ガラスをはじめとする素材の世界的大手として活躍するAGCは、2020年11月19日に横浜市鶴見区にある研究開発拠点、AGC横浜テクニカルセンター内に、オープンイノベーションの拠点として「協創空間『AO』(AGC OPENSQUARE)」を開設した。「つなぐ(Connect)」「発想する(Create)」「ためす(Materialize)」をコンセプトに施設を配置した「AO(アオ)」を舞台に、AGCはどのように協創の取り組みを発展させ、自社の競争力強化につなげていくのか。「AO」の企画に携わった社員や「AO」で展開するプロジェクトのリーダーに、フリーキャスター 唐橋ユミ氏が話を聞いた。

継続こそ人を育て、
未来をつなぐ力に

キャスター
唐橋 ユミ氏

唐橋氏 先ほど「AO」の施設を一通り拝見しました(前編)。2020年に完成した4階建ての研究開発棟の一部ですが、1階から4階にわたる広いスペースを使って、充実した施設を整えている印象を受けました。最近は、競争力強化に向けてオープンイノベーションの拠点を設ける企業が増えていますが、これほどの規模の施設を揃えているところは少ないのではないでしょうか。どのような方針で、「AO」の施設をプランニングしたのですか。

【画像】「AO」基本コンセプト(提供:AGC)

加藤氏 「AO」全体の基本コンセプトは、「つなぐ」「発想する」「ためす」です。「つなぐ」は、人と人の出会いと、それぞれの思いを共有することを表しています。「発想する」は、新しい事業やサービスにつながる革新的なアイデアを生み出すこと。「ためす」は、革新的なアイデアを検証し、具体的な形にすることです。このコンセプトに基づいて施設のプランニングを進めました。

「AO」のフロア構成(提供:AGC)

技術本部企画部 協創推進グループ
協創企画・管理チーム
空間マネージメントユニットリーダー
加藤 朱美氏(※部署名・肩書は取材当時のものです)

先ほどご覧いただいた4種類のスペースは、それぞれが3つのキーワードに対応しています。

例えば、「つなぐ」を実践するための場が、「AO」の1階にある「AO Gallery」と2階にある「AO Park」です。「AO Gallery」は、社外とのコラボレーションの成果を展示しています。

2階の「AO Park」は、お客様や大学、ベンチャー企業など「AO」を訪れた社外の人たちとAGCの社員が交流し、協創に向けて思いを共有するための場です。AGCのイノベーションストーリーや開発成果を紹介する展示スペースを中心に打ち合わせスペースのエリアを設けました。

4階にある「AO Studio」は「発想する」ための場です。ここにはAGCが開発した先端素材が展示してあります。それらを見て、触れていただきながら、革新的な技術や製品、問題解決に向けたアイデアを練っていただくための場です。

2階から4階には「AO Lab.」があります。協創のためのプロジェクト・ルームで、3つのキーワードのうちの「ためす」に対応した場です。社内や社外から集まった人が、ここで一緒に試作をして新しいアイデアの可能性を検証しながら協創することができます。プライバシーを守りながら、複数のプロジェクトを同時に進められるように、プロジェクトごとに専有できる部屋を14室用意しました。

「AO Lab.」の一部は、協創を支える基盤技術を提供する施設になっています。1つは、デジタル・データを基に立体物を出力する3Dプリンタを使った造形技術を手掛ける「AM(Additive Manufacturing)ラボ」。もう1つは、コンピュータで作成した映像を使って現実に近い状態を人間に感知させるVR(Virtual Reality、仮想現実)システムを提供する「XRラボ」です。このほかに電気炉を用いて様々な種類のガラスの溶融プロセスを検証する施設も整えました。

他との違いを出したかった

技術本部 企画部協創推進グループ
協創企画・管理チーム
協創ユニット マネージャー
中川 浩司氏

唐橋氏 「つなぐ」「発想する」「ためす」の3つのキーワードで表現したコンセプトは、どのような経緯で生まれたのでしょうか。

加藤氏 「AO」の基本コンセプトについては、協創に前向きに自主的に取り組んでくれるメンバーが社内で集まってきて、様々なツールも活用しながら徹底的に議論しました。このときに意識したのは、他社のオープンイノベーション拠点との違いを明確に示すことです。多くの人に、わざわざAGCの施設に足を運んでもらうには、独自の特徴やメッセージが不可欠だと考えました。

中川氏 AGCならではのコンセプトを生み出すために、メンバーが取り組んだのが、これまでに蓄積した課題解決の成功事例を集めて、それぞれの成功要因を分析することです。私たちが「協創」を意識する以前から、お客様から預かった数多くの課題を、AGCの技術やノウハウを駆使して解決してきました。これも協創と言えます。それならば、これまでの問題解決の成功事例のプロセスを紐解けば、そこにAGC独自の強みと言える要素が潜んでいるはずです。

こう考えて過去の成功事例をピックアップして、それぞれの経緯を詳しく調べました。そこから浮かび上がった成功要因を集約した結果が、「つなぐ」「発想する」「ためす」です。この3つの要因が生まれる環境を強化すれば、これまでよりも発展した形の協創が始まることが期待できます。協創が生まれる頻度も高まるはずです。

協創が研究者のキャリアの一部に
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