社会実装に向け実証加速
「ルール整備」と「データ主権」に対応
「海外のSAFデジタルプラットフォームは、ISCCやRSBがそれぞれ構築しており、米国では民間企業が独自にプラットフォームを有しクレジットを発行しています」と松枝氏は話し、こう続ける。「国によってクレジットなどのルールは異なります。日本もそうです。自国でクレジットを流通させるためには、国際標準をそのまま使えません。国内事情に合わせたルール整備が必要です」(松枝氏)
「ルール整備」とともに、国や地域が自国のデータに対する管理権を持つ「データ主権」の確保も課題だ。SAFデジタルプラットフォームでは、環境価値の測定もクレジット化も、各企業のデータ開示がベースとなる。「企業の競争力につながるデータは公開したくないという側面があります。NTTデータのSAFデジタルプラットフォームでは、データ主権を確保するデータスペース技術を採用し、企業が公開したい情報だけを公開することを可能にしています。データ開示に関する企業の懸念を払拭し、環境価値をより正確に測定できます。データスペース技術は、バッテリートレーサビリティプラットフォームで採用しました。世界的にも活用例が少ない先進技術です」(松枝氏)
NTTデータのSAFデジタルプラットフォームは、実証フェーズに入った。「航空会社、空港、SAF製造会社、認証機関など関連企業・機関が参加しています。原材料の収集から生産、流通までの流れを検証します。原材料収集フェーズではアプリを活用した回収能力の向上、一般家庭参加による資源獲得能力の強化が実証のポイントです。生産のフェーズでは環境価値の指標化が、流通フェーズではB&C方式を用いた環境価値取引の市場化がそれぞれポイントとなります。成果を積み重ねる中で、政府などによるルール整備と歩調を合わせ、国産SAFの普及拡大に貢献していきます」(松枝氏)
日経BP 総合研究所 上席研究員 金子憲治が聞く
SAFデジタルプラットフォームの
意義と真価

日経BP 総合研究所
上席研究員
金子 憲治

株式会社NTTデータ
第一インダストリ統括事業本部 自動車事業部
第二ビジネス統括部 ビジネス担当 部長
松枝 進介 氏
金子憲治(以下、金子) バッテリートレーサビリティプラットフォームの技術やノウハウは、SAFデジタルプラットフォームにどのように活かされているのでしょうか。
松枝進介氏(以下、松枝) バッテリートレーサビリティプラットフォームは、欧州電池規則に対応するために、製品単位でカーボンフットプリント値などを、サプライチェーン横断で計測することに利用されています。SAFデジタルプラットフォームとの類似点でいうと、原料段階から積み上げてカーボンフットプリント値を計算するというプロセスは同じです。また、プラットフォームで収集・計算したデータを、自動車会社は欧州委員会に、航空会社は認証機関に提出します。さらに、そのデータを使って製品やサービスの改善に取り組むといったことも共通しています。バッテリーもSAFも、複数の会社が関わり、管理主体も異なる中で、サプライチェーン横断で情報を積み上げ、トレーサビリティを管理するためにはプラットフォームが必要です。
金子 サプライチェーンが大きく広がるSAFにおいて、トレーサビリティを実現するポイントはありますか。
松枝 基本的に、事業者が報告したものを積み上げていくしかないと思います。各社が自社の活動に対して責任をもってカーボンフットプリント値を計算し、それをバケツリレーのようにつなげていく方法です。積み上げたデータに基づき、認証機関がSAFとしての環境価値を認証し、SAFを利用することで便益を受ける多くの企業の間で環境価値を利用できる形にしていきます。
金子 SAFにおいてクレジット化する意義をどのようにお考えですか。
松枝 クレジット化の意義は大きく2つあると考えています。1つ目は、SAF製造場所が偏在しているため、クレジット化により長距離輸送等を避けることで効率的に利用拡大していくということ。2つ目は、航空会社のコスト負担軽減。生産者の努力もあり、価格は下がってきています。しかし、石油由来燃料と同等の価格になるかというと、難しいと思います。クレジットにより環境価値を売買することで、SAFを利用する航空会社のコスト負担を軽減する仕組みが必要です。そうした考え方は、CORSIAにも取り込まれており、世界各国でクレジットの活用が進んでいます。
金子 SAFデジタルプラットフォームの展望をお聞かせください。
松枝 今後、SAF以外のさまざまな次世代エネルギーに応用できるプラットフォームになりうると考えています。技術開発や市場の状況に応じ、このSAFデジタルプラットフォームを段階的に進めることができるため、次世代エネルギーを社会に広めるための具体的な計画やロードマップを描きやすく、その可能性を広げます。






