脱炭素新時代 ~カーボンニュートラルの実現とグリーンエネルギーへの転換~

TMEIC

期待から着実なビジネスへ
脱炭素対策が具体化

カーボンニュートラル達成に向けて、注力すべきポイントと対策で新たに必要とされる技術・ビジネスが明確になってきた。回転機とパワーエレクトロニクス(パワエレ)領域での多様な産業システムを開発・提供するTMEIC(ティーマイク)が、最前線の動きを語った。

川口 氏
TMEIC
代表取締役 取締役社長
川口 章

カーボンニュートラル達成に向けた脱炭素化の必要性と意義は、誰もが明確に理解していた。しかしこれまでは、掛け声と期待が先行し、具体的施策が見えないまま進んでいる面があった。それでも多様な業界・業種の企業がそれぞれの見地や背景から考え得る施策に地道に取り組んだ結果、注力すべき施策と、その実行に必要な新技術やビジネスが明確になってきた。脱炭素化に向けた手段の中核を占めるエネルギーに関連した産業システムを開発・提供するTMEICもまた、具体的に動き始めている。

社会は今、気候変動が顕在化する以前にできた産業システムを、気候変動の現状を直視し、未来を見据えて作り変えていく必要が出てきている。

例えば、台風の凶暴化やゲリラ豪雨、線状降水帯の発生による広域の水害が、高頻度かつ身近になっている。思いがけない場所での水害で、長期停電が起きることも想定すべき状況になった。電力会社での対策はもちろん、需要家側も備えが必要になってきている。

一方で、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを効果的・効率的に活用すべく、水素、特にグリーン水素を利用する仕組み作りが必要であることが明白になった。再生可能エネルギーと水素を併せて最適利用するための技術や仕組みを具体的に描く必要がある。

TMEICは、こうした時代や社会の要請に一つひとつ応えていく。この領域のビジネスとして、大きく3つの柱を立てた。DXで電力活用の高効率化を支援する「スマート・ファクトリー」、産業システムにおける省エネルギー化と動力源や熱源の電化を推進する「エネルギー・マネジメント」、再生可能エネルギーとグリーン水素の活用を支援する「グリーン・エネルギー」である。既に着手している、具体的なビジネスを紹介したい。

望月氏/川口氏

パワエレで培った知見を応用

スマート・ファクトリーの領域では、デジタル情報通信技術や制御技術で、エネルギーを効率的かつ安定的に活用していくための最適化ソリューションを開発・提供していく。エネルギー・マネジメント領域の省エネルギー化の効果も同時に期待できる。

TMEICは、工場・プラントの制御システムやITシステムを統合。設備稼働やエネルギー活用状況に関するデータの流れを把握し、生産性、品質、サプライチェーン、エネルギー消費などを管理するデータドリブンな統一プラットフォーム「TMSPIRITS」を提供。工場で使用するエネルギーを見える化、予測、分析、最適化し、より高度な工場経営を支援する。

またTMEICは、太陽光パネルや蓄電池などを電力システムにつなぐパワーコンディショナ(PCS)や、産業用モータとその駆動装置など、電力の創出から活用までをカバーする多様な製品を保有している。ここで培った知見や技術をTMSPIRITSに注ぎ、最適運用するためのソリューションを提供していく。自社工場はもちろん、既に多くの企業で採用されている。

また、全世界の電力消費のうち、約半分が何らかのモータの駆動で消費される。モータの高効率化は、脱炭素化の一丁目一番地だが、現在使われるモータのうち6割以上が古いタイプのままだ。当社が提供する高効率な産業用モータは、CO₂排出量とともに、電気代も削減可能。2~3年で投資回収可能であることを訴求し、入れ替えを後押しする。

鉄鋼生産や船舶の電化を支援

エネルギー・マネジメントの領域では、化石燃料を燃やして直接動力や熱として利用する装置・設備の電化を推進し、それに伴う省エネルギー化の脱炭素ソリューションを提供する。

電化による脱炭素効果が期待される分野に、鉄鋼生産への電炉の導入がある。世界のCO₂排出量のうち約38%が産業領域であり、さらにその約40%が鉄鋼の生産で排出される。現在は粗鋼の約75%が高炉で生産されるためだ。TMEICでは、大型電炉用の高品質な電源システム「CleanArc」を提供し、鉄鋼生産の電化を支援する。

さらに、船舶の動力源の電化も後押しする。外洋を航行する大型船は内燃機関の効率が高いため、船舶用重油や液化天然ガス(LNG)での航行が主流。これに対して、港湾近辺を航行する内航船は、航行・停止を頻繁に繰り返すため、本来電化に向いている。この領域に向けて、超高速モータや駆動システム、レアメタル不要で高効率を実現する同期リラクタンスモータを投入。加えて、停泊中の船内利用電力を生み出す内燃機関の発電機に代わって、陸上から給電するための電力変換システム、港湾クレーン運転中のブレーキ作動時のエネルギーを電力として回収する電力回生システムも提供する。

太陽光とグリーン水素の活用

グリーン・エネルギーの領域では、再生可能エネルギーとグリーン水素の活用拡大を支援する多様なソリューションを提供していく。

まず、太陽光発電の大規模プラントを系統に安定的につなげ、なおかつ発電効率を最大化するためのPCS、プラントに併設する蓄電システム(ESS)を提供する。また近年、製造業で導入が加速している自家消費プラントでの活用を想定した、PCSとESSを組み合わせた製品も用意している。

そして近年、活用拡大に期待が高まる水素関連では、再生可能エネルギー由来の電力で水素を製造する際の自励式整流器を開発。プラント統括制御システムや電解槽、水素耐爆モータなどと併せ、水素製造プラントに必要な電気設備をトータルに提供する。

TMEICの脱炭素化ソリューション
高効率モータ
脱炭素の一丁目一番地であるモータの高効率化。TMEICは、誘導モータではIE4効率を、インバータ駆動ではIE5効率を提案するなど、既存設備に合わせた多様な高効率モータを提供する。
スマートエネルギー
製造業の脱炭素化には、工場内の温室効果ガス排出量を可視化、予測、分析、最適化できる情報プラットフォームが不可欠。既に約10社がTMSPIRITSを導入し、高度な脱炭素化に取り組んでいる。
グリーン水素製造
グリーン水素製造には、電力系統に悪影響を及ぼさない安定した直流大電力を電解装置に供給可能な整流器が必要。TMEICは、整流回路にIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を採用した整流器を提供する。
電炉用新電源システム
鉄鋼のカーボンニュートラルには、電力系統の電源品質を低下させない電炉活用が必須。TMEICは、培ったパワエレ技術などの粋を注ぎ、IEGT(電子注入促進型絶縁ゲートトランジスタ)素子を用いた電炉用電源CleanArcを開発した。
船舶電化システム
脱炭素化が困難とされてきた海運業界の革新に向けて、TMEICでは、ディーゼルエンジン推進を電気推進に代えるための内航船用船舶電化システムを開発。ニーズに応じた機能・仕様のシステムを提供する。