日経ビジネス電子版 SPECIAL

Creating Together

 

事例:三菱電機 三菱電機の次の成長に向けたチャレンジ 顧客体験変革の新基準、
「社会的不満の解決」から
新しいコンセプトを構築

「今よりずっとあなたを自由にする、新しい三菱冷蔵庫。」という家事シェアの視点も盛り込んだ三菱冷蔵庫の新CMが注目を集めている。コロナ禍にあって生活者の消費行動、製品選択の基準価値が大きく変わる中、いかにリブランディングに向けたプロジェクトを推進したのか。三菱電機の冷蔵庫チームとサポートを実践した電通デジタルとの取り組みを紹介していく。

CX変革において求められる
「3C+S」の視点とは

——2022年より放送されている三菱冷蔵庫のテレビCMでは、働く女性の心を軽やかに解放してくれるような内容が印象的です。その基となった中期的なブランドコンセプト策定に取り組まれた経緯、当時の課題感について教えてください。

三菱電機・神保恒祐氏(以下、神保)当社の冷蔵庫は、「おいしさと使いやすさ」という価値を提供することで、人々の生活をよりスマートに、便利にすることを目指し付加価値向上に取り組んできました。

 次のフルモデルチェンジを2022年に控えた2020年に部門縦断のワーキンググループを立ち上げたのですが、価値観が大きく変容する時代にあって、次の成長を実現していくには「変えてはいけないこと」と、時代に合わせて「変えていくべきこと」を整理し、明確なコンセプトを構築する必要があるという気づきを得たのが起点となりました。

 技術力として「ラクに・ムダなく・おいしく(保存できる)」をコアバリューに、家事分担や暮らしのあり方も多様化する中、三菱冷蔵庫の価値提供はどうあるべきか。それをメーカー視点での機能性重視の価値提案ではなく、顧客および社会的視点を持って発信していくには、メンバー全員が同じ方向を見て進むためのブランドコンセプトを再定義する必要がある。そこで専門的知見をいただきながら作業を推進すべく、2021年4月より電通デジタルにサポートを依頼しました。

三菱電機・横尾広明氏(以下、横尾)お客様にとって価値あるものを追求するのは当然ながら、自社のリソースだけでは情報も限られ、技術を起点に考えがちな問題もあります。変化のスピードも加速化し、従来のやり方では即刻通用しなくなる。開発者として漠然とした不安を抱えていたところでチームに参加しました。客観的視点をいただける味方として、電通デジタルがジョインしてくださるのは非常に心強かったですね。

神保 恒祐

神保 恒祐

三菱電機株式会社 静岡製作所
営業部
冷蔵庫営業課長

1998年、三菱電機入社。一貫して同社のBtoC事業のマーケティング戦略に従事。冷蔵庫、エアコン、テレビの担当を経て、2019年より冷蔵庫担当に復帰。2022年のフルモデルチェンジに合わせたブランドコンセプト構築の旗振り役として、プロジェクトを統括。

横尾 広明

横尾 広明

三菱電機株式会社 静岡製作所
冷蔵庫製造部
先行開発グループ 専任

2005年、三菱電機入社。入社以来、冷蔵庫の設計開発に従事。2020年より要素技術を基に冷蔵庫の機能開発を進める先行開発グループのリーダーとしてチームをけん引。ブランドコンセプト構築のプロジェクトには開発の立場からチームの一員として参画。

——電通デジタルとしては、ご依頼をどう捉えられましたか。

電通デジタル・田川絵理氏(以下、田川)当社でも、多くの企業・ブランドの価値再定義から変革コンセプトの策定、顧客体験の向上を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)のお取り組みを支援させていただいています。ご相談いただくケースとして少なくないのが、縦割り組織の弊害から本質的なゴールを見据えた議論がおろそかになってしまったり、テクノロジー先行でDX自体が目的化してしまったという課題に直面し、プロジェクトを立て直したいというご要望です。

 その点では、三菱電機様からは当初より「部署の垣根を超え、チームみんなが納得感のあるブランドコンセプトを作りたい」というご要望があり、横連携の強化をより重視したプロジェクトのプロセスデザインをご提示するところから支援させていただきました。

電通デジタル・廣田明子氏(以下、廣田)中長期的なブランドコンセプトは、DX、顧客体験変革のフックにつながる重要なもの。そこで納得解を得ていくには、関与する社内メンバーの声を吸い上げ、一丸となって議論、合意を積み上げていくプロセスが肝要です。そこで、お客様のニーズのリサーチはもとより、全員が想いを発散でき、当社がファシリテーターとして意見を集約していくワークショップのアプローチをご提案しました。