Vol1パナソニック×Blue Yonder連携の展望
VUCA時代におけるサプライチェーンの重要性
vol2パナソニックが提唱する「オートノマス(自律的)ファクトリー」
自動化と知能化による実装プロセスの新プラットフォーム
vol3ヤマト運輸×パナソニック コネクト
IE(インダストリアルエンジニアリング)で物流ターミナルのオペレーション改革に挑む

宅配便市場で43.8%のシェアを占めるヤマト運輸。EC需要の拡大に伴い取扱個数が増加し続ける中、同社は危機感を強める。宅配領域のコモディティ化により差別化が今後ますます難しくなるからだ。将来に渡り持続的に成長するために、同社はラストマイルだけでなく上流も含めたサプライチェーン全体をトータルで支援する取り組みを進めている。その一環として、同社の事業基盤を支える物流ターミナルのオペレーション改革に着手。パートナーとして選択したのは、100年以上にわたり、電化製品などのハードウェアを製造し、販売してきたパナソニックグループだ。モノづくりにおけるカイゼンの取り組みは、他分野でも真価を発揮するのか。ヤマト運輸の長尾裕社長とパナソニック コネクト(以下、パナソニック)の樋口泰行社長が対談。製造現場の「IE(インダストリアルエンジニアリング)とテクノロジー」が物流改革にもたらす意義、さらに今後のビジネス戦略について語り合った。
※2020年度宅配便市場シェア、国土交通省調べ(航空貨物を除く)

両社に重なる危機感
コモディティ化からの脱却へ

―ヤマト運輸、パナソニック、両社は大胆な経営改革に取り組んでいます。その背景をお聞かせください。

長尾 ヤマト運輸は、1919年の創業以来、物流産業に新しいビジネスモデルを創造し、成長してきました。創業10年後の1929年に開始したのが、お客様の荷物を積み合わせて配送する、日本初の路線事業(定期便)でした。また、大口荷物を一度に運ぶのが物流の主流だった1976年にスタートしたのが、個人の小口荷物にターゲットを絞り、「電話1本で集荷、翌日配達」というコンセプトの「宅急便」です。宅急便は、コロナ禍に伴う「巣ごもり需要」を契機としたEC市場の急拡大を背景に、2022年3月期の年間取扱個数は約22.5億個までに成長しました。宅配便市場は拡大していますが、問題はコモディティ化により差別化が難しくなっているという点です。このまま宅急便事業だけで成長を続けることはできないと危機感を持っています。

パナソニック コネクト株式会社
代表取締役 執行役員 社長・CEO
樋口 泰行 氏

樋口 長尾社長の今のお話は、当社にも重なる危機感です。ハードウェアはコモディティ化するスピードが速く、台頭するアジアのメーカーとの競争に苦しむという悪循環からなかなか抜け出すことができません。パナソニックでは、100年にわたるモノづくりで培ったIE(インダストリアルエンジニアリング)とテクノロジーを融合し、モノを造って(製造)、運んで(物流)、売る(流通)といった各現場の改革を支援するBtoB事業の展開に力を入れています。2022年4月、BtoBに特化した事業会社としてパナソニック コネクトが誕生しました。お客様に密着しプロセスを一緒に考えて課題を解決していくという、長いおつきあいのビジネスを創っていくのが、当社のBtoB事業のベースです。また、2021年9月に買収完了したサプライチェーン・ソフトウエア世界的大手のBlue Yonderのソフトウエアを組み合わせて、現場起点とするSCM(サプライチェーンマネジメント)の全体最適化を実現するソリューションの展開に注力しています。

