PCはあらゆる業務に欠かせないデバイスだが、その調達については負担に感じているIT部門関係者も少なくないはずだ。人事異動や新規採用、システム導入や更改に伴って新規購買や入れ替えが行われるが、ユーザーの作業に適したスペックの決定、コストや納期など考慮すべきポイントも多いからだ。
調達業務が煩雑になってしまう要因の多くは、アナログな調達プロセスにある。これをオンライン化すれば、社内の調整やベンダーとのやりとりが簡素化され、コストや納期の削減も期待できる。ここでは改めてオンライン調達のメリットとその始め方について紹介したい。
PCの調達プロセスは要求仕様の検討から始まり、製品の選定、購買、納品と設定、資産管理と保守という流れが一般的だ(図1)。
図1 一般的なPC調達プロセスこのプロセスをメールや電話、FAXで行うと、紙ベースの見積書や注文書を確認・押印し、FAXで送信したり、スキャンしたPDFをメールで送付したりする必要がある。一連のやりとりは煩雑で非常に手間がかかる
企業の中でこの役割を担うのは主にIT部門やIT関連の担当者である。そしてこのやりとりはベンダーやサプライヤーの営業担当者とメールや電話、FAXなどで行う、いわゆるアナログなプロセスが多い。数台程度の調達ならまだしも、数十台、数百台となると膨大な作業になる。
例えばPCのスペック決めはその1つだ。求めるPCのスペックについてユーザー部門にヒアリングを行うと、様々な要求が寄せられる。事務作業が中心なら標準スペックでいいが、CADを扱うような部署では大容量メモリやGPUも必要になる。外出の多い営業担当は小型・軽量で長時間稼働できるPCを求める。外部とデータの授受が多い場合はUSBスロットやDVD-ROM搭載の機種を欲しがるだろう。
調達を担う担当者はこの取りまとめを行う必要がある。十人十色のままではメーカーも機種もバラバラのままだ。“最大公約数”をもとに機種やスペックを絞り込んでいく。
要求仕様がまとまったら、ベンダーやサプライヤーの営業担当者と相談し、具体的な機種を提案してもらう。ここでもコストや納期などが希望に添わなければ、見直しが必要になる。機種の提案と選定にはそれなりの手間と時間がかかる。
選定PCが決まったら正式な見積書を取得し、その内容に基づいて発注と支払い手続きを行う。納品されたら、それが発注通りであることを確認し、初期設定やソフトウエアのインストールを行う。
このようにアナログなプロセスは人依存の“キャッチボール”を何度も繰り返すため、やりとりが煩雑になる。IT部門はこの作業にリソースを奪われてしまう。製品選定から納品までのリードタイムが長く、納期が見えにくいことも問題だ。メーカーや機種が統一されていないと、キッティング作業や保守業務の負担も大きくなる。
DXに取り組む企業が増える中、IT部門にはその推進役としての期待が高まっている。煩雑なPC調達プロセスがその足かせになるのは本末転倒だ。調達プロセスのオンライン化による業務効率化とコスト削減が欠かせない。
オンライン調達ならWeb上で、いつでも検索・発注・見積り・納期確認することが可能だ。それによって、主に以下のようなメリットが期待できる。
❶製品の検索・選定の効率化求めるスペックや価格の製品を商品カタログから選定できる。検索機能を使えば、スペック重視や価格重視などニーズに沿った製品検索も可能。同等スペックでより安価なPCを選んだり、ボリュームディスカウント対象製品を選ぶことで購買費も削減できる。
❷見積り及び発注の電子化ベンダーやサプライヤーに対する見積依頼、受領した見積内容に基づいて行う発注処理をオンラインで完結できる。業務効率化に加え、手続きのスピードアップによって納期短縮につながる。
❸調達フローの可視化オンライン化により調達フローの可視化が進む。システム上で調達プロセスの「今」が分かるため、「誰が、何をやっているか」もリアルタイムで把握できる。
❹ペーパーレス化とガバナンス強化見積り及び発注の電子化により紙の帳票が不要になり、ペーパーレス化が進む。調達フローの可視化により、業務の属人化やヒューマンエラーも防げる。全体の透明性が高まるため、私的な物品購買などの不正行為を防止し、ガバナンス強化につながる。
アナログな調達プロセスは業務が属人化されがちで、個人のスキルや経験によって成果にばらつきが出てしまう。帳票処理や担当者とのコミュニケーションに手間と時間もかかる。オンライン化すればこうした課題を解消できるため、より早く・最適なコストでユーザーが求めるPC調達が可能になる。また手間のかかる調達プロセスが簡素化すれば、コア業務やDX推進といった付加価値の高い業務に注力できるだろう。
