New Future 日経ビジネス 電子版SPECIAL

N e w F u t u r e

Vol.13 カーボンニュートラルだけではない
今企業が取り組むべき課題とは

潮目は変わる。
今まさに変革を開始すべき

 WWFジャパンとアクセンチュアでは、日本企業が生物多様性に関してどう考えているかを共同で調査されました。それぞれの立場での評価はどうだったのでしょうか。

東梅今回、生物多様性に対して感度が高い企業にヒアリング中心の調査を実施したのですが、事前に私たちが想定していた、企業が抱えている課題と、重視していることが再確認できました。先ほど、生物多様性を意識した取り組みをしている企業はひと握りと申しましたが、今回の調査対象である先進企業十数社の2割程度の企業が原材料の影響を評価しています。しかし、トップランナーの中でも2割というのは、やはり少ないと言わざるを得ません。

 また、ヒアリングを通じて感じたのは、日本企業の場合、国際的な目標設定の手法の完成を待ち、その手法に沿って忠実に従った目標を設定しがちだということです。今の段階では、パーフェクトな目標を設定するよりも、まずは生物多様性に対する関係性と依存度を把握し、その上で優先順位を仮決め、何から対応するかを決めることが重要だと思っています。

海老原企業が足踏みをしている理由として、生物多様性に取り組むビジネスメリットが分からないという声がありました。現実問題として、生物多様性の回復に取り組むだけで売り上げを向上させることはできません。しかし、生物多様性が減少すれば売り上げや利益が失われる可能性があります。逆に、企業によっては、生物多様性の回復に努めることで新たなイノベーションが生まれるかもしれません。ただビジネスリスクを下げるだけではなく、事業が成長すれば成長するほど生物多様性もプラスに転じるネイチャー・ポジティブな事業を創っていく必要があります。

東梅先行するカーボンニュートラル経営への日本企業の移行段階を見ると、地球温暖化問題を理解する段階はとうに過ぎ、経営としてどう取り組むかに焦点が移っています。生物多様性についても、今は理解するための勉強が必要だと考える企業が多いと思いますが、今後、経営課題として“ネイチャー・ポジティブに向けて何をしているか”が問われる時代に、早晩潮目が変わる可能性があります。

 WWFジャパンは国際的な制度設計の動向を日本企業にお伝えするだけでなく、世界の農地や水産の現場で何が起きているかを企業にレポートする国際的なフィールドプロジェクトを展開しています。現場と国際的制度の両面から、課題とその解決方法を企業に対話を通じて働きかけていきます。ただ、この問題が企業経営にとって長期的なリスクであることを日本企業の経営者に直接伝え、企業の経営層レベルでの対応を支援していくところでは、WWFジャパン単独では不十分で、その部分に強みを持つアクセンチュアの活動に期待しています。

海老原そうですね。これはまさに経営に関わる問題として捉えることが重要です。

 すでに投資家や消費者は、企業がコアとなる戦略やビジネスモデルにサステナビリティを組み込んでいるかを重視しています。また、言うだけではなく実態が伴っているかを厳しい目で見ています。この生物多様性の領域においても、リーダーとして、率先して社会を良い方向に導いていくのか、あるいは他社に追従するのか、今まさに経営者としてのスタンスが問われています。

 環境課題の解決と事業成長は背反するものではなく、両方をかなえる「第3の方向性」が見いだせるはずです。アクセンチュアでは、そのようなビジネスモデルを企業と一緒に作っていきたいと考えています。

東梅氏と海老原氏
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