ヤマト運輸株式会社
代表取締役社長
長尾 裕 氏

長尾 当社も、コモディティ化から脱却するべく、お客様の経営課題を解決するビジネスモデルの創造に取り組んでいます。目指しているのは、グループの経営資源を結集した「ワンヤマト」体制のもと、物流オペレーションや管理に留まらず、サプライチェーン全体を支援し、物流を通じてお客様の経営課題を解決する「LLP(Lead Logistics Partner)」に進化することです。LLPとしての優位性の確保、EC需要の拡大への対応などを実現するため、当社の物流を支えるベース店(物流ターミナル)の現場改革が求められていました。社内でゼロベースから取り組むには限界があるため、スピーディかつ着実に成果を出すべく、経験を持つ先生に付いて理論を含めて学びながら進めることができないかと考えました。当社とのこれまでの信頼関係、目指す方向性の一致など、パナソニックさんは先生としてまさに適任でした。

※IE(インダストリアルエンジニアリング)…工程や作業内容を科学的に分析し、最善の生産管理方法を追求する手法。

ヤマトグループは、「ワンヤマト」体制でサプライチェーン全体の変革を支援するパートナーを目指す

物流ターミナルの改革は
“工場的発想”が必要

―従来の物流ターミナルの課題についてお聞かせください。

長尾 私もベース店で責任者を務めていた経験があります。従来のベース店の根本的な課題は、オペレーションのカイゼンの取り組みが属人化しており、標準化ができていなかったことです。各ベース店で課題認識を持つ責任者がカイゼンに着手し、一時的に課題を解決できても、会社全体としての取り組みではないため、限定的になり横展開ができていませんでした。そこで、オペレーションの標準化にどう取り組むかを考えた時、当社にはノウハウがなく、また客観的な視点も必要になることから、社外の力をお借りすることにしました。

ヤマト運輸は会社全体でオペレーションの標準化に取り組む

―一般的なコンサルティングではなく、なぜメーカーのパナソニックを選択されたのでしょうか。

長尾 通常は、コンペティションを実施し、各社に提案いただいて判断するという流れになるのかもしれません。パナソニックさんには、当社の最前線のセールスドライバーが利用する携帯端末の開発をずっと担っていただいています。現場では直射日光も当たりますし、雨も降り、汗もかきます。セールスドライバーが端末をどういう環境で、どういう使い方をしているのか、パナソニックさんが我々の現場を熟知し理解した上で、現場に合った端末をこれまでご提案いただいています。それが私は、重要なことだと思っています。ベース店のオペレーション改革も、当社の業務を深くご理解いただいているパナソニックさんなら、これまで培った信頼関係のもとで一緒に進めることができるというのが、大きな理由です。また、日本を代表するモノづくりメーカーであり、工場のオペレーションに長けている点も、標準化の“学び”の観点では重要でした。荷物の仕分けを行う物流ターミナルは、いわゆる工場であるべきだと思っています。その改革には工場的発想が必須です。

セールスドライバーが携行する、パナソニック製の頑丈タブレット端末・タフブック

樋口 当社のライン作業で部品を組立・加工する組立製造は、多品種少量をハンドリングするため、物流ターミナルの現場業務と共通する要素が多くあります。現場を見える化し科学的に分析を行い、作業の細分化、標準化を実施し標準工数を設定する。こうした組立製造の標準化プロセスは、物流ターミナルでも活用が可能です。標準化していく中で、自動化か、人的運用かを見極めます。また、別のラインや他の物流ターミナルと標準工数を比較し、工数の最適化に向けた要因分析を行い、全体の工数カイゼンにつなげます。さらに、現場を見える化しPL(損益計算書)管理やBS(貸借対照表)管理につなげていくことが大切です。

製造現場における見える化のノウハウを物流ターミナルへ活用

長尾 今回のプロジェクトを通じて、パナソニックさんのコストに対する厳しさは非常に勉強になりました。新商品の価格から割り出した原価の中でオペレーションを貫徹するというロジックは、これまでの我々にはなかった視点です。物流ターミナルの作業を分解し、工程ごとの適正コストを算出し、そのコスト内に抑えるためにどうオペレーションを改革するか。この視点は、これからの当社には必要な視点になると思います。ファイナンスへの効果を検証するため、パナソニックさんの財務スタッフの方にもプロジェクトに参加いただきました。

