「自分が育てる、自分だけのAI」がAIのパーソナル化と進化によって、AIが人間味を持つようになるが、その一方で、テクノロジーによって、人間の活動範囲もバーチャル空間に拡張している。そうした中、アクセンチュアが予測するのが、「空間コンピューティング」上の人間の活動である。
空間コンピューティングとは、リアル空間で人間が得ている様々な感覚を、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)空間でも体験できるようにして、相互の行き来を可能にすることである。高性能なVRゴーグルをはじめ、視覚や聴覚、手触り、重みなどの触覚をバーチャル空間でも維持するテクノロジーが、次々と開発されている。
「コンピューターの進化は、パーソナルコンピューター(PC)、モバイルコンピューター(スマートフォン)へと続いてきました。この次が、『空間コンピューター』です。パーソナルな空間自体をどこにでも自由に持ち運ぶことができる、新しいパラダイムを生み出しています」(山根氏)
VR、ARは一時期注目されたものの、今は落ち込んでいる印象があるかもしれないが、米国では10代の若者の3割がすでにVR機器を所有しており、いわゆるZ世代の期待は非常に高まっているという。また、高精度なゴーグルの登場により、ゲームやコミュニティなどのB2C用途だけでなく、遠隔医療、機器保守などのB2B用途でも利用が拡大している。
ただし、空間コンピューティングが発展していくためには、人間が安全に没入できる環境を整えることが必要だという。刺激が強すぎて疲労や事故を起こさないインターフェースの開発が求められている。
新たなテクノロジーによる人間の能力の拡張は、ヒューマンインターフェースの進化からも見て取れる。「声や目線、さらに脳神経によって考えただけでマシンを動かすことができるようになります。さらに、人間が直接指示を出さなくても、人間の動きの癖を検知して、潜在的なニーズに沿った価値を提供する、つまりテクノロジーが人間の機微を察して、先回りして動く時代も近づいています」(山根氏)。
図4:今後考えられるヒューマンインターフェースの進化
例えば、車載カメラで歩道を歩く人の関節や足の動きを追うことで、20m前方の歩行者が道路を渡るかどうかを0.6秒の間に約90%の正答率で予測できることを、中国の同済大学が発表している。また、人間が指示しなくても表情や声、視線から、失敗を認識するロボットの開発も進んでいる。
「これまで、人間とテクノロジーの間にははっきりとした境界が存在していました。しかし今後は、テクノロジーは人間が意識しない形で溶け込んで人間の一部分となり、分けることができなくなるでしょう」(山根氏)
山根氏は、人間とAIと共進化について、最後に次のように述べた。
「人間とAIの関係性はジャズセッションに似ていると考えます。人間とAIの対話や相互学習によって多くのものを生み出します。AIエージェント同士のコミュニケーションができる世界の実現も可能となります。そこで誕生するのが自分専用のAIエージェントをバディとする『BYOAI世代』です」
だが、ここで疑問が生じる。いつでもAIがバディとして横にいるとしたら、人間のすべての意思決定をAIが操る“ディストピア”にはならないのだろうか。この問いに対して、再び「山根バディ」に回答してもらうことをもって本稿の締めとしたい。
動画:声、画像などを生成AIで作成した「山根バディ」 ②