「守りのIT」から「攻めのIT」へ

グローバル全体のシステム変革に挑む日産自動車

広範囲にわたるシステム・アプリを
より詳細に可視化

新たなシステムの開発プロジェクトは2020年に始動。それからわずか1年ほどでリリースできた。非常に短い期間で実装できたことになるが、開発の過程では、それなりの苦労もあったようだ。

「Enterprise Architecture(旧APM)は、ServiceNowの中でも比較的新しいソリューションなので、国内では開発経験があるベンダが少なく、対応できるベンダを探すのに苦労しました。この点では、ServiceNowにかなりサポートをしていただきました」と氏家氏。

また、エンタープライズアーキテクチャーに関わる新たなシステムの導入に当たっては、各部門やグローバル拠点の担当部署との密接な交渉やデータの統一性などの擦り合わせが必要となるが、そのコミュニケーションにも時間がかかったという。開発だけでなく、調整に相当な時間を費やしたことを考えると、わずか1年でリリースというスピードは、かなりの速さであったと言えよう。

EA(旧APM)を基盤としたことによって、各部門・拠点が開発・利用するシステムやアプリの可視化は一気に進んだ。

大きな導入効果として、まずスバナ氏が挙げるのは「カバーできる範囲の広さ」である。

「スクラッチ開発した以前のシステムでは、可視化できるシステム・アプリの範囲が非常に限定的でしたが、新たなシステムはServiceNowのCMDBをベースにしているので、日産自動車がグローバルに展開する部門や拠点のシステム・アプリを、全面的に網羅できます。グローバル全体でシステム・アプリ開発や運用に対するガバナンスが利かせられるようになったのは大きな効果でもあります」(スバナ氏)

また、ServiceNowのプラットフォームは、API連携によって様々な外部システムのデータを取り込み、統合できる点も大きなメリットだ。そのため、各部門や拠点が利用するシステムやアプリに関する情報がひもづけられるようになった。

「スクラッチ開発したアプリでは、システム・アプリの基本的な情報やオーナー情報ぐらいしか収集できませんでしたが、今では各システム・アプリの開発のベースとなっている技術や、OSのサポート終了時期、開発・運用コスト、セキュリティの状況といった幅広い情報がひもづけられ、自動的にアップデートされる仕組みが整っています。各システム・アプリに関する広範囲な情報が1つの画面でリアルタイムに把握できるようになったのは、大きな進歩です」と氏家氏は評価する。

ビジネスに大きな貢献を果たす
IT運用管理システムや生成AIとの連携も検討

日産自動車は、グローバルエンタープライズアーキテクチャーの可視化を通じて、老朽化したレガシーシステムを最新のシステムに置き換える「モダナイゼーション」の推進も目指している。EAを基盤としたシステムは、それを後押しするものとして蓬澤氏は強く期待している。

「稼働年数が相当経っているシステムや、OSのサポート終了期限が迫っているシステムを優先的に更新するなど、モダナイゼーションの計画づくりに対してもEAを基盤としたシステムに集まってくる情報が活用できます。これによって、能動的にシステム刷新の提案を行っていけます」(蓬澤氏)

また、各部門・拠点が利用するシステム・アプリのセキュリティ情報が把握できるようになったことで、万が一のインシデントの際にも迅速に対応できる環境が整ったことも大きな成果だ。

「どのシステムがGDPR(EU域内の個人データの保護や取り扱いについて定められた法令)に対応しているかや、個人情報を持っているかといった情報も確認できるので、優先順位付けをしながら対策を打つことができます。将来的には、ServiceNowのセキュリティ対策ソリューションであるSecurity Operations(SecOps)も連携させて、脅威の検知から対策までを自動化することも検討しています」(氏家氏)

定量的な効果としては、「従来3カ月程度かかっていたグローバルエンタープライズアーキテクチャーに関する各種報告が、EAを基盤としたシステムの導入によって1週間程度まで短縮されたのが大きな成果です」と氏家氏は語る。

さらに、ServiceNowの生成AI機能である「Now Assist」を利用して、OSのサポート終了期限が迫っているシステム・アプリの早期特定や、アーキテクチャーやアプリ名の提案、障害の予兆検知などに役立てることも検討中だ。

最後に蓬澤氏は、「我々グローバルエンタープライズアーキテクチャー部のミッションは、グローバルで利用されているシステムやアプリを、よりビジネスに貢献するものに押し上げていくこと。その使命を果たすためにも、引き続きServiceNowのソリューションを活用しながら、グループ全体のシステム・アプリの最適化に取り組んでいきたい」と抱負を語った。