日経ビジネス電子版 Special
高度化、複雑化を増す金融業界

時代の変化に合わせて柔軟に進化する

野村ホールディングス

社員の勤務状態をチェックする
独自のシステムを開発

 ServiceNowのソリューションを導入した野村ホールディングスは、その標準機能であるワークフローを使って、ビジネス部門内でのカスタムアプリケーションの開発も行っている。

 具体例の一つとしてボルサム氏が挙げるのは、「デジタルオフィストランスフォーメーション」の一環として日本のIT部門向けに自部門で開発した「Work & Health Tracker」だ。

 これは、コロナ禍によって在宅勤務を余儀なくされた社員と、それを管理する上長のために、在宅での勤務状況や、社員およびその家族の健康状態などを報告するためのシステムである。日本のIT部門の社員がポータル上でこれらのステータスを入力すると、上長にもそのまま情報が共有される仕組みだ。

 「離れた場所にいても、部下がいつ、どこで働いているのか、健康状態に問題はないのかといったことが常に把握できるので、とても安心です。出退勤時間や、部下が超過勤務をしていないかどうかといったことも管理できます」とボルサム氏は語る。

 電話やメールで一人ひとりの部下の安否確認をする必要がなくなり、ServiceNowに標準搭載されているダッシュボード機能で部門全体の在宅状況や健康状況の把握、感染者が出た際の過去にさかのぼった勤務状況を迅速に把握できることになったのは、非常に画期的である。

 この他、IT部門の「デジタルオフィストランスフォーメーション」では、出張の申請や、オフィスで働くときの入館許可、冷暖房使用許可などの申請もできる。新入社員によるオンボーディング(入社)の手続きも、1つのポータルですべて完結するようになった。

 コロナ禍によって大きく変化した“働き方”に対応するシステムが速やかに開発できたのは、CMDBが整備されていることに加え、ローコード・ノーコード開発にも対応しているServiceNowだからこそと言えよう。

ソフトウェアを事業部門に
提供するまでの期間が大幅短縮

 また、野村ホールディングスはServiceNowのDevOpsを活用して、プライベートクラウド上に設置する仮想サーバーの申請から承認までのプロセスをスピードアップする仕組みも構築した。従来は、申請を受けてから、サーバーの仕様の選択、予算の承認などのプロセスに6週間から8週間かかっていたが、DevOpsを基盤とする仕組みの導入によって、わずか5分から10分で完了できるようになった。

 「これほど大幅な時間短縮が実現したのも、申請から承認に至るまでのプロセスを大幅に効率化、自動化できるDevOpsの機能を活用できたからです」とボルサム氏は評価する。

 もう1つ、野村ホールディングスがDevOpsを活用して19年に開発したのが、IT部門が開発したソフトウェアを迅速に事業部門に提供するための「Nomura Tool Chain」というシステムである。

 このシステムが導入される以前は、IT部門が開発したソフトウェアが事業部門にリリースされるまで、少なくとも2~3週間の時間を要していた。事業部門との間で変更・承認のやり取りを何度も繰り返さなければならないことに加え、変更諮問委員会による変更内容の検討にもかなりの時間が費やされていたからだ。

 「『何とか時間を短縮できないか?』と考えていたところ、ちょうどいいタイミングでServiceNowのDevOpsがリリースされたので、これを基盤にシステムを開発することにしました。申請プロセスの簡素化や手続きの自動化などによって、リスクの低いソフトウェアの変更なら、わずか2~3分で承認が完了するようになりました」とボルサム氏は明かす。

 変化の激しい時代においては、いかなる変化にもスピーディに対応できる事業体制づくりが不可欠である。事業部門が求めるソフトウェアを迅速に提供できる仕組みを整えたことは、その体制づくりに大きく貢献する力になったと言える。

 野村ホールディングスは、これからもServiceNowが毎年のようにリリースする新しいソリューションを積極的に導入し、活用の幅を広げることで、社員や顧客に新しい価値を提供していきたいと考えている。

 ボルサム氏は、「これまではホールセール部門だけでServiceNowを活用していましたが、23年以降はリテール部門にも展開していきたいと考えています。『Nomura Tool Chain』の開発などで培った経験とノウハウを基に、グループ全体の業務プロセスの標準化や自動化を推し進めていきたい」と語る。

 最後にボルサム氏は、「ServiceNowは、データガバナンスが非常にしっかりしている点も高く評価しています。これからも信頼性の高いプラットフォームとソリューションを提供し続けることで、野村ホールディングスのビジネスを守っていただきたい」と、強く期待した。