜健康食品園区に拠点を構える「浙江清華長三角研究院食品与健康研究所」の蔡強所長だ。

 同研究所は2020年に馬家浜健康食品園区に進出した。「食品産業には高品質な発展が必要。そのためのニーズに積極的に対応し、食品の革新技術についての研究開発や、研修及びコンサルティングサービス、一般食品及び特別医療目的食品(FSMP - Food for Special Medical Purposes)などの領域にフォーカスし、ハイエンド食品業界の発展に貢献していく」とした。

 蔡所長によると。同研究所は、食品安全標準に関するサービスにも長けているという。国の乳児用粉ミルクに関する各種基準の制定などへの参加をはじめ、植物性人工肉の基準づくりにも関与している。また、ハイエンド食品産業園区の管理体系基準づくりなどにも従事。製造やコールドチェーンなどの智能化開発、機能性食品の研究開発なども手掛けることで、「食品産業の高品質な発展の推進へ向けて智慧を発揮している」と、研究所の活動を紹介した。

 馬家浜健康食品園区に進出した食品企業との交流にも積極的だ。新製品開発をはじめ、品質管理などにおいても交流や提携を進めつつ、人材確保などでも協力し、「食品産業が革新的な活力を維持していくことを支援していきたい」と話した。

PwC中国の高級経理・林偉氏

PwC中国の高級経理・林偉氏

浙江清華長三角研究院食品与健康研究所の所長・蔡強氏

浙江清華長三角研究院食品与健康研究所の所長・蔡強氏

進出企業が伝える「馬家浜健康食品園区」の魅力

 交流会の後半では、「馬家浜健康食品園区」にすでに進出している企業からの講演が続いた。

  米国の食品大手である「MARS」は、馬家浜健康食品園区にアジア最大のチョコレート工場を設けている。「Dove」「m&m’s」「Snickers」「Be-KIND」といったチョコレートを製造し、中国国内市場のみならず、日本や韓国にも輸出されている。

 屠芳洲・華東区公共事務総監は、MARSのグルーバル戦略における中国市場のポジションについて説明。全世界約10万人の従業員のうち約1万人が中国の従業員であることや、中国での事業ビジョンを紹介した。

 MARSの製造拠点は、北京や上海、広州にもあるが、さらに嘉興に工場進出した理由について、「地の利と関係者のきめ細かなサービスがあったからだ」と語る。また、国内市場の40%近くが上海などの華東地区で消費されていることや、物流インフラの優位さを考えると、「今後の大きな成長を見込めることから嘉興を選択した」とした。

 「進出後は、開発区関係者の対応の良さに驚いた。定期的に工場を訪れてくれ、工場や生活での『困りごと相談』に乗ってくれる」。快適なビジネス環境の下、「工場を安全に稼働することができている」と繰り返し伝えていた。

 次に登壇したのは、味の素ベーカリーとシンガポール発の焼き立てパンチェーン「BreadTalk(ブレッドトーク)」との合弁会社「ABPan」の冨川正史総経理。味の素ベーカリーは、日本では量販店向けなどに冷凍パン生地を供給している。2019年に進出した馬家浜健康食品園区では、主にBreadTalk向けの冷凍パン生地を製造している。

 同社は以前、上海に製造拠点があった。工場移転を検討する際に、交通アクセスが良く、ビジネスコストも安価な嘉興が候補に挙がった。税に関する優遇政策も魅力的だったが、何と言っても決め手となったのは、「開発区関係者の手厚いサポート体制だった」と振り返る。専門的でかつ優れたサポートチームがあり、スピーディーな対応だったので、安心して進出でき、様々なことを気軽に相談できた、という。

 気になる生活インフラについても、「緑が多くとても住みやすい、と嘉興に住む他社の駐在員も口を揃えている」と太鼓判を押す。上海・虹橋駅からも高速鉄道で約20分と交通の便がよく、住居コストも上海に比べて圧倒的に安いため、人材も集まりやすい。そのため、「日系企業が悩みがちな現地人材の確保にも強みがあるのではないか」と語った。

 馬家浜健康食品園区への日系企業の進出はまだ少ないのが現状。しかし、今後多くの企業が進出することで、日系企業間のみならず、外資系企業や中国ローカル企業などとの、原材料の共同購入や共同配送、新商品開発などの協業が生まれてくる可能性もある。まさに、食品産業のエコシステムである。

 馬家浜健康食品園区の中心には、「サービスセンター」も設置されており、進出企業の相談や協業推進などにも力を入れている。

 交流会の参加者からは、「多くの誘致説明会に出ているが、このように専門的かつ具体的な内容で、欲しい情報を入手できる交流会は多くはない。とても参考になった」との声が多く聞かれた。

 次回の交流会は、2021年7月に、北京での開催を予定している。

馬家浜健康食品園区内にあるサービスセンター

馬家浜健康食品園区内にあるサービスセンター

嘉興経済技術開発区(JXEDZ)

 2021年春現在、中国には「国家級経済技術開発区」が219カ所ある。嘉興市にある嘉興経済技術開発区(JXEDZ)もそのうちの1つで、2010年に国家級開発区に昇格して以降、ものづくりの拠点として発展を遂げてきた。世界的な企業が製造拠点として続々と進出し、中国商務部が公布した統計データ「2019年全国経済開発区総合評価ランキング」においても、第12位にランクインしている。

 嘉興は、「魚米の郷」と称され、五芳齋のチマキ、文虎醤鴨(アヒルの醤油づけ)、南湖の菱、嘉善黄酒など国内外でも名高い名産がそろっている。今日では、米国のMARS、Abbott(アボット)、Hormel (ホーメル)及びフランスのMONIN(モナン)といった国際的に知名度の高い企業が進出し、馬家浜健康食品園区を中心とした健康食品産業群を形成、嘉興市におけるハイエンド食品産業の発展を促進している。

 嘉興市には、健康食品産業企業が約300社あり、そのうち上場企業が68社。2020年嘉興市生産総額は5509.52億元。そのうち、工業生産総額は2560.40億元に達している。2021年嘉興市の常住人口は540万人に達し、中心区は150万人を超えている。