COBOL PARKは、日本の「ITレガシー問題」解消を目指して、日本の大手SIerであるSCSKと、FPTジャパンホールディングス(ベトナム最大手のIT企業であるFPT Corporationの日本法人)が設立した合弁会社だ。レガシーシステムの維持、新たな出口戦略の提供、IT人材の高齢化による労働力不足の解消をミッションとして、10月から正式に事業を開始した。最大の特徴は、平均年齢が33歳と人口構成の黄金期が到来しているベトナム人材の活用だ。SCSKの熟練技術者が長年蓄積したノウハウを継承し、日本とベトナムの両技術者による顧客への支援体制を整える。
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「モダン化」の定義が変化。キーワードは「メインフレーム活用の見直し」と「最適化」 COBOL PARKの人材スキームとAIを活用したサービス 狙いは人材活用の多様化と事業領域の拡大 金融業界の顧客にとどまらず、幅広い業界の顧客へサービスを提供
COBOL PARK
経営企画本部 本部長
甲斐 芳和 氏
豊富な熟練技術者とベトナム若手技術者のアプリケーション保守体制提供による企業の事業継続性向上と、顧客へのレガシーシステム出口戦略提供をミッションとして設立されたCOBOL PARK。顧客の経営方針やシステムの現状を踏まえた、「Best-case scenario」の提案を事業コンセプトとしている。
COBOL PARK
経営企画本部 本部長
甲斐 芳和 氏
経済産業省が2025年5月に発表したレポート「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて -レガシーシステムモダン化委員会総括レポート-」では、国内企業のレガシー脱却が進まない現状を受けて、「システムのモダン化」の定義が変化したことに同社は注目。「必ずしも最先端の技術を使う必要はなく、外部のツールやサービスと容易に連携でき、ビジネスの源泉となるデータ利活用を可能にすること」と同レポートでは再定義された。
こうした動きも捉えて、「一般的なマイグレーションを一方的に企画・実行するのではなく、アプリケーション保守の体制を整え事業継続の憂いを解消した上で、メインフレーム活用の最適解および出口戦略を策定し、着実に推進します。最適解にはAI活用による業務の高度化も含めていく方針を掲げています」と同社の経営企画本部本部長である甲斐芳和氏は語る。
例えば、勘定系システムの大量にあるバッチ処理をクラウド化するとコストアップにつながってしまうため、そういった部分はメインフレームに残し、アクセス性を高めたい情報系はオープン化するなどシステムごとに切り分けを行い、顧客に“最適な出口”への道筋を提案していく。
COBOL PARKのサービス提供体制として、日本人の熟練したシニア技術者と中堅の技術者、そして最大の特徴であるベトナム人の若手技術者がいる。現在、SCSKが蓄積した技術力や業務のノウハウを、行動力にあふれるFPTに継承することに注力しており、全体的な強化を図っている。
同社のサービスを支える基盤の一つとして、FPTが数年前に開校したメインフレーム開発技術を学ぶ「COBOL ACADEMY」が挙げられる。
同校で習得する技術はCOBOLだけではなく、COBOL以外のレガシープログラミング言語、メインフレームのアーキテクチャ、開発工程にもおよぶ。「今ではSCSKのノウハウ(プロセス管理、プロジェクト管理、成果物の作成方法など)もカリキュラムに追加し、より実践的な内容に進化しています」(甲斐氏)
FPTが数年前に開校したメインフレーム開発技術を学ぶ「COBOL ACADEMY」の卒業生がCOBOL PARKに参画する。また、顧客側の人材とも連携し、効果の最大化を図る
また、COBOL PARKは、メインフレーム保守環境で暗黙知となっているノウハウの形式知化を中心にAIを活用する考えだ。「まずは顧客の環境に残っているドキュメントやソースコードを解析し、要件や設計情報の作成および最新化をAIで行います。継続的に環境を保守するための障壁(ドキュメントの漏れ、形骸化など)を解消し、その上でAIエージェントとの連携にて顧客の問合せ対応などのデータ学習を進めていきます」(甲斐氏)
さらにSCSK技術者のノウハウもAIに集約・学習させ、FPTのベトナム人若手技術者への円滑なノウハウ継承にも活用する。初めてメインフレームを扱う技術者の視点や疑問点もAIに学習させることで、ツールとしての有効性を上げていく。
