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AI搭載PCで始める!中小企業DXと社員AI活用
日経BP総合研究所 フェロー 林哲史氏インタビュー
中小企業は今、かつてない深刻な人手不足と硬直化した業務プロセスという二重の苦しみに直面している。社員を採用しても業務伝達に時間がかかったり離職が続いたりするなど、残された社員の負担は増すばかりだ。どうすれば限られた人数で生産性を劇的に高め、優秀な人材の流出に歯止めをかけられるのか。その切り札の1つが、全社一斉の「AI搭載PC」導入である。日経BP総研の林哲史氏に、日常業務をAI前提で根本から見直す業務改革の真髄や経営者が今すぐ取るべき具体策を熱く語ってもらった。
「お試し」でAIを導入することには何の意味もない
中小企業のAI導入について現状を教えてください。
林 現在、日本の中小企業はかつてないほどの厳しい経営環境に立たされています。売上競争の激化もさることながら、致命的な課題となっているのが深刻な人手不足です。せっかくコストをかけて採用した人材があっという間に辞めてしまったり、社員の高齢化がどんどん進んだり、今後もどれだけの社員が離職していくのかという不安を多くの企業が抱えています。大企業であれば、豊富な資金力と培ってきた体制で人材を確保できるかもしれませんが、中小企業にそのような余裕はありません。
もう一つの重い課題が、既存の社員に根付いた仕事のやり方の硬直化です。長年勤めている社員は、これまでのやり方に習熟しています。効率が悪くても手馴れたやり方をそのままにしておきたいのです。
しかし、そのままでは一向に生産効率は上がりません。業務を見直そうにも、日々の業務に追われて時間が取れないというのが、中小企業が抱える苦しみになっています。
こうした厳しい現状なので、話題だからといって「とりあえずAIを使ってみる」「AIと壁打ちしてみる」といった、いわゆる「お試し」でAIを導入することに価値はありません。なぜなら、それだけでは日々の業務プロセスは全く変わらず、新たな活動に取り組むための時間を生み出すことができないからです。会社がわざわざ投資してAI活用を社員にうながすのは、業務を変革し、生産性を上げ、新たな価値創造に取り組むためです。

林 哲史(はやし・てつし)氏
社員の定型業務をAIで20%カットし、余裕と価値創造に向けた時間を作る
AI導入を成果に結びつけるにはどうすればいいのでしょうか?
林 今、中小企業に求められているのは、単なるデジタル化ではなく、日常の業務プロセスを根本からAI前提で見直すことです。具体的には、朝出社してからの業務フローをすべて書き出し、「ここにAIを組み込んだら、どの工程をカットできて、どう効率化できるか」といった問いを立て、徹底的に洗い出します。
例えば、これまで5人で回していた部署の業務を、AIエージェントを活用することで、3人で回せるようにします。そこで生まれた時間を新たな価値創造につなげるのです。これが本来AIを導入して目指すべきゴールです。
まずは今全員が抱えている定型業務をAI活用で見直し、社員の業務時間を減らして余裕を作ることが先決です。その上で、AIと一緒に新たな価値創造を始め、人が減ってメンバーが少なくなっても確実に対応できる強靭な体制を作ることこそが急務になります。
世の中にある定型業務は、すべてAIを活用して効率化できる余地があります。判断が必要な場面だけ人間が介入し、その判断結果をAIに学習させてルール化していけば、人が関与しなければならない業務は劇的にスリム化し、業務効率が上がるでしょう。
どこから取り組めばいいか分からないと嘆く経営者も多いのでは?
林 中小企業において、AIの導入を成功させる唯一の絶対条件があります。それは社長自らが率先してAIを使い、業務改革を実践することです。
大企業を真似て「AI推進部」のようなものを作っても、現場の社員としては忙しいのに無駄な作業が増えるだけだと捉え、誰も本気で取り組まないでしょう。だからこそ、顔の見える中小企業では、社長自身が「業務をAIで変えよう。自分もAIを使ってこれだけ業務を効率化したからみんなもやろう」と宣言し、実践する姿を社員に見せるしかありません。社長自身が乗らない限り、この改革はうまくいきません。
その際に効果的なアプローチの1つは、全社員にAI搭載PCを一斉に配ることです。特定の部署やITに詳しい人だけに配置するのではなく、全員に同じAI環境を与え、一斉にスタートを切る。そうすることで初めて会社全体にAIを前提として仕事をする新しい文化を生み出すことができるのです。






