変革の方向性と目標を示す
Blueprintを策定
NECは、ITSMとほぼ同時期に、ServiceNowの人事サービス管理ソリューションであるHR Service Delivery(HRSD)も導入している。これも、デジタル成熟度の診断結果に基づいて優先的に導入したソリューションであった。
「人事関連の問い合わせについても、窓口がいくつもあり、電話やメールなど受付手段もバラバラであることが課題として浮かび上がりました。そこで、HRSDを使って人事サービス専用の問い合わせポータルを作り、窓口を集約することにしたのです」と語るのは井戸川氏である。
2020年上期に窓口統合をスタートし、2022年度までにInspire Valueプログラムの調査結果から判明したNECグループ内のサービスデスク520の中から、問い合わせ規模が大きく、ITSM、HRSDに対応した47のサービス窓口をポータルに集約したという。その結果、問い合わせに対してその場で答えが得られる「一次回答率」は、ポータル開設前の40%から、足元は88%まで向上しているという。
「窓口がバラバラだったときは、専門外の担当者が問い合わせを受け、たらい回しにされるケースも多かったのですが、窓口が一本化し、専門の担当者に直接問い合わせが届くようになったことで『一次回答率』が上がったようです」(井戸川氏)
このように社内活用事例が増える一方、2022年にはServiceNowとの戦略的協業を加速させることが決まった。
そこでNECは2023年3月、ServiceNowとの協業を通じて「2025中期経営計画」の最終年度に当たる2025年度までの3カ年計画の中で、NECが取り組むべき「コーポレート・トランスフォーメーション」を体系的に進めるために、ServiceNowの活用領域とその取り組みのロードマップを策定した。
小玉氏はこれを、「変革の方向性を示す青写真と実行計画を示したロードマップを総称してBlueprintと名付けました」と語る。
Blueprintでは、デジタル成熟度診断で課題として抽出された「従業員エクスペリエンス高度化」のほか、「業務デジタル化とプロセスの継続改善」「ITセキュリティ運用の自動化・効率化」「事業運営の高度化・効率化」の4つの領域を変革の方向性として定めた。
井戸川氏は、「それぞれの領域には、2025年度までの到達目標も設定しています。各プロジェクトの担当者は方向性と目標を意識しながら業務に取り組むことで、軸がブレることなく、プロジェクトを前に進めることができます」と、Blueprintのメリットについて語る。
IT・セキュリティ運用の高度化
生成AIの活用についても
ServiceNowと共に知見を深める
ちなみにNECは、Blueprintの策定にあたって、目標を定めるだけでなく、「どれだけの人員や開発体制を確保すれば目標を達成できるか?」という実行計画まで描き出している。
どんなに高い目標を掲げても、達成できなければ絵に描いた餅に終わってしまうからだ。
この実行計画作りにNECが利用したのが、ServiceNow Impactである。DXへの投資に対するリターンを最大化するために開発されたソリューションだ。
ServiceNow Impactを使えば、ソリューションの導入効果や価値が可視化されるほか、DX推進体制やガバナンスの検証などができる。
また、「システムの重要障害がダッシュボードで自動公開され、従業員がその内容を見て自分の業務への影響をいち早く確認できるといった使い方もあります。当社では、そうした従業員に価値をもたらす使い方のほかに、Blueprintの施策検討や、CoEの体制強化など、様々な領域でServiceNow Impactを活用しています」と井戸川氏は説明する。
Blueprintに描いた方向性に沿って、NECのServiceNow活用は着実に進んでいる。
「ITサービスと人事の問い合わせポータルができたことで、従業員エクスペリエンスの高度化はある程度進みましたが、Blueprintで描く他の領域については、まだこれからです。効果が大きく、Quick-Winしやすいプロジェクトから段階的にスタートさせ、少しずつ成功事例を積み上げていきます」と井戸川氏。
とくにデジタルワークフローを活用した業務プロセスの自動化・効率化は、今後積極的に取り組んでいきたいテーマだという。
「ServiceNowによる業務プロセスは、世界的なスタンダードであるITIL®*に準拠して設計されているので、とても合理的です。私はITIL®のエキスパートとして社内外で講師として指導をしているのですが、専門家の立場から見ても、ServiceNowのデジタルワークフローは非常によくできていると感じます」(井戸川氏)
*ITIL® is a Registered Trade Mark of AXELOS Limited
次のステップとしてNECが取り組んでいるのが、IT運用を自動化するServiceNowのIT Operations Management(ITOM)と、セキュリティ管理を自動化するSecurity Operations(SecOps)を組み合わせた「ITセキュリティ運用の自動化・効率化」である。
ITOMが自動収集するシステムの構成管理情報と、SecOpsによるセキュリティ運用のワークフローを連携させ、脆弱性のあるシステムを瞬時に特定して、漏れなく対策が打てるような仕組み作りを目指している。
「従来は、脆弱性のあるシステムを手作業で探り出してエクセルにまとめ、各担当者にメール等で対策を依頼していましたが、このすべての流れが自動処理できるようになり、業務効率が格段に向上するはずです」と武田氏は期待を寄せている。
「NECのように、様々な業務でエクセルなどの手作業が残り、業務変革やデータを活用した経営管理への変革に課題を持たれている企業は多いのではないでしょうか。だからこそ、当社が『社内のDX』で得た経験やノウハウ、知見は、多くの企業の皆様に役立つはずです」と小玉氏も自社の経験を顧客のDXに生かすことへの期待をこう語る。
こうした一つひとつの経験の積み重ねが、「お客様のDX」や「社会のDX」に資する生きた知見となる。最後に、今避けられない話題、生成AIの活用について考えを聞いた。
「生成AIは、情報の信頼性や秘匿性、プライバシーの侵害などの課題も指摘されていますが、うまく活用することができれば、NECの『社内のDX』が目指す、人の力を引き出し、より時代に適した働き方を進化させるなど、社会にインパクトをもたらす可能性があると信じています。様々なリスクに適切に対処しながら、身近な技術に昇華させ、社会価値を創造していく生成AIの活用についてもNECは引き続きServiceNowとの協業を通じて知見を深め、お客様のDX、ひいては社会のDXにつなげていきます。ぜひご期待ください」と語った。

