ヘタル・ラリギ氏

ARCHION 代表取締役 財務・経理本部長 CFO ヘタル・ラリギ 氏

国内5工場を3工場に集約、開発・調達・物流でもシナジーを追求

ブランドと技術力を掛け合わせCASE時代に挑む日野自動車と三菱ふそうトラック・バス

日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが経営統合し、4月に誕生した持株会社「ARCHION(アーチオン)」。筆頭株主であるダイムラートラックとトヨタ自動車を含む4社が連携し、「商用車の未来をともに作る」という目標に向けて走り出した。2つの商用車ブランドの融合は、財務面でどのようなシナジーを生み出すのか? ARCHION 代表取締役 財務・経理本部長 CFO(最高財務責任者)のヘタル・ラリギ氏に聞いた。

スケールメリットを生かし
積極投資やコスト削減を推進

世界の商用車業界やトラック・バスのユーザーが注目する中、日本とアジアを中心に確固たるブランドを誇る2大商用車メーカーが1つとなった。

「もともと大きな会社である2社の統合によって生み出されるスケールは、相当な規模となります。そのメリットを十分に生かし、財務面でも単体のブランドでは難しかった投資拡大やコスト削減などの統合効果を追求していきたい」

そう語るのは、3月まで三菱ふそうトラック・バスの代表取締役・CFOを務め、この4月に持株会社ARCHIONの代表取締役 財務・経理本部長 CFOに就任したヘタル・ラリギ氏である。

世界の商用車市場では、CASE(コネクテッド・自動運転・電動化)領域における技術優位性の獲得や販売合戦など、市場競争が熾烈さを増している。

「競合との激しい競争に勝ち抜き、2つのブランドをご愛顧いただいているお客様に、より良い次世代商用モビリティ提供に向けた財務戦略を策定中です。スケールメリットとシナジーを生かして、競合と同等以上の収益レベルを実現し、株主の皆さまにもしっかりと利益還元していきます」とラリギ氏は宣言した。

持株会社のARCHIONと、事業会社である日野自動車、三菱ふそうトラック・バスの役割を明確化し、持株会社がグループ戦略、技術ロードマップ、財務フレームワーク、目標、資本配分、グループガバナンスなどを一元化する。

その上で、2つのブランドがボディやシャシー、パワートレインなどの基盤を統合・共通化する「統合プラットフォーム戦略」や、開発・調達・生産・物流などの機能統合、CASE領域への重点投資を柱とし、重複投資の削減から、投資効率の改善、資本効率の向上という好循環を生み出していく。

「大切なのは、経営統合後も日野自動車、三菱ふそうトラック・バスがそれぞれのブランドで商用車を提供していくことです。2つのブランドには、長くご愛顧いただいているお客様がいらっしゃいます。その期待を裏切ることなく、これまで以上にご満足いただくため、統合によるシナジーを最大限に利用するというのが基本的な考え方であり、それを推進するのが持株会社であるARCHIONの役割です」とラリギ氏は説明する。

CASE領域に重点投資
国内工場を3拠点に集約する

2社の経営統合によるスケールメリットとシナジー効果とは、具体的にどのようなものなのか?

投資の面では、CASE領域の技術開発において、単体とは比べものにならない規模のヒト・モノ・カネが投入できるようになる。これによって開発の高度化や多様化、スピードアップが図れるようになり、競合との熾烈な開発競争を勝ち抜いていくための体制が整う。

「約170市場に展開する三菱ふそうトラック・バスと商用車産業を支えてきた日野自動車が手を結ぶことで、資源・ネットワーク・技術力を大きく拡張します。これまで、2つのブランドが別々に進めていた同じ領域の技術開発を統合することで、重複投資を抑えることができます。さらに重要なポイントは、我々の筆頭株主であるダイムラートラック、トヨタ自動車が培ってきた電動化をはじめとするCASE領域の高度な技術を、必要に応じて採り入れられることです。これは、世界中の競合と戦っていく上で大きな強みとなるでしょう」(ラリギ氏)

一方、コスト効率化に関しては、2つのブランドによる共同調達、共通部品化といった施策を推進する。生産拠点・物流ネットワークの最適化の一環として、ARCHIONは国内のトラック生産拠点を2028年末までに5拠点から3拠点に集約する計画を発表済みだ。

「競争力の源泉は『規模×統合』です。生産能力を減らすことなく、拠点数を最適化することでコスト競争力を飛躍的に高めます。これによって生み出された再投資原資を循環させ、次世代商用モビリティの開発を加速させる計画です」とラリギ氏は説明する。

RoS10%を目標に設定
“お客様のため”に成長を続ける

持株会社であるARCHIONは、2つの事業会社との間で一元化された財務フレームワークや目標管理に沿って、ガバナンスに裏打ちされた財務規律を徹底させる役割も担っている。

「ARCHIONの資本配分とリスクは、4人の独立社外取締役を含む9人の取締役会によってモニターされます。これによって成長投資と財務健全性の両立を図り、株主をはじめステークホルダーの皆さまにしっかり利益還元できる会社となることを目指します」(ラリギ氏)

ARCHIONは5月に中期経営計画を発表。共通基盤によるコスト効率化と再投資を通じて競争力を強化し、2032年度までにトラックの85%以上を統合プラットフォームで生産。約1100億円のシナジー創出を目指す目標を掲げ、営業利益率10%超えを目指している。

「ARCHIONは『事業成長』と『効率化』という2本柱の枠組みを通じ、統合プラットフォーム戦略による商品の競争力強化を中核に、経営統合による競争力向上を加速させます。まず2026年度はチームの統合やガバナンス体制の確立、シナジー創出に向けた統合基盤の構築に注力します」(ラリギ氏)

統合プラットフォーム戦略により共通の開発・生産基盤を活用することで、コスト効率・性能・品質を同時に高めるとともに、創出したリソースをCASE領域など次世代技術への投資へ再配分していく考えだ。さらに2032年度には、売上高2.8兆円、販売台数28万台、配当性向40%を目標に掲げ、成長投資と株主還元の両立を図る。

ラリギ氏は、「経営統合前から、2つの事業会社はそれぞれ積極投資やコスト削減に取り組んでおり、良好な財務的パフォーマンスを上げています。互いの文化を学び合い、掛け合わせれば、ますます大きな価値が生み出せるでしょう。何よりそれは、両ブランドのお客様にとって望ましいことになるはずです。ぜひ、ARCHIONのこれからにご期待ください」と力強く語った。

財務目標フレームワークに反映された規律ある目標

2026年度はチームの統合やガバナンス体制の確立、シナジー創出に向けた統合基盤の構築に注力。2029年度までにビジネスモデルの最適化とシナジー創出によりRoS7%と売上高2.6兆円、2032年度までには統合プラットフォーム戦略を通じた製品展開を最大化させ、RoS10%以上と売上高2.8兆円の達成と、約1100億円のシナジー創出を目指す

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