実際、オンライン購買とアナログ購買の差は歴然としている。それは日経クロステック Special リサーチが実施した「ITデバイスの購買に関する実態調査」からも明らかだ。調査は2024年3月から5月にかけて、国内企業のIT担当部門を対象に行った(有効回答数297件)。
まずPC調達における伝達手段(複数回答)は「電子メール」を利用している企業が80.1%で最多だ(図2)。発注先ベンダーが提供する発注システム、購買・発注ツール(パッケージ製品やそれ以外)など、調達のオンライン化を導入している企業は、48.2%だった(発注先ベンダーが提供する発注システム、購買・発注ツールの回答数の合計値)。
図2 PC調達時の伝達手段8割の企業がPC調達における伝達手段に「電子メール」を利用している。発注システムや発注ツールと共に電子メールも併用していることが伺える。完全なオンライン調達の割合はそれほど多くないようだ
オンライン調達の割合は決して高いとはいえないが、注目すべきはそのリードタイムだ。見積依頼から注文完了までの平均営業日数は、「電子メール」利用企業の47.9%が1週間以上かかっているのに対し、「発注先ベンダーが提供する発注システム」利用企業の50%は1週間以内と回答している(図3)。
図3 見積依頼から注文完了までの平均的な営業日数電子メールによる調達プロセスの場合、見積依頼から注文完了までの平均営業日数が1週間以上かかる割合が半数近くあり、1週間以内という回答は4割以下。注文完了までの日数が長くなれば、納期までのリードタイムもさらに長くなる
また「電子メール」利用企業は相見積を揃えることの手間・難しさ、PCの性能検証や価格交渉の難しさを感じているが、「発注先ベンダーが提供する発注システム」利用企業にネガティブなコメントは少ない。「プロセスの迅速化(回答数:157)」「間違いの減少(回答数:98)」「生産的な時間の増加(回答数:76)」「調達のトータルコストの節減(回答数:67)」「統制/ガバナンスの向上(回答数:44)」など多くのメリットを上げている。調達をオンラインで完結している企業は、課題や懸念よりも、その効果や価値を実感している割合が高いことを裏付けた形だ(図4)。
図4 見積取得や発注をオンラインで完結できる場合の効果「発注先ベンダーが提供する発注システム」利用企業は「電子メール」利用企業に比べ4分の1も少ないが、回答数は最も多い。PC調達をシステムでオンライン化している企業ほど大きな効果を実感していることが伺える
実際、アナログ調達からオンライン調達に変えた企業も多い。某メーカーの取り組みはその好例だ。従来はPC選定を各部門に任せていたため、IT部門は各部門からの要望を取りまとめ、予算やスペックなどの交渉を行っていた。それをIT部門による一括オンライン調達に変更したのだ。
具体的には、発注先ベンダーが提供する発注システムを利用し、IT部門が複数の推奨機を選定する。その中から社員がCPU、メモリ、HDD/SSD、OSバージョンなどのスペックを選ぶというスタイルだ。これにより、見積りや価格交渉が不要になった。手続きが簡略化され、PCを選ぶ社員側も分かりやすくなったと好評だという。
製品の注文状況、工場での生産から納品までのステータスもWeb上で可視化・確認できるため、納期に関するIT部門への問い合わせは激減した。注文から納品までの期間も短縮され、スムーズなビジネス展開が可能になった。
社員がオーダーしたPCは、そのまま各営業所や各部門に納品される。そのためIT部門による配送作業が不要になり、運送費も削減できた。PCの初期セットアップやキッティングはマニュアルを作成して内製化した。PCの推奨機を定めたおかげで、作業の標準化が進んだからだ。これにより、IT部門によるPC環境構築の負荷はほぼゼロになった。PC調達の合理化により残業時間は20%削減され、IT部門の働き方改革も促進されたという。
様々なベンダーやサプライヤーがオンライン調達のサービスを提供している。なかでも注目したいのが、グローバルなITソリューションベンダーであるデル・テクノロジーズが提供するオンライン調達プラットフォーム「Dellプレミア」だ。最短1~2営業日でアカウントの開設が可能で、無料で利用できる。推奨構成やカスタマイズした構成での正式な見積書の作成・保存なども「Dellプレミア」で行うことが可能だ。保存した見積りでの発注もWebで完結できるため、調達に関する情報伝達の手間を大幅に軽減できる。
購入方法をカスタマイズして、すべてを変革。Dellプレミア
IT部門の人手不足が深刻化する中、こうしたツールを便利に使ってPC調達を簡素化することはますます重要になっていくはずだ。