経営の重要課題となったシームレスな顧客体験の設計
顧客体験の最適化は、もはやマーケティングの範囲にとどまらず、企業活動そのものに直結するテーマになりました。顧客体験の向上は、購買機会をどう増やすのか、LTV(顧客生涯価値)の高いユーザー、すなわち継続的に利用し支持してくれるファンとどう関わるのかといった、事業全体の基盤に関わるものになってきたからです。
今や生活者はモバイル前提で動き、オンラインとオフラインの境目もなくなりつつあります。それゆえ企業は、人々の生活のどこに、どのような形で接点を持つのかを徹底的に考えねばなりません。どれだけ技術が進化しても最終的な答えは常に使い手の側にあります。多くの人は細かい技術を気にせず生活の中で自然に使っていますし、結局は“意識しないで使える体験”をどれだけデザインできるかが重要な鍵を握ります。
LINEヤフー株式会社
上級執行役員 コーポレートビジネスドメインリード
池端 由基 氏
ところが、実際は朝ニュースを見て、天気を調べ、電車を検索して、家族に連絡して、音楽を聴くといったように、それぞれを「わざわざアプリを起動する」形で利用しており、生活動線として統合されたシームレスな体験にはなっていません。データが十分に連動していない点も課題です。
LINEヤフー株式会社
上級執行役員 コーポレートビジネスドメインリード
池端 由基 氏
だからこそLINEヤフーでは断片的なサービス同士をつなぎ、生活の中でスムーズに流れる体験へと結び付けたいと考えています。これを実現するため、「Connect One」構想を掲げ、「LINE公式アカウント」を軸にビジネス向けソリューションを展開しています。機能群をワンプラットフォームで一元管理することで、LINE上の各サービスが、ユーザーにとって1つのサービスとして自然に受け取れるようになります。顧客接点が最適化されてデータが集まることで、ユーザーは手間を感じることなく、複数の体験を一続きの流れとして受け取れるようになります。こうした積み重ねが、より快適な体験につながっていきます。
これは単なる付加価値ではなく、ビジネス全体や経営そのものにつながる大事な考え方です。LINEヤフー以外に多くのユーザーのライフイベントと接点を持てる企業は日本にはありません。
LINE公式アカウントを中心にCX・DX、CRM、コマース、データ活用までをワンプラットフォームでつなぐ「Connect One」。顧客接点を統合し、ユーザーにとって自然な体験を実現する
LINEミニアプリがより身近な存在に企業の接点が急拡大
現在、アプリ市場は拡大を続け、ユーザー1人あたりが月に利用するアプリ数は平均51個に達しています(出典:アプリ市場白書2024)。一見すると多くのアプリが使われているように見えますが、実際には利用時間や関心には限りがあり、その中で選ばれるアプリはごく一部です。結果として、企業が優れた機能や体験を備えた自社アプリを提供しても、認知されにくい、あるいは利用開始までのハードルが高いことから、十分に活用されない状況が生まれています。
本来、ユーザーの利便性を高めるはずの自社アプリが十分に利用されていない現状は、企業の取り組みが届いていないという問題であると同時に、本来享受できたはずの体験価値が失われている状態でもあります。使う側のストレスを取り除き、良質な体験を必要な人に正しく届ける、その橋渡しこそがLINEヤフーが提供したいコンセプトの核心です。
具体的な施策として、LINE上で自社アプリを作ることができる「LINEミニアプリ」に注力しています。自社アプリが浸透している多くの企業においても、LINEミニアプリを導入することで、新たなユーザーが動き始める現象が見られています。日常的に使われているLINEのプラットフォーム上で体験を提供すれば大きく利便性が向上しますし、会員基盤がリッチになりロイヤルティの高いユーザーが増えるなどの効果も見込めます。
そして、これから変わっていくのは、オンラインサービスとの“出会い方”です。現在はユーザー側が能動的にアプリを探して利用するという流れが中心でしたが、情報が飽和してきたことで、本当に必要なサービスにたどり着きにくくなっています。加えてAIが進化することで好みが固定化され、新しい体験に触れるきっかけが失われやすい。オンラインの世界における“偶然の出会い”は希少になっています。
そこでLINEヤフーでは、2026年3月をめどにLINE上にLINEミニアプリの入り口となる「ミニアプリタブ」を実装し、LINEヤフーならではのロジックやランキング、行動データをもとにパーソナルな提案をしていく予定です。
探す・見つける・使うが一つに。LINEミニアプリとの出会いを広げる新しい導線
また2025年11月からはスマホをかざすだけでLINEミニアプリやLINE公式アカウントへと誘導できる「LINEタッチ」の提供を開始しました。レジ横や店内、テーブル、イベント会場などオフラインでの活用を想定しています。
タッチするだけで、LINEミニアプリやLINE公式アカウントを起動できる「LINEタッチ」
これにより企業にとっては接点拡大の機会が、ユーザーにとってはLINEミニアプリに触れる機会が確実に増えます。会員登録などの手間もなく、街中でタッチするだけという仕組みが広まれば、オンライン、オフラインを問わず、新しい体験との出会いが創出できるはずです。
目指すは30万件LINEミニアプリの仲間を大募集
現在、2万7800件(2025年11月末時点)のLINEミニアプリがリリースされており、今後3年間で30万件規模に増やす計画です。先に触れたように、名だたる企業がLINE上でサービスを提供してくださっています。利用機会が増えれば、ユーザーとの継続的な関係構築が進み、利用データの蓄積や購買・予約などのトランザクション拡大といった形で、企業にとって複合的な価値が生まれていきます。
今後は、生活の中で利用頻度が高く、LINEミニアプリの価値を広げていくために重要な起点となる分野として、飲食、美容、インフラ系サービス、行政手続き、日用品や食品の小売などを中心に展開を進めていきます。そのうえで、ゲームやエンターテインメントといった分野も含め、生活を構成する多様な体験を横断的に捉えながら、特定の領域に偏ることなく提供価値を広げていく考えです。
一方、日本で埋もれかねないサービスをデジタル空間に載せ、未来へとつないでいくことも果たすべき重要な役割だと考えています。日本各地には優れたサービスが存在するにもかかわらず、デジタル化の遅れによって十分に可視化されていない現状があります。LINEヤフーが掲げる「ライフプラットフォーム」というミッションには、技術を目的化するのではなく、生活を豊かにする手段として活用していくという意味を持ちます。その思想を日本で実現できる存在は、LINEヤフー以外にないと考えています。
LINEミニアプリとLINE公式アカウントは、これまでとは異なるフェーズに入っていきます。LINEヤフーのIRにおいても成長軸として明確に掲げており、資金や人材の投下を本格化させていきます。目標は決して低くありませんが、旗を高く掲げることで志を同じくする仲間が集まると信じています。そのためにも、ともに価値創出に取り組める企業との出会いを求めています。
