社会課題の解決を日本には古くから「三方よし」※のような思想があり、多くのステークホルダーに目を配る企業文化が根付いていたという見方もあります。そこを生かし、サステナビリティの時代をリードすることはできないのでしょうか。
※近江商人の活動の理念。「買い手よし、売り手よし、世間よし」を示し、売り手と買い手共に満足するのはもちろん、社会貢献もできるのが良い商売であるという考え方
海老原確かに、近江商人の「三方よし」や環境に配慮したものづくりなど、サステナビリティは日本が本来持っている強みを生かせる領域だと思います。ですが、「Responsible Business」は、単に昔から日本企業が社是としてうたっていたものに合わせればいいということではありません。
従来の日本企業の取り組みは、世の中に良いものを作ることに主眼を置いていましたが、それを野心的な目標に落とし込むところが弱かったと思います。「この製品を何年までに何台売って、シェア何パーセントを獲得する」といった具体的な事業戦略に結びつけなければ、企業はスピード感のある成長は難しくなります。サステナブルとビジネス成長を、同じ軸で考える、ある意味でしたたかさが必要です。「Responsible Business」は、あくまでもビジネス戦略であるということを意識しなければいけません。
激しく変化する社会だからこそ、その変化に対応し、課題を解決する取り組みを事業の中核に据えることで、変化の荒波を武器にして、生き残る企業となることができると考えています(図1)。
図1:「Responsible Business」で目指すべき姿
齋藤同感です。日本企業のCEOとお話しをしますと、「当社のビジネスは世の中にいいことそのものです」と皆さんおっしゃいます。その通りだと思いますが、さらに視点を変えて、世の中の課題に対して、自分たちの技術や人材、ナレッジを使って何ができるのか、という見方をしなければいけません。
海老原そうですね。「Responsible Business」では、事業をスケールさせるドライバーとして、自社の強みをどう生かしていくのかがカギを握ります。競合と何が違い、その差異がビジネスの優位性を生むのか。さらに、それが顧客のニーズに合っているのか、その理解が必要です。自社の強み・ニーズ・社会的な必要性の3つを掛け合わせて、自社の中核事業を作るべきです。
齋藤事業をサステナブルの視点で見直すこと自体が、ビジネスチャンスになります。これまで誰も手を付けていなかった、いわゆるアンメットニーズをあぶり出す近道になるからです。
一例をお話ししますと、英国の携帯電話サービス大手のボーダフォンでは、ケニアの携帯市場に進出した際、モバイル送金サービスの「M-Pesa(エムペサ)」を広く大衆に普及させました。これを女性が収入を得る手段として利用したことで、女性の社会進出を大きく後押ししています。同時に、ボーダフォンはビジネスとしても大きな成功を手にしました。
これは、まだまだ伸びることが予測される新市場で、第一人者となった例です。他にも多くの企業がサステナビリティへ向かっており、新しい市場を取るのは、早い者勝ちの状況です。
取り組みの入り口は、CO2削減やリサイクルといったテーマでもいいと思います。そこから自社の強みをどう生かせるのか、ビジネスモデルを変えるような事業に発展させていくことが重要です。