「それぞれの法人が従来カバーしていたエリアや業種が一体化し、得意分野が異なる人材が1つの法人に結集したことで、クライアントに提供できるサービスの幅がさらに広がりました。それぞれの知識と経験の掛け合わせによって、これまで以上に質の高い監査業務・アドバイザリー業務の提供ができるようになったことも、一体化したことにより生まれた新たな強みだと言えます」
そう語るのは、24年7月に同法人の執行役副代表 アシュアランスリーダーに就任した山口健志氏である。
PwC Japan有限責任監査法人は、監査や保証、その知見を活用した会計、内部統制、ガバナンス、サイバーセキュリティー、規制対応、デジタル化対応、株式公開など幅広い分野におけるアドバイザリー業務を提供しており、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPwCのパーパスの実現を目指している。
中でも、同法人が注力し続けているのが、「トラスト」の探求である。
「トラスト」とは何か。一般的には「信用」「信頼」などと訳されることが多いが、同法人が探求対象としている「トラスト」を理解するには、まず「信用」と「信頼」の違いとは何かを考える必要があると、PwC Japan有限責任監査法人の上席執行役員 パートナーで、トラスト・インサイト・センター長の久禮由敬氏は言う。
「『信用』は、主に過去のことや、見える物事に対して客観的かつ一方的に与えられる評価という性格のものが多く、『クレジット』と訳されるケースが多い。例えばクレジットカード等の信用情報は、その人の過去・現在の金融取引の情報に基づき『信用』が一方的・客観的に評価されたものです。一方で、『信頼』は、過去・現在のみならず将来への予測も含め、多方向での主観的な期待や感情で、見えないものに対しても抱かれる性格のものだと考えています」
様々なトランスフォーメーションが進むにつれて透明性の向上とそれを基にした「トラスト(信頼)」が必要とされている領域が増えているのだという。
「様々なトランスフォーメーションのベネフィットを世界中の人々が享受し、最大限に楽しめることは有意義なことです。それと同時に、トランスフォーメーションによって新たに生じる人々の不安や疑念を許容可能な状態にまで低減するためには、未来に対して安心感が得られるような透明感のあるプロセスや取り組み、情報開示をすることが重要になります。社会や企業が、人々から『トラスト』を得ることは、今後ますます大切になっていくと思います」(山口氏)
重要な意思決定や判断をする際に、誰が、どのような不安や不信、疑念を抱くのか。世の中で同時並行的に進んでいく様々なX(トランスフォーメーション)の傍らで、どのような「トラストギャップ(信頼の空白域)」が生じるのか。そして、その空白域はどのような方法で解消できるのか。同法人は「トラストギャップ」にスポットを当て、その研究を続けている。
久禮氏は、同法人が07年に設立した基礎研究所の担当パートナーとして、所内・客員の研究員のメンバーと「トラスト」に関する研究を行ってきた1人だ。人々の社会の変化や未来に対する期待や希望、不安や疑念は、Xのあるところに生じやすい。
「新しいXが動き出すと、ワクワクした気持ちや未来に対する期待だけでなく、同時に、それまで感じることのなかった不安や不信も新たに生まれます。しかも現代では、世界中で同時並行的に技術革新が進み、まさに『Society 5.0』が加速しています。内閣府が整理・公表している通り、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会であるSociety 5.0では、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会が実現できるか、が重要な挑戦課題です。持続可能性と強靱性を同時に実現し、国民の安全と安心を確保しながら、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会をどうすれば築き上げられるかが大切になっています。Society 5.0への進化は、様々なトランスフォーメーションが絡んで進展しており、AXやDX、GX、SXといった様々なXが、互いに関係し合いながら未来への期待と同時に不確実性の幅を広げています」(久禮氏)
Xには、新しいイノベーションを生み出し、人々の生活を豊かにしてくことが期待されている。そして、それと同時に、多くの人々が社会の仕組みや企業の活動、生活環境などが急速に様変わりしていることに大きな戸惑いも感じつつある。こうした変化の中で、具体的にどのような形で「トラストギャップ」は生じているのであろうか。