




さあ、いよいよプロサバンナ計画が進められている農地を見学してみましょう。日本人の専門家の方が、農業の技術指導を行っています。専門家の辻本泰弘さんに案内していただきます。

こちらの試験農場では、トウモロコシと大豆が交互に植えられていますね。
モザンビークでは、トウモロコシを挽いて粉にしたものを練った「ウガリ」のような食べ物が主食です。これまで小規模農家は自分たちが消費する穀物だけを細々と作っていました。このため、モザンビークでは常に穀物が不足し、農民が人口の8割を占めるのに、輸入に頼らざるをえない部分がありました。まずはトウモロコシの増産を軌道に乗せ、モザンビークの食料自給体制を確立するのが、第一目標です。
なぜトウモロコシと一緒に大豆が植えられているのですか?
理由は3つあります。
1つめは、換金作物として大豆の生産を定着させることで、モザンビークの農民の現金収入を確保すること。大豆は食料としても飼料としても常に世界的に大きな需要がありますし、大豆輸入国である日本とのつながりもできます。トウモロコシで食料自給を、大豆で現金収入を、という二本立ての農業をモザンビークの基本としたいのです。
2つめは、よく知られている話ですが、大豆の根に共生している根粒細菌の力で、窒素が固定されるため、土地が豊かになり、トウモロコシの育成にもよい効果が上げられます。
3つめはリスク分散ですね。トウモロコシは乾燥に強く、大豆は比較的弱い。そのため大豆は旱魃状態になると、収穫できませんが、トウモロコシは生き残ります。トウモロコシがとれれば、少なくとも食料は確保できます。

こちらではどんな農業試験を行っているのですか?
土地や気候ごとにどんな品種が最も生育条件がいいのか、気象観測も行いながら、きめ細かなデータ収集をしています。ナンプラは平地なので気温が高いのですが、ここから奥に入った高原地帯は標高が1400メートルもあるので、日本の軽井沢のような気候です。当然、生育条件が異なるわけです。それぞれの地域でどうすれば一番収穫量を増やせるのか。肥料の量を調節したり、いくつか異なる品種を植えたり。試行錯誤の毎日です。
モザンビークの農業関係者の反応はいかがですか?
これまで彼らは気象観測装置を持たなかったので、気温すらちゃんと計らずに、暑い涼しいくらいの感覚で農業試験を行っていました。いまでは、定量的なデータを元に、厳密に成長度や収穫量を比較できます。数字ではっきり違いが出てくるので、みんな興味津々です。たとえばこの農地では全部で7パターンの試験処理を行っています。
[1]トウモロコシだけ植えているところ。
[2]大豆だけ植えているところ。
[3]トウモロコシと大豆を両方植えているところ。
この3つの栽培パターンに、肥料を
[1]たくさんあげるところ、
[2]ふつうにあげるところ、
[3]少しだけあげるところ、
[4]あげないところ、
という4つのパターンを掛け合わせます。これで一番生育条件がよくなるパターンを編み出そうというわけですね。
ブラジルの農業研究チームもこちらで作業をしているんですよね。
向こうに見えるトウモロコシ畑がブラジルチームのものです。
日本の試験場に比べるとずいぶん広々と使っていますね。お互いのキャラクターの違いがはっきり出ています(笑)。
はい(笑)。日本の試験農場は0.5ha単位ですが、ブラジルの試験農場は10ha単位です。ブラジルは大規模農業で鍛えられています。とりわけセラードでは、痩せた土地で大豆栽培を成功させていますからね。石灰肥料を大量に投入して、土地改良を行うなど、ブラジルならではの農地改革を進めています。その意味では、品種ごとに細かくデータをとりながら、最も適した作物と栽培法を模索する、日本のやり方とうまく役割分担をしていますね。
今、日本人は何人くらいが参加しているのですか?
JICAから委託されたNTCインターナショナル株式会社と国際農林水産業研究センターのスタッフがあわせて12人ほどおります。2011年からスタートして2016年までの5年間のプロジェクトです。