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特集

「壁の中」で使うからICTは失敗する! 日本企業のポテンシャルを引き出す方法
2009年6月11日公開

「壁の中」で使うからICTは失敗する! 日本企業のポテンシャルを引き出す方法

不況を突破!伊藤洋一「壁崩し」の技法

現在の日本の経済情勢は、マスコミや世論が悲観するほど悪くはない。アメリカ、中国、インドをはじめ世界の経済を知り尽くす伊藤洋一氏はそう語る。不況の突破口を開くのは、ICT(情報通信技術)を使った「壁崩し」だ。





米国よりも日本の方が自国経済を悲観している

伊藤洋一(いとうよういち) 住信基礎研究所主席研究員。時事通信社ニューヨーク特派員、住友信託銀行などを経て現職。著書に「グローバル資本主義の未来―危機の連鎖は断ち切れるか」(共著、日本放送出版協会)、「日本力」(講談社)など。
伊藤洋一(いとうよういち)
住信基礎研究所主席研究員。時事通信社ニューヨーク特派員、住友信託銀行などを経て現職。著書に「グローバル資本主義の未来―危機の連鎖は断ち切れるか」(共著、日本放送出版協会)、「日本力」(講談社)など。

「ニューヨークやワシントンから帰国した知人がよく言うのですが、おかしなことに、経済危機の震源地である米国より、むしろ日本の人々の方が、自国の経済に悲観的になっているんですよ」と伊藤氏はいう。世界同時不況の中、日本では消費者も企業も悲観論に傾きすぎている。その原因はマスコミ報道にあるのではないか、というのが伊藤氏の考えだ。2008年秋から日本経済を悲観する報道が怒濤のように繰り返され、それが国民の消費意欲を減退させてしまい、景気がますます落ち込んでいる。いわば負の連鎖が起きているのだ。

悲観的な観測は、企業のICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)投資をも鈍らせている。もちろん、過剰な投資を抑制することは必要だ。しかし、たびたび指摘されることだが、米国では難しい局面こそ、ICTの力を活かし、いっそうの業務効率化で乗り切ろうという考え方が出てくる。それに対し、日本ではICT予算をとにかく一律カットしたり、あるいは凍結したりといった結論に、議論を尽くすことなくいたってしまうことがある。

そうした日米の違いを理解するためのキーになるのが「壁」だという。「ICTは本来、企業の形を変えるものであるはず。ところが、日本の企業は旧来の枠組みから一歩も外へ出ることなく、ICTを取り入れようとする。本来『壁崩し』によって業務を変革するはずのICTが、『壁の中』でしか使われていないんです」(伊藤氏)。

変化の激しい時代にマッチしたのが米国社会

日本の企業がICTの力を生かしきれていないのには、もう一段深い理由もある。組織を変えることが容易ではないのだ。

振り返ってみると、ICT革命が起きた1990年代は、米国が世界の覇権を取り戻した時代でもあった。ICTやデジタルといったテクノロジーが爆発的に発達して世界へ広まり、経済を巡る基幹的な技術を一新し、会社の在り方まで変えてしまった。「インターネットの普及と共に、情報や資金の動きが非常に速くなりました。それに合わせ、企業の形をどんどん変えていかなくてはならない時代だったのです」(伊藤氏)。

米国がこうした変化に強かったのは、一部例外はあるものの、基本的に人材の流動性が高いためだ。優秀な人材は3~4年で会社を変わるとも言われる。新しい事業を始めようとすれば、必要な人材を集めるのにさほど苦労しない。一方、終身雇用を引きずっている日本の会社は、変化に長い時間を要する。「つまり、1990年代に米国が覇権を取り戻したのは、日本人が優秀でなくなったとか、逆に米国人が優秀になったということではないんです。それぞれの社会の文化やストラクチャーが時代に合っていたかどうかだと私は考えています」(伊藤氏)。

ならば、今、日本の企業が難局を乗り切るためにICTを活用するには、どうすればいいのか。悲観論に惑わされず、なおかつ壁を崩す方向へと、ICTを活用することだ。「それには、まず、ICTが持っている可能性を、経営陣が十分理解しなければいけません。その上で、ICTによって組織を変えるという思い切った決断を下す必要があります」(伊藤氏)。

