~未解決の「崖」、COBOL/メインフレーム/オフコン問題に立ち向かう~
イベントリポート≪前編≫
2025年10月17日、「ITレガシー問題対策フォーラム」が開催された(主催:日経BP 総合研究所)。本イベントにはレガシー資産のモダナイゼーションを支援する百戦錬磨の企業が集結。無駄な投資を未然に防ぎ、システム継続に加えてAIなど新技術の追加にも対応するための多くの秘訣を明らかにした。満員御礼の盛況となったイベントの模様を、前後編の二回にわたりリポートする。
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現行機能分析と目標設定の失敗に要注意 人材育成、経営目標の明確化がカギ 顧客の競争力を失わないレガシー対策 AI技術と「温故知新」で図る脱却 最終解はCOBOLからJavaへの自動変換 モダナイゼーション実績の多い中国系2社 既存資産の可視化や自動判定にAIを活用
企業情報化協会
顧問
矢部 剛 氏
基調講演には企業情報化協会顧問の矢部剛氏が登壇。レガシーシステムの継承やマイグレーションなどを成功に導くポイントについて講演した。矢部氏は前職で日本生命保険のシステム部門に30年以上勤めたキャリアを持つ。当時はIBM製メインフレームによる業務系システムを運用していた。その経験を基に、まずはレガシーシステムの運用継続が困難な事情をユーザー目線で語り始めた。
企業情報化協会
顧問
矢部 剛 氏
「レガシーシステムは長年の機能追加によって、業務メニューや顧客サービス、契約管理データベースなどが肥大化することで、現行機能の分析が困難になり、さらなる改修には投資額と時間が非常にかかります。この現行機能分析の課題によってコストが増加するケースが多いですね。ただ、アプリケーションソフトの根本的な問題を解決することなく、クラウド環境や新サーバーに移行する『リホスト』で対処すると、その後の機能拡張が困難になります。結局は現状維持で、高性能のデータ・プログラム移行ツールの登場を待とうと考える企業が多いようです」(矢部氏)
この現行機能分析が困難になる背景には、技術者の高齢化による人材不足の問題がある。例えば日本生命では、顧客や代理店の端末とつながる全てのオンライン機能をメインフレームで構築している。OSアップデート時に業務アプリケーションの互換性を確保するには、アプリケーションとDBMSの間のやり取りを制御するミドルウエアの開発が重要だ。日本生命はアセンブラ言語によってミドルウエアを内製化し、COBOL言語による大規模なアプリケーションを制御している。
ところがCOBOL言語・アセンブラ言語等は、若手技術者には端的に言うと「人気がない」。人材不足を防ぐには、アセンブラ開発研修等を実施する一方で、若手にとって関心の高い新技術も活用するといった工夫が必要だったという。
レガシーシステムは事業基盤であり、新インフラの計画策定に当たって事業(商品・サービス)戦略が重要になる。移行自体が目的ではない
講演ではさらに、マイグレーションの目標設定に関する注意点を示した。「IBMのメインフレームは今でもトップクラスで、社内教育を整備することで技術継承も十分可能です。しかし他社の例を見ると、システム移行だけが目的になってしまうことで投資がペイしないケースが多い。継承可能なシステムをわざわざ移行する必要があるかという議論を欠かさず、業務効率化や生産性向上による経営改善目標を立てて計画を進めることが大切ですね」(矢部氏)
もっとも、なかなか計画通りには進まず、苦戦しながら取り組むケースが多いという。「実践的な対応としては、新しい事業や商品から新システムで実現して、レガシーシステムは併存させつつ、該当事業が終了するタイミングで閉鎖かリホストするといった方策があります。顧客向けインターフェースはAPIで統合するにしても、事務担当者には新旧システムを使い分ける負担がかかりますが、巨大なレガシー資産を抱える企業が取りやすい選択肢です」(矢部氏)
加えて、会計や顧客管理など、周辺システムとの連携機能を構築して、アーキテクチャの構成技術を全体的に統制する。
「冒頭で述べたように、AIなどを活用した便利なソリューションツールの登場を待つ手もありますが、自社の身の丈に合ったプロジェクトかどうかを見極めつつ、移行方針をじっくり考えるのがよいと思います」として、矢部氏は講演を締めくくった。
システムズ
ビジネスイノベーション本部
本部長
板倉 利幸 氏
独立系ITベンダーのシステムズは約260人の社員を擁し、中国・ベトナムのパートナー企業と共に、モダナイゼーションを中心とするレガシー対策事業に30年間取り組んできた。汎用機やオフコンのオープン化から事業を拡大し、近年はクラウド環境に移行する案件が増えている。
システムズ
ビジネスイノベーション本部
本部長
板倉 利幸 氏
「システム移行を支援しながらも、顧客の強みが詰まったシステムまでも汎用サービスに置き換えて、競争力を失うことがないように配慮しています」と同社ビジネスイノベーション本部長の板倉利幸氏は強調した。このポリシーを自社のパーパス「『らしさ』から『ありたい』をかたちにする」で示している。
「モダナイゼーションの成功には、最初の現状調査が非常に大切です。当社ではシステム連携状況、拠点ごとの違いや重複箇所、利用率が低い機能などに踏み込む形で、調査結果を可視化。次に移行計画を立てますが、安易に他社と同じグローバルスタンダードのサービスに移行するのではなく、自社システムの差異化要素を再認識することを重視します。そして延命させる部分と新規開発の部分をしっかり連携させて、今後はAIを円滑に活用できるようデータを整理していきます」(板倉氏)
システム改修後にDXやAI活用を円滑に導入することを念頭に置き、自社の強みを残す形でレガシー資産から脱却する計画を検討する
