2024年9月に公表された「新リース会計基準」によりリースの概念は大きく変わった。従来のファイナンス・リース、オペレーティング・リースという区分が廃止され、使用権モデルに一本化されることになるのだ。原則、すべてのリースをオンバランス処理することも必須となる。適用開始となる2027年4月まで、準備期間は2年を切った。新基準は、会計業務や経営戦略にどのようなインパクトを与え、どのような対策が必要になるのか――。ここでは2025年6月5日に行われたセミナーの内容を基に、そのヒントを探ってみたい。
オービックビジネスコンサルタント
新基準で経理業務はこう変わる!
3つの業務課題とその対応策とは
TOKIUM
TOKIUM経理部が経験を基に語る
新基準の中身と対応のポイントとは

基調講演:

トーマツ
新リース会計基準の概要は

有限責任監査法人トーマツ 監査事業本部 東日本第三事業部 兼 品質・リスク管理本部 テクニカルセンター(J GAAP) 宗延 智也氏
有限責任監査法人トーマツ
監査事業本部 東日本第三事業部
兼 品質・リスク管理本部 テクニカルセンター(J GAAP)
宗延 智也
 IFRSをはじめとする国際的な会計基準は2016年の改正により、借り手のすべてのリースがオンバランス化された。日本の会計基準でもこれと整合性をとるために策定されたのが「新リース会計基準」である。特にインパクトが大きいのが借り手側だ。「リースの範囲が拡大するとともに、従来のオペレーティング・リースも原則オンバランス化が必須になります」とトーマツの宗延智也氏は語る。

 これまで経費として計上していた契約も、条件が合致すればリース対象になる。店舗やオフィス、倉庫などの不動産賃貸契約、BPOなどの役務契約、IT機器や什器、社用車や産業用機械など識別対象は多岐にわたる。リースか非リースか、一つひとつ識別する作業は大きな負担だ。

 さらにすべてのリースを資産や負債としてB/S(貸借対照表)に計上しなければならず、P/L(損益計算書)にも影響が出る。計算対応、仕訳伝票起票などリースに係る会計処理業務が複雑化する。

 経営への影響も大きい。「資産・負債が増加することで、自己資本比率などが変動し、財務指標へマイナスの影響を及ぼす恐れもあります。経営・事業戦略の見直しを迫られる可能性もあるでしょう」と宗延氏は指摘する。

 強制適用までの期間は2年を切った。影響調査を含む適用準備をできるだけ早く始動することが肝要だ。

特別講演:

川口宏之公認会計士事務所
「隠れリース」の見抜き方は

川口宏之公認会計士事務所 公認会計士 川口 宏之氏
川口宏之公認会計士事務所
公認会計士
川口 宏之
 新リース会計基準では、契約書にリース契約や賃貸借契約という文言が含まれていなくても、特定の資産を支配していればリースに該当する。これまでリースとされなかった取引がリースに該当する可能性があるわけだ。「形式上はリース契約ではないものの、実質的にリースに該当するもの、それが『隠れリース』になります」と公認会計士の川口 宏之氏は指摘する。

 隠れリースが事後的に明らかになった場合、財務諸表を修正し、決算短信やIR資料も再発行しなければならない。適用準備の甘さは市場から厳しい評価を受け、企業価値や社会的信用の低下も懸念される。

 リースに該当するか否か。判定基準は示されているが、その識別は難しい。例えば、ある設備を賃貸借契約した場合、借り手が独占的に利用できればリースに該当するが、利用割合が70%以下ならリースに該当しないという判断も成り立つ。しかし明確な定義があるわけではないし、利用割合の算定も難しい。

 隠れリース対策は経理部門だけでは対応できない。関連部署を巻き込んで全社的に取り組む必要がある。

 「コンサルティング会社など外部のサポートを受けて、グループや子会社を含めた調査方法、対応プロセスを検討するなど包括的な視点で早期に対応を進めることが重要です」と川口氏は訴える。隠れリースを事前に洗い出すことが、効果的なリスク対策になる。