パナソニックによるヤマト運輸の物流ターミナル改革の全体像

現場に入り込み、自社の現場と
同様にカイゼンに取り組む

―パナソニックのコンサルティングを受けた感想を教えてください。

長尾 プロジェクトとして取り組みをスタートしたのは、埼京ベース店でした。パナソニックさんのスタッフは、埼京ベース店がまさに自分たちの職場という認識をもってカイゼンに取り組んでくれました。パナソニックさんのコンサルティングは、理論に基づいた提案だけでなく当社の現場スタッフと伴走し、共に悩み、一緒に解決していくスタイルです。一般的なコンサルティングのアプローチとは全く異なります。

樋口 パナソニックのDNAには、現場カイゼンを徹底して行う文化が脈々と息づいています。それは、BtoB事業でお客様と一緒に行う場合でも変わりません。現場カイゼンに対する熱意といった面で、当社の現場とヤマト運輸さんの現場は、親和性が高いと思います。また、IEとテクノロジーを融合して課題解決に取り組むことができるのも、当社の強みです。

パナソニックは自社に根付いた文化を生かし、ヤマト運輸の現場に伴走して課題を解決していくコンサルティングを行う

長尾 私たちでも、「こうカイゼンしたい」と考え、取り組むことはできます。しかし、成果がでたのかどうか、その裏付けとなる客観的なデータをどう取得し、どう活用するかまで考えるのは非常に困難です。パナソニックさんは、「ここにカメラやセンサーをつけましょう」とハードウエアを持ってきて、ソフトウエアもすぐに用意し分析を行う。このスピード感は、IEとテクノロジーの両方を持つパナソニックさんだからできることです。当社のスタッフが、データを活用したカイゼン手法に戸惑う面があっても、パナソニックさんに伴走していただき、納得感を持って課題解決や標準化ができることは非常に嬉しいことです。データに基づき“気づき”を得るという新しい体験をしたスタッフが増えたことで、現場の雰囲気も変わってきました。

樋口 現場の文化を変えるという観点は、改革の定着はもとより、SCMへの展開を考える上でも重要です。システムを導入しても、現場から正しいデータがあがってこなければ意味がありません。可視化し標準化して、常に現場からの正しいデータをもとに予測などを行うことが必要です。

ヤマト運輸埼京ベース店にて撮影

ノウハウの明文化のもと
基幹ターミナルから順次全国展開

―これまでの成果と、今後の展開についてお聞かせください。

長尾 パナソニックさんに、埼京ベース店におけるオペレーション標準化のメソッドやアプローチ、手順などを明文化していただきました。今後は、明文化したものを当社で理解し、迅速に横展開していくフェーズに入ります。まずは都市部を中心に基幹ターミナルに展開し、順次全国に拡大していきます。また、オペレーションの標準化により、当社のキャパシティを正確に把握できるため、需要変動に対して適切かつ柔軟に対策を打てるメリットもあります。

今後は、SCM領域においてもパナソニックさんのご協力に期待しています。変化が激しく、先が読めない時代では、お客様の商品がどこでどんな状況にあるのか、一元的にトレースできることが非常に重要です。例えば、Blue YonderのSCMソフトウエアを使って、サプライチェーン全体を見える化し精緻化することで、上流からラストマイルまでサプライチェーン全体の最適化が図れます。お客様の経営課題に対する提案力・解決力を強化するために、これからもパナソニックさんのご支援をお願いしたいと思います。

樋口 社会インフラを担うヤマト運輸さんの物流ターミナルにおけるオペレーション改革に貢献できたことは大変光栄です。また、当社にとっても今後の財産となる貴重な経験となりました。さらに、SCM領域に対する戦略の方向性も当社とヤマト運輸さんは一致しており、今後の連携にも大きな可能性を感じています。

最終的には、サプライチェーンの「オートノマス化」を目指し、これまで以上に「現場」と向き合い、課題を探り、理想の現場の実現にむけて、ヤマト運輸様をはじめとしたお客様の現場プロセスの改革に貢献していきたいと思います。長尾社長、ありがとうございました。

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「かなえよう。」スペシャルサイト_case01_物流の現場を再発明する
- パナソニック コネクト

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