New Future 日経ビジネス 電子版SPECIAL

N e w F u t u r e

Vol.21 進化するAIを受け入れ、
人の役割を問い続けることが
経営者の責任

AIをどう活用するか、「想像力」をアップデートする

 AIを脅威と見るか、チャンスと見るかによって、企業のスタンスは変わるということでしょうか。

江川そうです。実は欧米では当初、「AIは敵」として、仕事を奪う危険な存在と見なしていました。対して日本は独自のアニメの世界観が浸透していたこともあり、AIと共存することに違和感がありません。そのためAIに対して親しみを持っていたのは良いことでした。

 しかし多くの日本企業は、AIが企業に浸透する過程で、企業全体を変革するパワーを有するという認識を持つことができませんでした。欧米では逆にこの意識が高かったことで、現状におけるAIへの取り組みに差がついてしまったのだと思います。

江川 昌史 氏

江川 昌史 アクセンチュア
代表取締役社長/CEO
アジアパシフィック共同CEO
1989年慶応義塾大学商学部を卒業、米アーサー・アンダーセン(現アクセンチュア)に入社。2000年にパートナー、2008年に製造・流通本部の統括本部長などを経て、2015年代表取締役社長に就任。現在アクセンチュア ジャパン 代表取締役社長/CEO 兼 アジアパシフィック共同 CEOであり、アクセンチュアの執行委員会とグローバル経営委員会のメンバーを務める。

根岸イメージを持つことが大事だと思います。企業経営にAIはどう関わり、人がどこまで受け入れることで、何ができるか想像力を働かせなければいけない。そして、その想像力を日々アップデートすることが大事です。

 経営者が想像力を働かせ続けることで、AI時代において人にしかできないことが見えてくるのでしょうか。

根岸AIも進化しますが、社会、事業環境も時代とともに変わります。それに合わせながら、AIとどう共存していくかを考えることが必要です。

 これまではお客さまと生命保険会社の関係は、ある程度画一的でした。例えば、性別や年齢に応じて決められたパターンの提案をすることで、事業を運営することができました。

 それが今ではお客さま一人ひとりが異なる個性を持ち、異なるニーズがあります。さらに生命保険は、お客さまとの長期の関係性が前提になっていますから、年代やライフステージとともに変わっていくお客さまのニーズ、価値観に合わせたご案内をしていく必要があります。

 当社が開発した「デジタル秘書」の狙いは、単に業務を効率化することではありません。お客さまから情報を聞き出して集めることはAIには難しく、人にしかない「温もり」や「温かさ」でお客さまに寄り添うことが必要です。AIが得意とする記憶力、分析力を備えた「デジタル秘書」が傍らにいることで、営業職員はお客さまに接する時間を増やすことができます。その結果、より多くの情報を得ることができるのです。そして、その次のお客さまともつながることができ、さらに新たなビジネスチャンスを得ることができます。

 集めたお客さまの情報を分析する際にも、AIと人の経験値を掛け合わせることで従来よりも情報の価値を高めることができますし、それこそが人の力だと思います。

江川おっしゃる通りです。AIが得意な領域、人が得意な領域を見極めることは、AIが仕事に浸透する中で、ますます重要になります。AIは人とともに成長する技術ですので、使う側の人間力が問われるのです。

 アクセンチュアの社内でも、人が関わらなくてもよい間接業務はAIエージェントによって徹底的に自動化を進めています。効率化により生まれた余力を活用し、必要に応じてリスキリングを行うなど、人にしかできないリアルなフィールドワークに人材を投入することで、企業価値をさらに高めることができると考えています。

根岸当社でも、営業現場の事務を効率化し、これまで営業所で事務を行っていた職員の役割を変えました。「事務サービス・コンシェルジュ」と称して、ご高齢のお客さまの事務手続きをサポートするという、新しい価値を生み出す業務にチャレンジしてもらっています。お客さま訪問の際には、営業職員も必ず同行するようにしており、お客さまの状況をより深く知ることで、次のビジネスのヒントを得ることができます。工夫次第で、AIを活用して業務を効率化することはチャンスにもなります。

江川AIによる効率化や自動化によって、企業価値の源泉である領域にリソースを投入できることが、AI時代の経営の神髄と言えます。その際、人にはAIが模倣できない創造性を求められてきます。

図2 図2

図2:人とAIの共創による、生命保険営業の新たな価値創造モデル(アクセンチュア作成)

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