幸い、ICT革命は一服し、もっとも変化が激しい時期は過ぎたと伊藤氏はいう。加えて、人材の流動性もある程度高まりつつあるなど、日本の状況も好転している。

悲観的な面だけでなく、日本の良い部分にも目を向けるべきだ。例えばものづくり。新興国が追随している中でも、80年代から現在に至るまで、圧倒的な優位を保ち続けているのが日本だと伊藤氏は指摘する。悲観論に惑わされず、日本の企業は、もっと自らの将来を楽観的に見通してもいいのではないだろうか。

「壁崩し」のツールとしてのタフブック

タフブックCF-19 携帯しやすいコンパクトなボディでありながら、耐衝撃性能、防塵・防滴性能に優れているのが特徴。バッテリーの持ちが約10時間と長いうえ、タブレットモードにも対応しているので幅広い現場で活躍する。
タフブックCF-19
携帯しやすいコンパクトなボディでありながら、耐衝撃性能、防塵・防滴性能に優れているのが特徴。バッテリーの持ちが約10時間と長いうえ、タブレットモードにも対応しているので幅広い現場で活躍する。

壁は人と人、部署と部署、企業と企業など、あらゆるものの間に立ちふさがっている。ICTはそれを崩す有効な手段だが、落下や振動、粉じん、水滴などに強い頑丈パソコン「タフブック」も、ツールの一つとして活用できるはずだ。業務の現場を見渡すと、パソコンを動作させるのに適さない環境も数多く存在する。全社的にICTを導入しても、そうした現場が、これまでは飛び地のように残されてしまうケースが多かった。工事や保守点検、製造、倉庫といった現場だ。タフブックなら、そうした現場にも、ICTを行き渡らせることができる。

「タフブックは、確かにそうした可能性を持っていますね」と伊藤氏は語る。「例えば建設業では、コンクリート打ちをする作業員が、タフブックで水との比率を現場で計算し、ネットワークを通じてミキサーに指令を出す、などといったことが可能になるわけです」(伊藤氏)。

タフブックが現場で十分に活用されるには、2つの条件を満たす必要があると伊藤氏はいう。まず1つが、社員のITリテラシーを底上げすること。そしてもう1つが、現場で活用しやすいシステムを用意すること。特に後者は重要だ。「ミキサーの中にセンサーを取り付けておき、コンクリートの様子がタフブック側からもわかるようにする。そうすることで、現場の作業員が自分の目で見て、手で触れて行うしかなかった作業も、ある程度タフブックでできるようになる。使いやすいアプリケーションを作るということも重要ですが、センシング技術をうまく取り入れ、周囲の状況を感知することで、より広範な業務にICT化の道が開かれるはずです」(伊藤氏)。

壁を崩すという観点では、ネットワークも重要だ。「現場に高速な通信環境を整えることで、例えば図面の変更が早く正確に現場へ伝わるというメリットがありますよね。現場のタフブックへインターネットを通じてデータを送信すれば、プリントして持っていく時間を省くことができます。逆に、現場から本社へ直接データを送ることも可能なわけです」(伊藤氏)。

タフブックは無線LANを標準で搭載していることに加え、CF-30、CF-19、CF-U1、CF-H1など多くの機種でワイヤレスWANを選択できる。これにより、NTTドコモのFOMA通信エリア内なら、最大3.6Mbpsの高速通信を利用可能だ。

ほかにも、タフブックには指紋認証やGPS、SSD(フラッシュメモリードライブ)、スマートカードリーダーなどがオプションとして用意されている。ハンディサイズのCF-U1はカメラやバーコードリーダーなどの搭載もオプションで対応しており、業務に合わせて柔軟な構成が可能だ(オプションはすべて件名対応。対応オプションは機種により異なる)。

悲観論を捨て、不況の突破口を開け

「すき間産業」などというように、新しい産業が生まれるのも、壁と壁の間だ。「企業の中でも、○○部門、△△部門などと組織を分けると、どうしてもそこに壁ができる。しかし、その壁の間から新しいアイデアは出てくるものです」(伊藤氏)。

これまで壁にとらわれ、そのなかでICTを推進してきた日本の企業。そのために競争力がそがれていたのだとしたら、今後は壁崩しを積極的に推進することで、弱みを一つ克服し、いっそう強い競争力を獲得できるはずだ。悲観論に惑わされず、冷静に自社の状況を見つめ直せば、不況を突破する明るい道が、幾つも目の前に見えてくるのかもしれない。

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