日経ビジネス電子版 Special

美の力で、世界をより良くする 資生堂が挑むDX

システムごと、拠点ごとに
バラバラだったITサービスを標準化

 業務プロセスの標準化とさらなるデジタル化を積極的に進めている資生堂では、世界各地の拠点や、様々な部門が数多くの業務用システムやアプリケーションを使用している。当然ながら、その不具合に関する問い合わせやリカバリー対応といったITサービスの依頼も多く、いかに効率よく処理をして、従業員の生産性を損なわないようにするかが重要なテーマとなっていた。

 「使用するシステムやアプリケーションによって問い合わせ先がバラバラで、『このシステムの不具合は、どこに尋ねたらいいのか』と従業員が混乱することも珍しくありませんでした。リカバリー対応のためのプロセスもシステムやアプリケーションによって異なり、非効率の原因となっていました」と振り返るのは、資生堂インタラクティブビューティー IT本部 デジタルプラットフォーム部の鈴木智子氏である。

資生堂インタラクティブビューティー株式会社
IT本部 デジタルプラットフォーム部
鈴木 智子
資生堂グループの関係会社から2004年4月、資生堂情報企画部に異動。国内の物流システムを担当後、中国やアジア地域の基幹システムの業務に携わる。20年1月からServiceNowの開発と運用に従事。主にITSMの国内や海外への展開に携わる。
鈴木氏

 問い合わせ窓口を一本化し、対応プロセスを標準化すれば、従業員に業務負荷をかけることがなくなり、資生堂グループ全体としての生産性も上がるはずだ。そう考えたデジタルプラットフォーム部は、ITサービスを一元化、効率化するための仕組みづくりに取り組むことにした。

 同部がこの仕組みのための基盤として注目したのが、ServiceNowであった。欧州で事業を展開するグループ会社の資生堂EMEA(フランス)が17年にServiceNowのIT Service Managementを導入しており、問い合わせ対応やインシデント管理で成果を上げていた。

 そこで、同じ基盤を使って、標準化されたITサービスを全世界の拠点に提供しようと考えたのだ。

 鈴木氏は「システムごとやアプリケーションごとだけでなく、国や地域によってもITサービスの窓口やプロセスが異なっていました。これを全世界で統一するため、『ゴールデンコピー』というグローバルで標準化されたITサービスのプロセスを策定し、それをServiceNowのIT Service Managementという基盤の上で回す構想を描いたのです」と説明する。

 システムとアプリケーションに加え、ITインフラのサービスマネジメントについても同じ仕組みで効率化することにした。

60%のITサービスを
ServiceNowに集約

 ITサービスマネジメントのための基盤は他にもあるが、デジタルプラットフォーム部がServiceNowのIT Service Managementを選定したのは、「ノーコード・ローコードでアジャイルかつ迅速に開発ができること、1つのプラットフォームに社内のあらゆるデータを一元化し、セキュアな状態で運用できることが選定の大きな決め手となりました。拡張性も高く、他のソリューションと比べて格段に優れていると評価しました」と語るのはミシュラ氏である。

 ServiceNowのIT Service Managementを基盤とする「ゴールデンコピー」は、19年、まず日本のITサービスに適用した。

 その結果、「バラバラだったアプリケーションのITサービスのうち、約60%がIT Service Managementに集約され、ITインフラについては100%集約されました。問い合わせ窓口やプロセスが統一されたことで、従業員の業務負荷は明らかに減り、リカバリー対応するエンジニアの負担も軽減されています」と鈴木氏は語る。

 ミシュラ氏も、「まだ導入して2年ですが、従業員の満足度は確実に上がっていると思います」と評価する。

 デジタルプラットフォーム部は日本での導入に続き、20年にアジア太平洋地域を統括する資生堂アジアパシフィック、資生堂シンガポール、アジア太平洋地域の免税店を統括する資生堂トラベルリテールアジアパシフィック(TRA)にも「ゴールデンコピー」を適用した。

 「要件定義の段階で、それぞれの拠点から現地の事情に沿ったローカライズの要求がありましたが、世界全体で標準的なプロセスを実施するという基本的な考え方を理解してもらい、要求への対応は最低限にとどめました。交渉や説得には苦労しましたが、アジャイルに開発できるServiceNowを基盤に採用したおかげで、開発から実装までの期間は6カ月程度で済みました」と鈴木氏は振り返る。

 21年には、中国拠点にも「ゴールデンコピー」を適用したが、それまでの経験から開発期間はわずか4カ月に短縮されたという。

 鈴木氏は、今後の展開について「まだ適用が済んでいない米国や、シンガポール以外のアジア太平洋の拠点にも『ゴールデンコピー』を適用させていきたい。また、ServiceNowにはリスクマネジメントのためのソリューションも用意されているので、今後導入していく予定です。ITサービスの効率化を世界全体で実現し、資生堂グループ全体の生産性向上や競争力強化につなげていきたいですね」と抱負を語る。

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ServiceNowのIT Service Managementで開発した資生堂のITサービスのポータルトップ画面(上)と申請メニュー画面(右)。ボタンが少なく、シンプルで分かりやすいUIが採用されている
IT Service Management 従業員が作業している場所にとらわれることなく生産性を高め、新たな体験を提供します。
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