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物事の奥にひそむ本質を見抜く技術 「ファンクショナル・アプローチ」とは?
視点をグルリと変える問題解決入門(1)

画期的なアイデアを導くための近道がある。「ファンクショナル・アプローチ」という手法だ。ファンクションを明らかにすることで、カタチにとらわれない視点から、物事の本質に鋭く迫ることができる。その伝道師として活躍する改善士・横田尚哉氏に聞く。
カタチに手を加えるだけの改善には限界がある

株式会社ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役社長。
顧客サービスを最大化させる経営改善コンサルタント。10年間で総額1兆円の公共事業改善を担当し、総額2000億円のコスト縮減を達成。その経験をもとに、実践的なファンクショナル・アプローチの技法を啓蒙する活動にも注力している。著書に「問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門」「ワンランク上の問題解決の技術《実践編》」(ともにディスカバー・トゥエンティワン)がある。
建設コンサルタントとしてさまざまな改善手法を試した横田氏。その中で唯一、カタチではなく「機能=ファンクション」に注目する手法がファンクショナル・アプローチだった。
はじめて実務に投入したときの衝撃を「それまで試したどんな手法と比べても、ドラスチックな成果で出るので驚きました」と振り返る。たとえば「100億円の予算の工事が、見積ではどうしても5億円オーバーしてしまう」といったケース。なんとか予算通り100億円に納められないか、という依頼に対し「たった4日間のコンサルティングで100億円どころか、一挙に60億円まで縮減できてしまう。それがファンクショナル・アプローチなのです」と横田氏。

今あるカタチに手を加えていく一般的な改善手法では、5億円を削るのがやっとだったかもしれない。それに対し、ファンクショナル・アプローチでは、カタチを分解し、ファンクションに還元して、そこから新しいカタチを構築し直す。改善というよりも再創造という言葉の方が当てはまるかもしれない。
前例やルールという縛りから思考を解放する
たとえば、1000人の事業規模を持つメーカーがあるとする。500人が製造部門、300人が営業部門、200人が管理部門に属している。製造部門では多種多様な製品を作っているが、よくよく見てみると、需要のないものもたくさんある。何が売れるのか市場の見通しが立てにくいため、製品を絞り込めず、幅広いラインアップを投入せざるを得ないのだ。
そのメーカーの最も重要なファンクションは「製品を売る」ことだ。売ることがビジネスの目的であって、多種多様な製品を作るのは手段にすぎない。ならば、たくさん作ることよりも、何を作るべきか判断するための調査や企画に力を振り向けてはどうか。製造部門を100人減らし、その人員を営業部門に回す。もっと頻繁に顧客を訪れてニーズを掘り起こすなど、マーケティングを強化することで、売れないものを作る無駄を減らせないだろうか。「これをカタチだけで考えてしまうと、『不良在庫が膨らんでいるから製造部門の人員を削ろう』などといった乱暴な話になってしまうのです」(横田氏)。

個々人の日常業務にも、ファンクショナル・アプローチは応用できる。たとえば、ある部署で顧客に100ページの提案資料を作る業務がパターン化されているとする。提案内容の充実ぶりを、100ページという厚みで顧客に印象づけたいという意図があるのかもしれない。しかし顧客が必要としている情報は、その中の10ページ程度だ。ならば、全体のボリュームを50ページ程度まで絞り込み、顧客が読む10ページに注力したほうが、提案資料の本来の目的に合致するのではないか。「前例やルールといったカタチにとらわれていると、それが何のためにあるのか、本来のファンクションを見失ってしまいがちです。轍(わだち)に沿って進むばかりでは、無駄に遠回りをしていることに、気づくことさえできないのです」(横田氏)。
人の作ったものは必ずファンクションを持っている
1940年代の米国で、とあるメーカーが消防署の点検を受けた。その際、工場の床に敷いていたアスベストが古くなっているとの指摘を受ける。新しいアスベストを探し回ったが、必要なだけの量を確保できそうにない。困り果てていると、誰かがこう尋ねた。「そのアスベストは『何のため』に必要なのか」。その一言のおかげで、必要なのはアスベストというカタチではなく、不燃材料というファンクションであることに気づいたのだという。ファンクショナル・アプローチが生まれた瞬間だ。
その応用範囲の広さ、効果の高さから、ファンクショナル・アプローチは他のさまざまな分野で導入が進んだ。「米国では政府機関が事業を行う際、ファンクショナル・アプローチによる検討が法律で義務づけられているほどです」(横田氏)。日本でも、製造業では1960年代からさかんに使われている。しかし、なかなか他の分野への応用は進んでいない。
そこで、横田氏は自らが啓蒙役となることを決心する。2010年にファンクショナル・アプローチ研究所を設立し、一般企業へのコンサルティングに加え、ビジネスパーソンを対象にした講演活動も精力的に行い、全国を飛び回っている。その横田氏が長年愛用しているのがレッツノートだ。

「R3、R5、R7、R9と、ずっとRシリーズ使い続けています。オフィスにいることが少ないので、客先、電車や飛行機、喫茶店と、どこでもレッツノートを開いて仕事をしないと追いつかないのです」(横田氏)。軽さ、バッテリーの保ちなどと並んで横田氏が評価するのは頑丈さだ。「そのままカバンに入れて持ち歩いていますが、トラブルは一度もありません。インナーケースを使う必要がないので、カバンのスペースを節約できるのも利点ですね」。
現在はSSD搭載モデルを使用している。「忙しいときはスリープにする時間さえ惜しいので、短時間の移動では電源を入れっぱなしにしてカバンに入れることもあります。それでもトラブルは本当に一度もありませんね」(横田氏)。
あらゆる製品やサービス、業務は必ず何らかのファンクションを持っていると横田氏は言う。しかし、いつしかそのファンクションが忘れられ、カタチが一人歩きしはじめる。そこに無駄が生じる。「轍にはまってしまわないためには『この製品・サービスは何のためにあるのか』『この仕事をしなければならないのは何のためか』と常に問いかけることです。考えても答えが出なければ、そこに改善のチャンスがあるということです」(横田氏)。
では、ファンクショナル・アプローチを実際に活用し、仕事を改善するにはどうすればいいのか。後編ではファンクショナル・アプローチの実践的な手法を紹介しよう。
第2回ではファンクションの導き方、その整理の仕方など、実践的な方法を紹介します。
→「何のため」が新しい視点を生む ファンクショナル・アプローチ今日から使える実践ガイド





