パートナー講演
トムソン・ロイター

トムソン・ロイター
プロダクト・マーケティング本部
統括部長
森下 馨 氏
グローバル・サプライチェーンを取り巻く環境は、かつてないほど複雑化している。企業が追うべき情報は増え続け、通商環境の変化は経営全体に及ぶ課題となっている。パートナー講演には、トムソン・ロイター プロダクト・マーケティング本部 統括部長の森下馨氏が登壇。AI時代のサプライチェーンマネジメントに求められる判断力と、品目管理を起点にしたリスクマネジメントのあり方について解説した。
従来、サプライチェーンの管理はコスト、納期、品質を中心に捉えられてきた。しかし現在は、各国の通商政策や規制、コンプライアンス情報を正しく理解し、変化に即応する力が欠かせない。
「AI時代のサプライチェーンマネジメントに求められるのは、情報を探す力を、判断に変える力へと進化させることだ」
森下氏はそう強調する。企業が直面しているのは情報不足ではなく、むしろ情報過多の問題である。政府機関の発表、ニュース、社内資料、外部データベースなど、情報源は分散している。しかも更新頻度は高く、専門用語や各国制度の理解も求められる。
従来型の業務では、担当者が複数のサイトや資料を個別に確認し、必要な情報を検索したうえで、制度変更の背景や影響範囲を手作業で整理してきた。判断根拠は担当者個人のメモやメールにとどまりやすく、同じような調査が繰り返され、知見は組織に蓄積されにくい。森下氏は、こうした属人的な情報収集には限界があると見る。
こうした課題に対し、トムソン・ロイターが提案するのが、AIテクノロジーの活用である。同社は税務、貿易、法務、リスクの各領域に生成AIを実装するため、毎年2億ドルを投資している。法務領域では、法律専門家の実務を支援するために開発された法務特化型AIリーガルアシスタント「CoCounsel」を展開している。
同ソリューションの特徴は、海外の法規制や実務解釈に関する専門情報を日本語で確認できる点にある。海外規制の確認にはこれまで言語と専門性の壁があったが、LLMの多言語対応が進んだことで、米国の輸出管理規則のように専門性の高い情報も日本語で質問し、日本語で回答を得て、実務判断につなげられる環境が整いつつある。
その仕組みを支えるのが、メンテナンスされた信頼性のあるコンテンツと、「スキル」と呼ばれるプリセット機能である。法律の専門家とAI専門家が共同で開発し、利用者の質問から実務に即した回答を引き出す仕組みだ。森下氏は、これにより回答精度を高め、AIによるもっともらしい誤回答(ハルシネーション)を抑えやすくなると説明する。
同様の仕組みは、貿易分野の「Global Trade Research AI」にも展開されている。規制変更が相次ぎ、情報源も散在するなか、担当者はチャットで問いかけるだけで必要な情報へアクセスできる。調査にかかる時間を短縮し、より確度の高い意思決定を行えるようになる。
「AIの本当の価値は、担当者の代替ではなく、担当者が正しく判断できる土台をつくることにある」
森下氏がそう語るように、AIは判断を丸投げするためのものではない。散在する情報を整理し、正しい情報を素早く取得できるようになれば、担当者は変化のスピードに対応しやすくなる。
正しい判断を下すには、社内にある品目情報を整備しておくことも欠かせない。サプライチェーンでは、調達、製造、輸出入、販売へとモノが流れていく。しかし、そのモノにひもづく品目情報や規制情報は、部門や国、システムごとに分散しがちである。規制が変わったときに、どの製品が影響を受けるのかをすぐに把握するには、品目情報を一元管理し、最新の制度情報と結びつけておく必要がある。
トムソン・ロイターの「ONESOURCE Global Trade」では、品目データベース「Global Classification」を通じて、共通の品番に対し、国ごとの規制情報や分類情報をひもづけて管理できる。220を超える国・地域の制度情報を備え、平均1営業日以内に更新している点も特徴だ。
AIは、このデータ基盤と組み合わせることで、品目マスターの整備やHSコード候補の提示、規制変更時の影響分析を支援する。担当者の判断を置き換えるのではなく、その精度とスピードを高めるための基盤となる。
森下氏は「未来はもはや構想にとどまらず、すでに動き始めている」として、米Anthropic社との提携拡大に触れる。同社のAIモデル「Claude」や関連技術との連携により、トムソン・ロイターのAI活用は今後さらに進化していくという。
激変する世界情勢のなかで、正しい現在地をいかに早く把握し、次の判断につなげるか。サプライチェーンの強靭性を高める実務基盤として、AIと品目管理の重要性は今後さらに高まっていくだろう。

パートナー講演
トムソン・ロイター
AI×品目管理で実現する
強靭なサプライチェーン戦略と
リスクマネジメント

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