
ARCHION 取締役 製品・開発・調達本部長 CTO 小木曽 聡 氏
2026年4月に経営統合を果たし、持株会社「ARCHION(アーチオン)」の下で走り出した日野自動車と三菱ふそうトラック・バス。同社は互いの強みとリソースを統合し、「お客様起点」で新たな価値創造と「統合プラットフォーム戦略」でCASEをはじめとする技術開発の強化を目指す。戦略の狙いと目標について、ARCHION 取締役 製品・開発・調達本部長 CTO(最高技術責任者)の小木曽 聡氏に聞いた。
日本とアジアの商用車市場で大きなプレゼンスを誇る日野自動車と三菱ふそうトラック・バス。両社の経営統合によって、どんな強みが生まれるだろうか――。その点に最も注目しているのは、やはりユーザーである運輸会社やバス会社だろう。
「より良い商用車とサービスの提供を通じて、お客様のビジネスの成功に貢献すること。それが、我々に課せられた最大の使命です。両社が長年培ってきた強みとリソースを統合し、お客様に提供できる価値を極限まで高めたい」
そのように語るのは、日野自動車の代表取締役社長で、ARCHIONの取締役 製品・開発・調達本部長 CTOに就任した小木曽 聡氏である。
両社の強みを掛け合わせ、製品・サービスの競争力と提供価値を圧倒的に高めるため、ARCHIONが推進しているのが、「統合プラットフォーム戦略」だ。
「日野自動車と三菱ふそうトラック・バスとが持つ大型・中型・小型トラックの各プラットフォームを統合していきます。ボディやシャシー、パワートレインなど、より良いものを選んで共通化し、製品力とコスト競争力を兼ね備えた商用車作りを実現します」(小木曽氏)
両社は経営統合後も、それぞれのブランドで商用車を販売する。そして、統合されたプラットフォームの下で、製品バリエーションの最適化とポートフォリオの拡充が可能となる。それぞれの顧客に、より価値の高いトラックやバスが提供できるようになるのだ。
統合プラットフォーム戦略の範囲は、いわゆる車台(プラットフォーム)の統合だけにとどまるものではない。両ブランドが長年培ってきた技術・ノウハウ・開発資源を共有することで、製品そのものの性能向上だけでなく、開発効率の最適化、コスト構造の改善、製品投入速度の向上などを同時に実現させることを目指している。
「日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは、統合プラットフォーム戦略の下、開発・調達・生産・事業・組織といった事業全体の基盤を横断的に統合し、両社の強みを掛け合わせながら最適化を進めていきます」と小木曽氏は説明する。
まず開発では、両社が別々に持っていた開発機能とリソースが統合されることで、重複領域が解消され、開発スピードと技術革新力が大きく高まることになる。
調達面では、両社の統合によって購買ボリュームが格段に大きくなるだけでなく、部品供給基盤も広がることが競争優位性となる。
さらに生産においては、現在、両社合わせて5拠点を展開する国内の主要工場を3拠点に集約する。これによって生産ラインの効率が向上し、工場全体のコスト構造が大幅に改善される。
「何より、それぞれのお客様に愛され、信頼され続けてきた2つのブランドが、単独では難しかった幅広い車種ラインアップを展開できるようになります。お客様のニーズに、よりきめ細かく応えられるブランドになれることが、本戦略の大きな意義です」(小木曽氏)
ARCHION はICE(内燃機関)とZEV(ゼロエミッション)を含む幅広い製品ポートフォリオをそろえ、CASE(コネクテッド・自動運転・電動化)技術を搭載することで、カーボンニュートラルへの対応やドライバー不足といった様々な社会課題や顧客ニーズに応える商用車を、両ブランドがそれぞれに提供できる未来を目指しているのだ。
統合プラットフォーム戦略によって、開発・調達・生産・事業・組織といった事業全体の基盤が横断的に統合され、製品強化、ポートフォリオ拡大、規模メリットの創出、投資効率の改善などが実現する。また、開発の効率化によって生み出されたリソースを再投資することで、価値創造の強化や、CASE技術の開発などが加速する
統合プラットフォーム戦略の推進によって開発効率が向上すれば、それによって生まれたリソースをCASE領域に重点的に再投資することができる。これも、経営統合によってもたらされた大きなアドバンテージだと言えよう。
「両社はこれまでにも、燃料電池大型トラック『日野プロフィア Z FCV』や電気小型トラック『eCanter』といった電動車の実用化のみならず、日野自動車が日本初の自動運転サービスを事業化し、三菱ふそうトラック・バスが国内初の運転自動化『レベル2』搭載大型トラックを発売するなど、CASE技術の開発および実装で一定の成果を上げてきました。その技術を持ち寄り、両社の株主であるトヨタ自動車、ダイムラートラックが開発した技術を採り入れることで、世界中のメーカーが繰り広げている次世代商用モビリティの激しい開発競争に勝ち抜いていきたい」と小木曽氏は意欲を示す。
とくに水素領域では、株主との連携を生かして世界水準の燃料電池システムの開発を推進。自動運転やコネクテッドの実装も進め、実用的なTCO(総保有コスト)改善と稼働率向上につながる“使える技術”として市場投入していく考えだ。
今回の経営統合によって、事業会社である日野自動車と三菱ふそうトラック・バス、さらに持株会社の株主として両社の事業を支えるトヨタ自動車とダイムラートラック、この4社が力を合わせ、「商用車の未来をともに作る」という目標に向けて漕ぎ出した。
小木曽氏は「統合プラットフォーム戦略はやるべきことが多く、個別の施策もスケールの大きなものばかりなので、一気呵成に推し進められるわけではありません。事業の規模が大きくなった分、それをワンチームとしてまとめ上げるのにも相当な力が求められます。持株会社であるARCHIONが2つのブランドの橋渡し役となることで、なるべく早く目に見える効果を上げたい」と役割を語る。
1日も早く効果を出すことが、長年2つのブランドに信頼を寄せてきた顧客の期待に応えることにつながる。小木曽氏は「大切なのは、お客様を起点に考えること。お客様に信頼され、選ばれる会社になれなければ、存在する意味がありません。お客様のビジネスに貢献する商用車を提供し続けることができて初めて、経営統合が評価されると思っています」と語った。