日経ビジネス電子版 SPECIAL

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トップインタビュー:小林大介氏 顧客体験リデザインから、
パーパス起点の新規事業作りまで
顧客価値創造型DXを、
実行力で支援する伴走パートナー

従来通りのマーケティングでは顧客に選ばれることが難しい時代、企業には何が求められるのか。電通デジタル副社長の小林大介氏は、顧客体験のリデザイン、さらにはパーパスに立脚した事業そのものの再構築の必要性を訴える。同社が支援する、顧客に新たな価値をもたらすDXへのアプローチを聞いた。

デジタルとリアルが融合した
顧客体験の提供は、
顧客に選ばれるための基本要件に

——新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速していると言われますが、電通デジタルはその動きをどのように捉え、また支援しているのでしょうか。

電通デジタル・小林大介氏(以下、略)日本企業のDXへの取り組み方は、コロナ禍を経て大きく変わったと感じています。COVID-19が収束しても生活者が従来の行動スタイルに戻ることはなく、経営者は従来と同じ商品・サービスで同じ売り方をしていては顧客が離れてしまうという強い危機感を持ち、DXへの予算や人的リソースの投入の仕方における本気度をひしひしと感じます。

 企業のDXへの取り組みはあらゆる領域に及びますが、当社がご支援しているのは「顧客価値創造型DX」、つまり顧客への提供価値を高めるためのDXです。

小林 大介

小林 大介

株式会社電通デジタル
副社長執行役員

電通国際情報サービス、電通イーマーケティングワンを経て、2016年より電通デジタル 執行役員。21年より副社長執行役員に就任し、現在はトランスフォーメーション領域、グローバル部門、関西部門などを管掌。一般社団法人「UXインテリジェンス協会」の副理事長を務める。

 COVID-19によって生活者と企業との接点はデジタルチャネルへとシフトしましたが、金融・住宅・自動車・B2B商材などの高額・高関与カテゴリーにおいては、最終的な契約はまだまだリアルチャネルで行われることが圧倒的に多いですし、ファッションにおいてもEC比率は高まりつつも実物を見たいというニーズ、あるいはリアル店舗でのセレンディピティ的な発見へのニーズは消えることはありません。ただし、多くの顧客はウェブサイトなどのデジタルチャネルでの情報収集や比較によって候補商品の絞り込みを行った上でリアルチャネルを訪れますので、デジタルチャネルでの行動履歴や事前入手情報に基づいた応対ができれば、顧客体験の品質が高められるのと同時に、応対時間短縮や業務効率化など企業側にも大きなメリットがあります。飲食店における「モバイルオーダーにおける店頭受取」はその典型と言えます。

 このように複数チャネルをシームレスに連携させて1つの顧客体験をデザインすることの重要性は随分と前から提唱されていたものの「概念先行」でした。それが、クラウド型のデータ基盤や施策自動化ツールの普及と、COVID-19による顧客行動変化によって、一気に実現が加速しており、近い将来には顧客に選ばれるための「当たり前の要件」になっていると予想します。

 このような企業ニーズに対して、当社はチャネル横断での顧客体験のデザイン、それを実現するためのITプラットフォーム構築や組織・業務の設計、そして実際の体験を形成するクリエイティブまでをトータルでご提供しています。これらのプロセスがウォーターフォールではなく、顧客の反応を見ながらアジャイル的に進むのが顧客体験DXの特徴なので、ワンストップで柔軟なプロジェクト運営ができる点をご評価いただいています。

パーパスに基づく
新規事業の構想から成長まで
伴走できるパートナー

——社会のデジタルシフトに加えて、サステナビリティやSDGsへの生活者の意識の高まりも注目されていますが、それに対して企業はどのように対応すべきでしょうか。

 はい、サステナビリティやSDGsへの取り組み姿勢が、生活者の企業選別における重要な観点になりつつあります。消費行動が「BUYからVOTEへ」変化していると言われるように、自分個人にとってのベネフィットだけでなく、脱炭素などの社会課題への貢献度合いを商品・サービスの選択基準とする人は、これからどんどん増えると予想されています。

 そのような変化に対応するために、企業は自社あるいは事業のパーパス、すなわち存在意義を改めて問い直し、それに立脚して商品・サービスのあり方を再構築するという取り組みに着手しています。その際に重要なのは、生活者が日常的に意識している社会課題を的確に捉えて、そこに自社が保有する強みやリソースを重ね合わせることにより、自社ならではの、かつ受容性の高いパーパスを設定することです。

 当社はそれを支援するツールとして「Social Pain Compass(ソーシャルペインコンパス)」というサービスの提供をしています。これは、SNS投稿など膨大なデータの分析に基づいて、生活者が感じている不満や課題を「地球・自然」「社会」「人生」「暮らし」の4領域にわたる約230項目に分類したもので、パーパスや新規事業、あるいは既存事業の新たな訴求コンテクストの検討などにおいて広くご活用いただいています。

——大企業の新規事業は立ち上げたものの事業規模拡大に苦戦するケースも多いと思われますが、電通デジタルはどのようなサポートを提供しているのでしょうか。

 パーパスや事業コンセプトなどの構想段階で太い背骨を作ることは非常に重要ですが、サービスや顧客体験のディテールは利用者のフィードバックを得ながらアジャイル的に改善していく必要がありますし、その価値を生活者に伝えて新規顧客を獲得するためのコミュニケーション戦略も、市場の反応を踏まえて最適化し続けねばなりません。さらに、一定の顧客を獲得した段階では、事業をさらに大きく成長させるためにはテレビCMがブースト手法として有効であることは、多くのデジタルサービスやB2B商材においても立証されています。

 パーパスに立脚して新たな事業やサービスを作る、いわば「0から1への変革」と、その事業やサービスを外部メディアの力も最大限に活用してスケールさせていく、いわば「1から10へ、100への成長」。このプロセスを伴走パートナーとしてトータルでご支援できるプレイヤーは当社以外には多くは存在しないと自負しており、これからもクライアント企業の「顧客価値創造型DX」をしっかりカタチにすることをご支援していきたいと考えています。