Vol1パナソニック×Blue Yonder連携の展望
VUCA時代におけるサプライチェーンの重要性
Vol2パナソニックが提唱する「オートノマス(自律的)ファクトリー」
自動化と知能化による実装プロセスの新プラットフォーム
vol3ヤマト運輸×パナソニック コネクト
IE(インダストリアルエンジニアリング)で物流ターミナルのオペレーション改革に挑む
vol4富士急行×パナソニック コネクト
未来が見えた富士急行の観光DX 地域社会に活力をもたらすパナソニックの現場力と技術力
vol5JR貨物×パナソニック コネクト
“勘と経験”を可視化する 現場視点で貨物鉄道輸送を改革

サプライチェーンが正常に動くことは、ビジネスの成立条件だ。しかし、コロナ禍やスエズ運河の座礁事故、世界情勢の変化など様々な要因により、サプライチェーンに分断が多発している。先行き不透明で、将来の予測が困難な状況が常態化する「VUCA時代」。それでもビジネスを継続させる使命を果たすため、日本企業は何から取り組むべきか。いま、重要性が高まっているのが、サプライチェーンマネジメント(以下、SCM)である。

2021年9月。パナソニックはサプライチェーン・ソフトウエアの世界的大手、Blue Yonderの買収を完了した。両社が目指すのは、オートノマス(自律的な)サプライチェーンだ。パナソニックの技術で収集した現場のデータと外部データを、Blue Yonderのクラウド型ソフトウエアに集約。AI(人工知能)で状況分析を行い、その結果をリアルタイムで現場にフィードバックする。現場起点のSCMによりプロセスの自動化・自律化を推進し、意思決定の迅速化、サプライチェーン全体の最適化を図る。日本企業が進むべき道に向け、伴走を始めているのがこの両社だ。

多発するサプライチェーンの分断
人による調整では限界に

―なぜ、日本企業においてSCM改革が重要なテーマとなってきているのでしょうか。

パナソニック コネクト株式会社
シニア エグゼクティブ アドバイザー
前平 克人 氏

前平 日本においても、2000年代前半に個別最適から全体最適を志向するSCMブームが起きました。本来、SCMは経営戦略として取り組むべきテーマです。しかし、システム導入が目的化し、多くの企業でSCMによる全体最適の取り組みは頓挫しました。さらに、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災等により、SCMは生産計画や調達計画を作成するためのツールを指す狭義の意味合いが強くなりました。

「モノを造る、運ぶ、売る」といったSCMの活動は、システム化の有無に関わらず、必ず行わなければなりません。日本企業では、人による調整型SCMが多いのが現状でしょう。コロナ禍で日本企業が直面したのは、こうした調整型SCMの限界です。中国発の供給網の分断、移動制限によるグローバル物流の壊滅、米国や欧州、日本における需要の消滅など、「造る、運ぶ、売る」のすべてで問題が発生し、人による調整で対応できるレベルではなくなりました。サプライチェーンがエンドツーエンドでどういう状況になっているのか、リアルタイムで把握し、問題が起きた時に迅速に対処できる仕組みを構築したいというニーズが、日本企業においても高まっています。重要なポイントは、今度こそ経営戦略の一環としてSCMに取り組み、やり切ることです。

Blue Yonderジャパン株式会社
執行役員 ソリューションコンサルティング
シニアディレクター
白鳥 直樹 氏

白鳥 コロナだけではなく、米国ロングビーチ港荷揚げ混雑、海上コンテナの手配不能、人権問題による特定地域の原料使用停止、貿易摩擦、CO₂削減、自然災害など、サプライチェーンに影響を及ぼす様々な課題が世界中で発生しています。これからのSCMは、計画を立てるだけでなく、計画通りに進捗しているかを、リアルタイムでモニタリングすることが重要です。スエズ運河座礁事故の際にBlue Yonderのソフトウエアでサプライチェーンを可視化していたお客様は、必要な対策をとることができたというお話を伺っています。

前平 SCMにおいて、データ収集や分析はシステムに任せ、人は情報に基づいて決断し実行することに注力するべきです。また日本企業の課題として、SCMに関わる人材の高齢化も課題となります。現状暗黙知で行っている領域を、形式知化することの必要性も認識せねばなりません。2020年代のSCM改革では、AI活用などデジタル技術の活用が鍵を握ります。

「サプライチェーンの可視化・全体最適化」を実現する
現場プロセス改革とソフトウエアの一体化

―SCMビジネスに向けて、パナソニックとBlue Yonderが戦略的パートナーとなった理由についてお聞かせください。

前平 パナソニックでは、表の競争力と裏の競争力という言い方をよくします。表の競争力は、パソコンや冷蔵庫など製品の魅力です。一方、裏の競争力はオペレーション力です。パナソニックには、製造業として100年以上の歴史で培ったIE(インダストリアルエンジニアリング)の知見とノウハウがあります。現場改善を行うIEと、センサーやデバイスを使った独自の画像認識技術や空間認識技術といったデジタルテクノロジーを組み合わせて、DX(デジタルトランスフォーメーション)による「現場プロセスイノベーション」を、自社はもとより事業として展開しています。

「現場プロセスイノベーション」を実現する上で、刻々と変化し複雑な問題を抱えた「現場」の精確な把握とともに、それぞれの「現場」を有機的につなぎ合わせて可視化することが欠かせません。そのために、サプライチェーンにおける計画系、実行系、販売系のすべてをカバーするソフトウエア製品を有するBlue Yonderと戦略的なパートナーシップを結ぶことが重要でした。

