~未解決の「崖」、COBOL/メインフレーム/オフコン問題に立ち向かう~
イベントリポート≪後編≫
2025年10月17日、「ITレガシー問題対策フォーラム」が開催された(主催:日経BP 総合研究所)。本イベントにはレガシー資産のモダナイゼーションを支援する百戦錬磨の企業が集結。無駄な投資を未然に防ぎ、システム継続に加えてAIなど新技術の追加にも対応するための多くの秘訣を明らかにした。満員御礼の盛況となったイベントの模様を、前後編の二回にわたりリポートする。
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「黄金期」ベトナムとの連携でレガシー問題に挑む COBOL教育体制を確立し、顧客支援を強化 レガシー脱却を“COBOL to COBOL”で解決 60年以上続く高い信頼性で「間違いなし」 ITモダナイゼーション、成否の分かれ目は? タイミング、リーダーシップ、経営連携に要注意
COBOL PARK
経営企画本部 本部長
甲斐 芳和 氏
経済産業省が2025年5月に発表したレポート「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」では、レガシー資産自体が問題ではなく、それが「モダン化」されていないことが課題という見解が示された。モダン化とは、外部のツールやサービスと容易に連携できるようにして、ビジネスの源泉となるデータ利活用を可能な状態にすることだ。
COBOL PARKはこうした問題の解消を目指して、SCSKとベトナムの最大手IT企業であるFPTジャパンホールディングスが2025年6月に共同設立したSIerだ。レガシーシステムの維持、新たな出口戦略の提供、IT人材の高齢化による労働力不足の解消を事業コンセプトとする。「10月には大手金融機関2社を対象にサービス提供を開始しました」と同社経営企画本部長の甲斐芳和氏は語る。
ベトナムの人口は1億人を超え、平均年齢が33歳と若く、国家戦略で56万人超のIT人材が育成されている。この労働力をSCSKが蓄積したノウハウと組み合わせて活用する
「最大の特徴は、平均年齢が33歳と人口構成の黄金期が到来している、ベトナムの最大手IT企業と連携して育成した人材の活用です。FPTジャパンホールディングスは、COBOLによるメインフレーム向け開発技術や日本語の学習プログラムを社内で展開し、数百人のベトナム人技術者が修了しています。彼らが所属する開発センターに、SCSKに在籍する熟練レガシーエンジニアが50年以上蓄積した業界知識や技術力、開発プロセスの標準化・文書化を通じた設計力や管理スキルなどのノウハウを移転する形で、FPTとの協業を展開します。顧客の有識者との交流も交えながら、持続的な顧客の支援体制を整えていきます」(甲斐氏)
今後は同社が暗黙知として蓄積してきたシステム開発ノウハウを形式知化した上で、AIと掛け合わせてIT環境の高度化や工期短縮の実現を目指していくという。
AMCソフトウェアジャパン(ロケットソフトウェアグループ)
カントリー・ジェネラル・マネージャー
大野 洋一 氏
メインフレームやオフコンからのモダナイゼーションを“COBOL to COBOL”の手法で解決するAMCソフトウェアジャパン(元マイクロフォーカス合同会社/以下、AMCソフトウェア)。2024年には、IBM製のメインフレームやミッドレンジの「IBM Power(旧AS/400)」を対象に最新ソフトを提供する米ロケットソフトウェアグループの一員となり、多様なレガシー環境に対応する体制を整えた。
AMCソフトウェアジャパン(ロケットソフトウェアグループ)
カントリー・ジェネラル・マネージャー
大野 洋一 氏
「The Standish Groupによるモダナイゼーションの手法別評価調査を見ると、『リビルド』『コンポーネント利用』『パッケージ利用』は失敗が20~27%あるのに対して、当社の手法が該当する『継続したモダナイゼーション』は失敗が1%しかなく、この安定性は疑いようがありません」と同社カントリー・ジェネラル・マネージャーの大野洋一氏は胸を張る。
同社が提供するソリューションは、COBOL資産を現代的な環境で開発・運用できるCOBOL製品と、この全機能を含み、かつPL/I言語のサポートとIBMメインフレームのJCL, CICS, IMS互換機能を持つエンタープライズ製品で構成される。
COBOLやPL/Iの資産は、長期利用による仕様書の紛失やSIerへの依存などにより、システムがブラックボックス化しているケースが多く、これがレガシー化する最大の原因と言われる。同社ではCOBOLやPL/Iのコードを静的解析し、システムを可視化できる製品も提供している。
「COBOLやPL/Iは新しい技術には対応できないと誤解されることがありますが、弊社の製品を利用すれば、COBOLビジネスロジックのWebサービス化や、COBOLソースコードからJavaバイトコード、CILコードを生成でき、JVMや.NET Framework上でCOBOLを運用することが可能です。またコンテナ型仮想化イメージも提供しており、これによりマイクロサービスも展開できます」(大野氏)。こうした手法で、製造、金融、エネルギーなどの業種を中心に、顧客のリプラットフォームやモダナイゼーションを支援してきた。
AMCソフトウェアは COBOLにこれから取り組む人向けのオンライントレーニング「Learn COBOL in 1 Day」を提供し、COBOL技術者の育成も支援している
AMCソフトウェアがCOBOL to COBOLの手法にこだわり続けるのは、60年以上続くCOBOLの安定した利用実績があるからだ。「古いものは駄目と決めつける方もいます。しかし日本で60年前に実用化された新幹線が、今でも進化しつつ安全に走り続けていることと同様に、COBOLも新技術を取り入れながら使われ続けてきた国際規格の言語なのです」と大野氏は強調した。

