New Future 日経ビジネス 電子版SPECIAL

N e w F u t u r e

Vol.22 日本企業のAI導入停滞を打破する
リインベンションとRDE

CEO主導の全社変革を担う
新職種「RDE」

AIを巡る日本企業の混乱について、もう一点押さえておかなければいけないのが、パートナー選定の複雑化だ。AI領域では、AnthropicやOpenAI、Palantir、NVIDIAなどの有力なプレーヤーが次々と台頭し、自らコンサルティング領域にも参入し始めている。しかし、「重要なのは、どのプレーヤーが優れているかではなく、業務をどのように作り変えれば成果が出るかです」と保科氏は言う。

そこで重要なカギを握る存在として注目されているのが、FDE(Forward Deployed Engineer)と呼ばれる人材だ。FDEは、顧客企業の現場に入り込み、業務や組織、社内システムを理解した上で、AIやデータを活用したシステム構築・実装を推進する。保科氏の言う「業務をどのように作り変えれば成果が出るのか」に近い役割を担う存在とも言える。

一方で、AI活用をPoCや個別業務の改善にとどめず、Reinvention(全社変革)へとつなげるには、実装を担う人材だけでは不十分な場面もある。求められるのは、技術を導入するだけでなく、業務そのものをどう再設計し、組織や人材、意思決定の仕組みまでどう変えていくかを描く力だ。そこでアクセンチュアが打ち出しているのが、RDE(Reinvention Deployed Engineer)という新しい人材像である。RDEの「R」はReinventionを意味し、アクセンチュアはこれを「再創造」や「全社変革」という意味合いで用いている。

「当社は、2026年3月にリインベンションパートナーになることを打ち出しました。AIでクライアント企業の全社変革をやり切る意思を示すものですが、同時に従来型コンサルティングからの脱却を目指す意味もあります」(保科氏)

RDEの役割自体は、業務プロセスを理解し、戦略立案から業務変革、システム構築、運用までを一気通貫で担うという点でFDEに近いものだが、最も大きな違いは特定プロダクトに依存しないことだ。自社プロダクトという“制約”がないため、忖度のない中立の立場から最も効果が期待できる選択ができ、それらを組み合わせた全体設計ができる。

RDEの具体的な支援の特徴は大きく3つあると保科氏は語る。

「1つ目の特徴は、提言型から成果型へのシフト。従来型の戦略系コンサルタントは、ともすれば提言して終わっていたケースも散見されましたが、RDEはドキュメントやシステムの納品にとどまらず、ビジネス的な成果にフォーカスします。

2つ目の特徴は、縦割りだった支援の統合です。従来型のコンサルティングでは、戦略立案、業務変革、システム構築、運用などがそれぞれ独立した領域として分業されました。RDEはこの分断を解消し、AIを活用しながら業務変革からシステム開発、運用までを一気通貫で担います。これにより、構想から成果創出までのスピードが格段に上がることに加え、実装や運用で得られた学びを次の変革に素早く反映できるサイクルが生まれるのです。

そして3つ目の特徴は、少数精鋭でスピーディーに成果を出す点です。従来型の変革プロジェクトでは、大人数のチームを組み、年単位で構想・設計・実装を進めることも少なくありませんでした。これに対してRDEは、成果創出に必要な人材を絞り込み、原則90日以内という短いサイクルで実装と検証を進めます。中核となるのはRDEですが、必要に応じてFDEなどの専門人材も加え、業務変革と技術実装の両面から成果に直結する体制をつくります。小さく始めて、短期間で効果を見極め、次の変革につなげる機動力こそが特徴と言えます」(保科氏)

ここで言う成果とは、単なる目標ではなく、経営トップとの意識合わせの下で明確なKPIを設定することだという。

「AI で業務を大きく変革させるには、部署をまたいだ人員配置の見直しや、業務プロセスの再設計、大規模な投資判断が避けられません。人とお金の両面で意思決定ができるのはCEOだけです。だからこそAI変革は、CIOやデジタル部門に任せるテーマではなく、CEO自身が経営課題として向き合うべきものです」(保科氏)

ただ、こうした企業の今後を左右するような決断の場合、CEO がトップダウンで号令をかけるだけでは進まないことがあると保科氏は話す。

「これまでの日本企業では、言われたことを正確に実行する人が評価されるカルチャーがありましたし、大きな変革には現場からの反発もあり得ます。しかし、定型業務は今後AIやロボットに代替されていくのは明らかで、全社的な変革をおろそかにした企業は最新テクノロジーによってディスラプトされてしまうでしょう。この構造的な障壁を乗り越えるには、まずはCEO自身がAIを日常的に使って、どのような変革が可能なのかを高い解像度で理解すること、さらに多少の失敗を許容しながら変革を推進できるカルチャーを醸成し、人事や教育も含めた環境づくりに取り組むことが重要です」(保科氏)

従来型の評価軸を排し、保身より挑戦が優先される組織への進化。これが、アクセンチュアが提唱し、RDEの呼称にも取り入れられたリインベンションの姿だ。

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