白鳥 サプライチェーン・ソフトウエアにおけるアウトプットの精度を高めるのは、インプットするデータの品質です。パナソニックのIEやデジタル技術を使って刻々と変化する「現場」のデータをリアルタイムで収集し活用することではじめて、「現場」の可視化が可能となります。現場プロセス改革とサプライチェーン・ソフトウエアが一体となることにより、個々の「現場」のみならずSCM全体の可視化と最適化を実現できます。

現場プロセス改革とサプライチェーン・ソフトウエアが一体となることで、SCM全体の可視化と最適化を実現できる

前平 Blue Yonderは、世界最大のサプライチェーン・ソフトウエア専門企業として、76カ国でビジネスを展開し、3000社以上のグローバル顧客を有しています。グローバルトップ100にランクする企業において、製造業の61社/100、流通業の68社/100が同社のソリューションを利用しており、有力な顧客基盤は両社で取り組むSCMビジネスの信頼と成長のベースとなります。

白鳥 Blue Yonderもパナソニックも、現場重視の文化という点でとても似ていると感じています。一言で生産計画といっても、業界や会社、計画担当者ごとに計画に必要とする要素や深さが異なることから、Blue Yonderではお客様それぞれに合ったソリューションを提案しています。またお客様へのアプローチでは、課題を抽出した後、要因分析、解決策、経済的価値、ロードマップなどを提示します。

経営の意思を反映し、自律的に現場が動く
「オートノマスサプライチェーン」実現を目指して

―両社が目指すSCMの姿についてお聞かせください。

前平 今後のSCMを考える上で、キーワードとなるのが自律化です。両社でめざしているのは、何か現象が起きた時に、経営の意思を反映し現場が自律的に動くことのできる「オートノマスサプライチェーン」です。経営PDCA(計画、実行、評価、改善)と、変化を瞬時に把握してアクションを起こす現場OODAループ(ウーダーループ:観察、状況判断、意思決定、実行)を有機的につなげていくことが、将来的なSCMのあり方になると考えています。

白鳥 「オートノマスサプライチェーン」の実現では、エンドツーエンドの可視化が重要なポイントとなります。またSCMの自律化では、自動化の要素も入ってくると思います。様々な現象に対して人がすべてを判断するのではなく、経営にインパクトのあるものだけを人が判断し、経営へのインパクトが小さいものは、過去のアクションを踏まえて自動的に判断する。時間を有効活用し、重要度の高い判断にリソースを集中することも大切です。

「オートノマスサプライチェーン」で様々な現象に対し、経営の意思を反映し現場が自律的に動くことでリスクを回避する

―今後の展望について教えていただけますか。

前平 Blue Yonderの買収には、ハードウエア中心のビジネスからお客様の課題を解決するビジネスへとシフトしていく、パナソニックの構造改革が背景にあります。このようなソリューションビジネス関しては、Blue Yonderが先生です。学ぶ面がたくさんあります。パナソニックは、Blue Yonder単独の経営に大きく関与することではなく、シナジー効果の最大化に力点を置いています。お客様に付加価値の高いソリューションを提供するために、両社の製品や技術の融合とともに、両社のお客様に対する新たな価値提供の共同研究も行っています。またBlue Yonder と進めるSCMビジネスでは、必要なハードウエアはパナソニック製品にこだわりません。お客様の課題解決が最優先テーマだからです。そうすることにより日本におけるSCMビジネスの市場が拡大していくと確信しています。

白鳥 SCM市場の開拓に関して、パナソニックとの連携によりポテンシャルが大きく変わってきたと実感しています。一方で、経営面でも、研究やソリューション開発においてもBlue Yonderの自立性は確保されており、Blue YonderのDNAは社内で息づいています。両社のシナジー効果により新しい価値を創り出しお客様の課題解決に貢献していくことに、両社一体となって取り組んでいます。

―ニューノーマル時代を勝ち抜くために、SCMに取り組む日本企業にメッセージをお願いします。

白鳥 SCMの本質は、在庫最適化やコスト削減、業務改善にあるのではなく、ビジネスを永続的に続けるためのマネジメントです。コロナ禍をきっかけとするサプライチェーンの混乱は、真のSCMに取り組むチャンスでもあります。優れた技術や製品だけではグローバル競争を勝ち抜くことはできません。これからの10年を見据え、競争力や企業価値を高める武器としてSCMを実装、または再構築することは、日本企業の持続的成長につながります。

前平 SCMは個別課題の解決策やITプロジェクトではなく、企業改革であるとの認識は白鳥さんと同じです。特に近年では、労働人口の減少、SDGs(持続可能な開発目標)、自然災害、貿易摩擦など、日本企業のSCMにおける課題の解決は、経営陣が考えるべきCEO(最高責任者)アジェンダです。経営のリーダーシップのもとでSCMに取り組む日本企業を、パナソニックとBlue Yonderの両社はお客様に寄り添いながら全力で支援していきます。

日本の生産現場では、工夫や努力を重ねてリードタイムを1秒短縮するための改善活動に取り組んでいます。一方で、製品を出荷して2日間倉庫で保管されているとしたら、顧客起点の観点ではトータルリードタイムでムダが生じているわけですね。サプライチェーン全体でムダをなくすことにより、生産現場で削る1秒の価値が高まります。強靭で柔軟性の高いSCMの実現は、日本企業の強みである現場力を最大限に活かす秘策でもあります。

*パナソニックグループの持株会社制への移行にともない、パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社は、2022年4月より、「パナソニック コネクト株式会社」に変わりました。

お問い合わせ

Blue Yonderと目指すオートノマスサプライチェーンの実現に向けて

https://connect.panasonic.com/jp-ja/blueyonder

Blue Yonderジャパン マーケティング部

https://blueyonder.com/jp/ja/

Email:sales-japan@blueyonder.com