先行事例研究1 Kaien 多様な可能性を活かす採用のキモ
Kaien
就労支援事業部 法人サービス担当ゼネラルマネージャー
大野 順平氏

2009年創業のKaienは、発達障害人材を対象とした人材紹介・人事コンサルティングサービス等を専門とする。さらには発達障害やグレーゾーンの方の自立・生活訓練や学生・生徒・児童向けのサポートを通じ、社会における活躍を支援している。同社の担当者からニューロダイバーシティ推進のヒントを聞く。
企業がニューロダイバーシティ推進に取り組む上で最大の壁となるのは社内理解であり、それをどう広げていくかだと感じる。また、一般雇用枠・障害者雇用枠にかかわらず、一人ひとりが持つ強みを活かす採用のマッチングや、「発達障害」「ニューロダイバーシティ」といった紋切り型の概念を浸透させることではなく、個々に向き合う「固有名詞」の議論にすることも重要だ。
社内の壁をなくすポイントは、プロジェクトを推進するリーダーが少人数で顔が見える関係性を築き、熱意を持って粘り強く対話を繰り返すこと、ニューロダイバーシティに対して当事者意識を持つ機会をつくること、そして、多少強引であっても発達障害人材と受け入れ部署の担当者が実際に会う機会をつくることだ。
多様な人材を活かすには、最初に当事者の自己理解、続いてジョブマッチング、そして雇用後の環境整備という3ステップが必要だ。得意・不得意の偏りや、力を発揮しやすい環境は人により大きく異なるため、個々人に合わせた環境整備や機会提供を柔軟に行っていくことが求められる。
課題となるのはジョブマッチングと環境整備のステップだ。当事者が強みを自己理解できても、その強みを活かせる仕事に就けなければ経済的価値につなげられない。一般枠での就職活動の際、自分自身の障害特性を就労先に開示するオープン就労は、現実的にはまだ少数だ。とはいえ日本では障害者雇用の職種が限られ、その枠で強みを活かせる仕事を見つけるのは難しい。結果的に一般枠での障害特性を開示しないまま就職活動を行い、就労後に環境に適応できず心に傷を負い、就労移行支援で障害者枠の仕事を探すことになるケースが多くある。
この課題に対し、多様な人材の才能を活かす取り組みを行っているオムロンの事例を紹介する。オムロンは「異能人財採用プロジェクト」を進めており、例えばASDの診断を受けた方がソフトウェアプログラマーとして活躍している。
オムロンの取り組みにおけるポイントは3つ。まずは職務定義をしっかり行い、業務内容に加えてその業務に必要なスキルセットを明確化したこと。プログラマーの例では、リバースエンジニアリングという業務の性質上、納期に迫られることなく自分のペースで手順に忠実な仕事を進めることができるため、ASDの特性にマッチした。
2つ目は、採用プロセスに早い段階で技術者を巻き込んだ点。インターン説明会や事前面談、書類選考の段階で技術者が求職者の技術力を見極め、埋もれた才能を見つけ出した。そして3つ目は、就労準備や雇用環境整備において福祉のプロの力を借りたことだ。特に前例がない最初の採用では受け入れ側も不安になる。発達障害の特性の理解や、本人に努力を求める範囲の判断も難しく、専門家の知見は心強い。
冒頭語ったように、社内の壁をなくすことも、ニューロダイバーシティの推進には重要だ。現場の受け入れをどうサポートするかなど、様々な視点からこうした事例をぜひ参考にしてほしい。
オムロン
グローバル人財総務本部 企画室障がい者雇用システムアドバイザー
宮地 功氏
「オムロンは以前から障害者雇用を推進してきたが、そのほとんどが身体障害者で、精神障害・発達障害の方の雇用拡大に課題を感じていた。Kaienをはじめ外部の協力により、今取り組みが進んでいる。ニューロダイバーシティの推進で、障害者と一緒に働く上司や同僚が成長し、組織風土とマネジメントが変化し、グループの採用方式が広がった。これからも本人の正確な自己認識と弱みの開示をもとに、チームでカバーし合うという業務上の課題と、長年メンバーシップ型雇用を進めてきた人事制度や職場風土の変革といった課題に取り組んでいく」
