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国際状況紹介 野村総合研究所 ニューロダイバーシティの国際動向と社会的意義

野村総合研究所
メドテックコンサルティング部 グループマネージャー
高田 篤史

高田 篤史氏

ニューロダイバーシティに取り組むことで、企業としても様々なメリットを享受できる。ニューロダイバーシティを取り巻く世界の動きと、企業が取り組むべき社会的意義、そして日本の実態を踏まえ、ニューロダイバーシティを推進するためのヒントを解説する。

 ニューロダイバーシティは言葉の通りNeuro(脳・神経)とDiversity(多様性)を組み合わせた造語で、「神経多様性」を意味する。これは脳・神経及びそれに由来する個人レベルの特性の違いを多様性として尊重し、その違いを社会に活かしていく考え方だ。

 ニューロダイバーシティという言葉は、発達障害というニュアンスを必ずしも前提としない。発達障害であるかどうかにかかわらず、誰もが脳や神経には異なる部分があり、物の捉え方や感じ方、反応の仕方もそれぞれである。この多様性を意識して、個人が居心地の良い環境で活躍でき、結果的に社会全体が幸福になるというのが本質的な部分だと考える。

 もちろん現実的には、神経の多様性がとりわけシャープなニューロマイノリティーと呼ばれる人たちが、マジョリティーに対してインクルーシブでない状態がある。そのためニューロダイバーシティ推進は、やはり発達障害から取り組むことになるだろう。ただ最終的なゴールは、マイノリティーが働きやすく安心して活躍できるノウハウが社会に蓄積されれば、発達障害という枠組みは外され、すべての人の個性にフォーカスして生きやすい社会が実現されるところにある。

 ニューロダイバーシティは、2010年ごろからシリコンバレーで活躍する発達障害の人たちの存在により注目され始め、メディアが発達障害人材のIT企業における活躍を取り上げたことで認知が広がってきた。例えば自閉症の高校生がIT企業に就職し、その特性を活かして革新的アプリケーションを開発した話や、オーストラリア国防省が発達障害人材のスキル開発に取り組み、多くの自閉症人材をサイバーセキュリティーアナリストとして採用した例などである。話題としてはIT系職種が注目されているものの、実際にはそれに限らず、人により様々な職種に特性があるようだ。

 ニューロダイバーシティに取り組む社会的意義は、企業としての社会的責任は当然のこととして、未開拓の才能ある人材を獲得する必要性が挙げられる。また、ニューロダイバーシティ人材にとって働きやすい場所をつくることが、組織全体の底力や生産性向上、イノベーション創出につながるという点も重要だ。

 これらを踏まえ、日本における発達障害に関する経済損失を、当社では2.3兆円と推計した。この数字は無視できるものではないだろう。注目すべきデータとして、ASD診断を受けた人の6割、ADHD診断を受けた人の8割が、障害者雇用枠ではなく一般雇用枠で働いている。一般雇用枠では障害者雇用枠に比べて十分な配慮がなされていないことが想定され、発達障害に関する経済損失を減らすには、一般雇用枠の障害者がインクルーシブな状況で働けるようサポートすることが必要と考えられる。

 実際に、一般雇用枠でサポートがある場合は、ない場合に比べ生産性が34ポイント高いという調査結果が出ている。またインクルーシブという点では、上司や同僚などに発達障害であると伝えていることも重要であり、伝えている人は生産性が高い傾向が見られる。もちろん伝えるには、職場の心理的安全性も求められる。

 経営の視点からは、こうした取り組みに力を入れることで、ダイバーシティが浸透したインクルーシブでイノベーティブな組織となる。その状況をつくり上げれば競争優位性が高まり、かつ模倣もしづらい。ニューロダイバーシティの取り組みを、当事者の働きやすさや活躍推進はもちろん、企業の成長にも寄与すると考えることが重要なのではないか。

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