直近の事例では、自動車部品物流企業のロジコムが5拠点でレガシー脱却に着手。それぞれ独自の進化を遂げていたホストコンピューターの標準化/刷新を支援した。「変えてはいけない機能」を整理した上で、運用の効率化を目指してプログラム言語をJavaに置き換えたシステムに一本化した。
「長年の運用によってシステム設計書が残っていない顧客も多いのですが、今はAIを活用してCOBOLなどのソースコードから仕様、設計書を出力できます。2025年10月からWebサービス『Re:structure AI(リ・ストラクチャー エーアイ)』として提供を始めました。数千ファイルのソース解析が可能で、移行にかかる負荷やコストを削減できます」(板倉氏)
最新AI技術の活用を進めつつ、レガシーシステムに関する知見の共有と情報交換を行う無償コミュニティー「レガシー侍」を運用するなど、“温故知新”の取り組みを進めている。
アクセンチュア
テクノロジー コンサルティング本部
レガシーモダナイゼーション・オプティマイゼーション日本統括
マネジング・ディレクター
西尾 友善 氏
コンサルティング大手のアクセンチュアは、レガシーシステムのモダナイゼーション事業を15年間手掛けてきた。現在は国内最大規模の専任メンバー数を揃え、システム開発とプランニングを担当する。
アクセンチュア
テクノロジー コンサルティング本部
レガシーモダナイゼーション・オプティマイゼーション日本統括
マネジング・ディレクター
西尾 友善 氏
「顧客に対するコンサルティング提案の実績はほぼ全勝です。直近5年間で、合計3億ステップ超のCOBOLソースコードをJavaに変換して、オープンシステムやクラウド環境に移行してきました」と同社マネジング・ディレクターの西尾友善氏は実績をアピールした。
当初、社内にはCOBOLの使用実績が長いベテラン技術者が多かったが、作業効率の向上を目指して、メンバーの若返りにも積極的に取り組んできたという。
「当社ではシステムを作り変える“ビッグバンアプローチ”は成功率が低いと判断し、メインフレームの既存ソースコードを再利用する“リプラットフォーム”を主軸としています。これにメインフレームの一部機能をデジタル化して業務改善する“デジタル・デカップリング”や、新ビジネス向け機能だけを追加する“デジタル・ビークル”の手法を組み合わせます。大規模システムを移行する顧客が多いので、COBOLからJavaへの変換率がほぼ100%で、国内利用実績が多いコード自動変換ツール『MAJALIS』を採用しています。ツールが無料なので、システム開発費を非常に低くできます」(西尾氏)
AI技術の導入にも注力しており、レガシーシステムの資産状況を自動分析する米AWSのクラウドサービス「AWS Transform」を活用している。
コード自動変換ツール「MAJALIS」は、脱メインフレームに向けた統合的なソリューションを提供する。COBOL、PL/I、JCLからJavaへの変換率は、ほぼ100%だ
このように同社のプランは、既存環境をなるべく残して、確実な移行を実現する点が売り物だ。顧客によっては「新規性が少なく夢がない」という理由で一度は見送ったものの、移行の失敗を経て、同社のプランを再考するケースもあったという。「時間とコストを無駄にしないためにも、是非最初から当社とお付き合いいただきたい」と西尾氏は強調した。
本イベントには2社、存在感を発揮する中国系の企業が登壇した。日本企業のレガシー課題を考える上で見逃せない存在だ。
ハイシンクジャパン
オファリングビジネス本部
ソリューション営業事業部
木下 剛 氏
ハイシンクジャパンは、NEC、日立、NTTデータなどの日本企業グループも出資して設立された。公共・産業・金融など多様な分野で、自社開発のAI製品を用いて既存システムの業務プロセスの分析から、改善・リファクタリングまで一貫して支援する。「AI技術を活用して既存システムのボトルネックや使用率が低い機能を可視化し、自動変換ツールを使った効率的なシステム刷新を実現します」と、同社の木下剛氏はその手法を紹介した。
ハイシンクジャパン
オファリングビジネス本部
ソリューション営業事業部
木下 剛 氏
ビヨンドソフトホールディングス
代表取締役社長
曹 陽 氏
中国で1995年に設立されたビヨンドソフトは、コンサルティングやSI事業を14カ国で展開し、日本事業で2053人、グループ全体で31000人の技術者を抱える。「20年かけて練り上げたシステム解析変換ツール『WATM』は、多くの企業が重視する自動変換率ではなく、テスト自動化による変換の正確性を追及しました」と同社の曹陽氏は強調。近年は生成AIを活用した、解析結果の判定自動化にも取り組んでいるという。
ビヨンドソフトホールディングス
代表取締役社長
曹 陽 氏

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ITモダナイゼーションの新潮流が一堂に集結
未来の競争力へ、「レガシー資産」を確実に刷新せよ――
~未解決の「崖」、COBOL/メインフレーム/オフコン問題に立ち向かう~
イベントリポート≪前編≫


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~未解決の「崖」、COBOL/メインフレーム/オフコン問題に立ち向かう~
イベントリポート≪後編≫


AMCソフトウェアジャパン
COBOLの未来とAI活用
リスクを排除しながらモダナイゼーション


アクセンチュア
破竹の勢いで連戦連勝、その理由は
「100%」の自動変換と「1/3」のコスト


COBOL PARK
日本の「ITレガシー問題」に
日本・ベトナム両国の技術者が立ち向かう


システムズ
顧客の競争力を失わないレガシー対策を!
“温故知新”のサービスを強化し、さらなる発展へ