経済産業省
商務情報政策局 情報技術利用促進課
地域情報化人材育成推進室長・デジタル高度化推進室長
河﨑 幸徳 氏

アクセンチュア
テクノロジー コンサルティング本部
レガシーモダナイゼーション・オプティマイゼーション日本統括
マネジング・ディレクター
西尾 友善 氏

AMCソフトウェアジャパン(ロケットソフトウェアグループ)
カントリー・ジェネラル・マネージャー
大野 洋一 氏

システムズ
代表取締役社長
小河原 隆史 氏

日経BP 総合研究所
イノベーションICTラボ 所長
大和田 尚孝
一日の最後には、日経BP総合研究所の大和田尚孝をモデレーターとするパネルディスカッションが行われた。そのテーマは、ITモダナイゼーション「成否の分かれ目」。冒頭にてレガシーシステムを抱える企業が直面する課題「2025年の崖」の名付け親、経済産業省の河﨑幸徳氏が登壇し、現状と今後の見通しを語った。さらにITモダナイゼーションの現場を指揮する、アクセンチュア、AMCソフトウェア、システムズの要職者を交えてテーマを深く掘り下げた。
経済産業省が2018年に「2025年の崖」の警鐘を鳴らした『DXレポート』では、7年かけて既存システムの診断、仕分け、再構築に対処することで、2025年以降には年間12兆円に達するであろう経済損失(※当時の見積もり)を回避すべきという提言が示されていた。
そして、2025年を迎えた今。5月には「レガシーシステムモダン化委員会・統括レポート」が公開され、「大企業の74%はレガシーシステムが残存」しているなど、厳しい現状が示された。「まだ着手さえしていない企業も多く、本当に進んでいないなという印象です」と河﨑氏も本音を明かした。
日本企業全体で61%、大企業では74%がレガシーシステムを引き続き保有している。中小企業を中心に、まだ何も取り組みを進められていない企業も多いという
問題解決が進まない背景については、アクセンチュアの西尾氏が口火を切った。「IBMのメインフレームを使う大企業は、IBMがまだ開発やサポートの終了を宣言していないので、『自分の代では先送りでいい』と判断する経営層が多いことが要因だと思います。一方で、日立や富士通のメインフレームを利用する企業は対応が着実に進んでいます」
AMCソフトウェアの大野氏もこれに賛同し、「IBMの基幹システムが安定稼働しているため、特に地方企業ではITモダナイゼーションへの危機意識が高まりにくい現状です」と語った。中小企業の動向に詳しいシステムズの小河原氏は、「現場がIT資産の現状を把握できていないことが一番大きく、経営層との話し合いすらできていないケースが多いですね」とした。
一方、成功した企業の特徴についてはどうか。小河原氏は分析する。「経営者の世代交代やレガシー問題に詳しいCIOの着任など、人が変わるタイミングで動くケースが多いと思います」。経済産業省の前職で中小企業のデジタル化を支援した河﨑氏もこれに賛同し、エピソードを明かす。「先代が導入したオフコンで業務ごとにデータが散在していた状況から、世代交代の際にチャンスと見て一元管理に取り組んだ若手の経営者も多くいらっしゃいました」。西尾氏と大野氏は共に、「実績の多い我々の手法を信じてもらえれば、確実にITモダナイゼーションは成功します」という頼もしいコメントで会場を沸かせた。
さらに話題は、ITモダナイゼーションを推進するリーダーの成功しやすい特徴に及んだ。「逆に失敗しやすいのは、期限や人材不足に追われて、リーダーが仕方なく進めているようなプロジェクトです。マイグレーションでは課題やトラブルが山積しますが、それを乗り越える原動力になるのは、やはりリーダーの力ですね」と小河原氏が語ると、「私はよく『欲張ったら負ける』とお話しします。レガシーから何を捨てるかを見極め、新業務には解決力の高い新チームをつくって専念する。そして未来の目標には、段階的に移行するアプローチを取ることが成功への近道だと思います」と西尾氏が受け継いだ。
