


去る6月1日、日経トップリーダー主催のプラチナフォーラム2023が開催された。昨年までは新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、オンラインで実施してきたが、2023年はリアルでの開催が復活。文具の世界に革命を起こす有名経営者やユニークな経営で世界でも販売を広げる地方企業の経営者、五輪金メダリストらが登壇した。ここでは、豪華講師陣の講演の一部をレポートする。
新市場を生み出す経営術
宮本 彰氏(キングジム 社長)
ニッチ市場を開拓する独自の経営スタイルのつくり方
包行 均氏 (筑水キャニコム 会長)
M&Aコンサルタントから見た企業の「成長戦略」と最新のM&A類型別事例
大澤 卓也氏(日本M&Aセンター 業種特化事業部 業種特化4部 部長)
人的資本経営の肝となる従業員エンゲージメントの育み方
川本 周氏 (アトラエ Wevox営業責任者)
中小企業での営業×データ活用 成功への2大ポイント
佐々木 耀氏 (株式会社キーエンス データアナリティクス事業グループ)
最高になる自分の鍛え方~唯一無二の自己表現へ~
小平 奈緒氏 (相澤病院所属、平昌五輪 金メダリスト)
川本 周 氏 株式会社アトラエ
Wevox営業責任者

働きがいのある会社ランキング国内1位、アジア5位※を獲得するほど、自社の組織づくりにこだわっている株式会社アトラエ。
同社は、慶應義塾大学島津教授の監修のもと、エンゲージメントを網羅的に測定できる組織力向上プラットフォーム「Wevox(ウィボックス)」を提供。2800社以上、約2億件の回答データを保有するWevoxを通じて得た知見をふまえ、エンゲージメントに関するよくある誤解をひも解いてくれた。
よくあるエンゲージメントの間違いとして、川本氏は、「従業員満足度とエンゲージメントは同じものだととらえてしまう方がいる」という。
従業員満足度はあくまで会社やマネジメントが与えることを前提として、与えられている従業員の満足度を問うているもの。一方でエンゲージメントは自ら主体的にいきいきと取り組めているかを見ていく状態を表す指標である。「視点や結果に対するアプローチもまったく異なるものなので、混同してはいけません」
また、組織や職場変革を推進する際、マニュアル的に解決できるという思い込みもNGだ。川本氏は、エンゲージメントは既存の知識・方法で解決できる技術的問題ではなく、そこにいる全員が問題の当事者になって学習を通じて解決する必要があり、チームメンバーひとりひとりが主体になる必要があるという。
島津 (2009) 産業ストレス研究, 16, 131-138を改訂
エンゲージメントスコアの測定にも誤解がある。エンゲージメントは非常に変動しやすく、適切なタイミングと要因を把握してアプローチすることが重要である。「我々の研究では、3ヵ月に1回の測定を実施した場合に、変動を見落とす項目の割合は93.3%にも達します。エンゲージメントを高めるには、鮮度の高いデータをもとにアプローチすることが重要なのです」
エンゲージメントは経営・人事部門が解決するという誤解もありがち。じつはエンゲージメンは、会社の組織的な課題ではなく、身近な同僚や上司の影響が極めて大きいのだ。
「エンゲージメント向上には、現場が積極的に取り組むことが不可欠で、人事が旗振りをしてもうまくいきません。管理職を中心にメンバーを巻き込んでアプローチすることが重要。データからも対話の頻度が重要だと実証され、対話と振り返りが有効だと示されています。サーベイだけではなくフィードバックを経てアクションを実行することが肝要です」
「エンゲージメントはなかなかイメージできず難しいものだと思われがちです。エンゲージメントが高まっている状態をイメージできないまま向き合ってしまうと難しく感じますが、逆にいうと、向き合い方を学習さえすれば、エンゲージメントは順調に育めます。理想の状態に近いチームをイメージしたり観察したりして、その状態につながるためには何を学べばいいのか、そういう発想、捉え方をしてみてください」
「エンゲージメント対策に充てる時間がない」という声も多いが、それも大きな誤解であると川本氏は語る。
「エンゲージメント対策は、行動を増やすのではなく、『入れ替える』という発想が重要です。社員の日々の体験すべてがエンゲージメントに影響を与えるため、仕事を任せる、目標を伝える、ミーティングをするといった日常の各場面で、やりがいを高める言動をすることでエンゲージメントを改善できます。逆に日常行動を変えないと改善は難しい。普段の取り組みを振り返り、入れ替えることがエンゲージメントの向上につながります。また、NG行動を列記した『やめることリスト』を作る方法も非常に有効です」
「なぜ、エンゲージメントを大事にするかということを含めて、リーダーが自身の言葉で言語化して伝えることができないと改善はできません。『私が考えるエンゲージメントとは、このようなものだ』ということをぜひ、自分の言葉で言語化してください。それだけでも大きく改善につながるはずです」
エンゲージメントを育むことは難しいものではない。サーベイをきっかけに、チーム内の誤解を減らし、自ら学習し育むことができれば、エンゲージメント向上は可能である。