勿論、ベトナム人材と協業する上での難しさもある。「以前にSCSKで中国人材の活用を推進した際は、同じ漢字を扱う文化があり、コミュニケーションが成立し易かった事例がありました。ベトナム人材は、日本語に含まれる行間のニュアンスも文書化し、着実に伝達することが重要です。また、若く高度成長期で勢いがある国のため、IT関連の仕事が多くあります。ベトナム人若手技術者にCOBOL PARKの魅力を感じてもらうキャリアパスを整備し、人材の定着化を図っていきます」(甲斐氏)
COBOL PARKの設立に当たり、高齢化が進んだメインフレームのアプリケーション保守開発事業に従事するシニア技術者にマッチする柔軟な人事制度を整備しつつ、日本人の若手技術者の採用も目指している。SCSKの採用は基本的に四年制大学卒からだが、COBOL PARKでは高卒、高専卒も採用し、高齢者や育児で会社勤めを中断している女性の採用も念頭に置いている。
「日本人の若手とベトナム人の若手は行動様式や価値観に違いがあり、業務の中にも向き不向きが出てくる可能性が高いと考えています。それぞれの強みを理解し、弱みを互いに補完し合う体制を作っていくことが理想です」(甲斐氏)
SCSKは、過去にオフショア開発を推進するにあたり、若手技術者をベトナムに派遣したことがある。「現地の技術者に対し、的確なシステム仕様の共有、初期段階で発生するQAの解消、プロジェクト管理などを指導する業務を担当してもらった結果、派遣した若手技術者もスキルアップしました。その際に若手の人材育成効果を実感しました」(甲斐氏)。今後の人材交流で同様の効果を期待しているという。
一方でFPTは、これまでオープン系のシステム開発が中心だったため、COBOL PARKでメインフレームの業務経験を積み重ね、ブランド力を高める狙いがある。「ITレガシー問題に悩み、競争力が低下している日本企業の問題を解決し、顧客が経営資源を競争領域に投入できるという流れに貢献できれば、それが両社のブランド価値向上につながると考えています」(甲斐氏)
将来的には日本市場だけにとどまらず、FPTが既に開拓している国の市場においてCOBOL PARKで生まれたソリューションを展開するビジョンも描いている。特に米国はメインフレームの開発を継続するIBM社のお膝元であり、より多くの顧客獲得に発展する可能性は大いにある。「安定した事業領域を確立することが、日本・ベトナム両社員の育成やキャリア形成の提供に繋がると考えています」(甲斐氏)
COBOL PARKは、2025年10月にサービスの提供を開始したところで、モダナイゼーションの具体的な手法は社内でも検討を重ねている。「個人的な見解としては、モダナイゼーション時のリスクや、メンテナンス性に優れたモダナイゼーション後の保守体制を考慮することが重要と考えています。メインフレームからオープン化する際に言語を変えてしまうと保守性が低下する可能性があり、事象によっては顧客の事業へ影響が発生するトラブルに繋がる可能性があります。そのため、モダナイゼーション後の顧客を含む保守体制について、情報システム部員の方々がベテランならCOBOL、若手中心ならJavaといったように、部員が得意とする言語を選択することがベストと考えています」(甲斐氏)
COBOL PARKが提供するサービスイメージ。単純なモダナイゼーションではなく、顧客の経営方針とシステムの状態を踏まえ、最適な出口戦略を策定・実行する
今回の新会社設立の発表を受けて、COBOL PARKには様々な反響が寄せられた。「まずはSCSKが得意としてきた金融業界の大手企業2社に対し、サービスを提供します。他方、ホストシステムのマイグレーションを始めたものの、結局ホストシステムが無くなることはなく、対処に困っているといった企業からも、業界を問わず多くご相談いただいています」(甲斐氏)
期待が高まるCOBOL PARKの取り組みについて、5~10年後を見据えた将来のビジョンを聞いてみた。同社は2030年までに100億円規模の売上高を目標としている。「まずは金融業界の顧客へのサービス提供を拡大しつつ、並行して他業界の顧客にも同様にアプローチしていきます」(甲斐氏)
非競争領域の事業を扱うメインフレームを1社で担う場合、リソースが過剰になりやすい点も問題と見る。クラウド型のように多くのユーザーで共有できるサービスを提供することも視野に入れている。「日本企業全体の競争力を高められる“公器”としての存在になれたら、最高ですね」(甲斐氏)と未来の自社像を見据える。

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