加えて重要なポイントとして挙がったのは、経営層とのコミュニケーションだ。経営者と新たにできる価値を共有することが大事だと河﨑氏は言う。「例えば銀行業界では、ホストコンピューターだけでは実現が不可能だったインターネットバンキングの機能を分散システムと連携させることで実現できました。レガシーシステムを見直すことで、できない機能が実現できる等、経営層が理解しやすい事例を伝えながら、レガシーシステムをモダナイゼーションしていくことの必要性や投資への理解を得ることが有効だと思います」
「経営者は基本、最初は疑ってかかりますね」と、西尾氏は引き継いで述べる。「ただ日本では、他社がやっているなら自社でもできそうだと考える傾向が強いと感じています。先行事例があれば、日本企業なら乗り越えられるケースは多いと思います」
「経営層が気にするのはやはりコストです」と、大野氏は考えを話す。「当社の場合、リスクを排除しながらもコストを抑えることができ、最も成功率が高い手法のモダナイゼーションをアプローチします。これは過去の投資を無駄にしない手法でもあります」
AIの利活用については、注意を喚起するコメントが相次いだ。「AIは進化しているとはいえ、精度が100%ではありません。ソースコードは機械変換で、変換後のテストはAI、新規開発はAIで、モダナイズは機械変換といった具合に、適材適所で使い分けています」(西尾氏)。その一方で、「AI普及で先行する米国では、プログラマーの求人が70%も減少しているとのこと、日本もその方向に向かうと予想されます。ITベンダーの皆様には、プログラマーをDX支援コンサルタントにリスキリングして、中小企業のDXを支援していただきたいです」(河﨑氏)といった声もあった。
最後は、ITモダナイゼーションの継続を左右する人材育成の工夫についてコメントが交わされた。「若手技術者に対しては、COBOLを古い技術ではなく、古いシステムを新しくするツールと認識してもらい、加えて新しい言語を勉強する機会も設けるよう配慮しています」と小河原氏は自社の取り組みを紹介する。一方で高齢の技術者には情報交換のコミュニティーを提供し、離脱を防ぐよう努めているという。
大野氏もそれに続いて、「当社ではリモートから1日でCOBOLを学べるオンライン教材や、COBOL言語の成り立ちなどをオンラインで学べる動画などを提供し、若手技術者の育成をサポートしています」と述べた。
会場では多くの意見が交わされたが、成功と失敗を分けるポイントを押さえ、今から取り組めば、レガシー対策はまだ十分に間に合う――最終的には、そうした前向きな印象を残すフォーラムとなった。

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ITモダナイゼーションの新潮流が一堂に集結
未来の競争力へ、「レガシー資産」を確実に刷新せよ――
~未解決の「崖」、COBOL/メインフレーム/オフコン問題に立ち向かう~
イベントリポート≪前編≫


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~未解決の「崖」、COBOL/メインフレーム/オフコン問題に立ち向かう~
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AMCソフトウェアジャパン
COBOLの未来とAI活用
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アクセンチュア
破竹の勢いで連戦連勝、その理由は
「100%」の自動変換と「1/3」のコスト


COBOL PARK
日本の「ITレガシー問題」に
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システムズ
顧客の競争力を失わないレガシー対策を!
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