AIと半導体産業では、電力インフラが競争力を左右する局面に入っている。AIデータセンターではGPUの高性能化が進み、1つの設備で小規模発電所並みの電力を扱う時代が現実味を帯びている。半導体工場でも、わずかな電圧低下や停電が大きな損失につながりかねない。
シュナイダーエレクトリックがこの領域に取り組む理由もここにある。同社はエネルギーマネジメントとデジタル技術を軸に、ビル、データセンター、製造業、インフラを支えてきた。電力を安全に配る事業から出発し、現在はオートメーションやソフトウェアを組み合わせ、エネルギーを効率的かつ持続可能に使う支援へと領域を広げている。
AIデータセンターで鍵となるのが、「Grid to Chip」と「Chip to Chiller」の2つの視点だ。前者は外部から受けた電力をチップまで安定的に届ける流れ、後者はチップで発生した熱を効率よく外へ逃がす流れを指す。高密度化が進むほど、電力供給と冷却を設計から運用まで一体で最適化する必要が高まる。
「高密度化によって、電力と冷却の設計・運用は従来よりはるかに複雑になっている。シュナイダーはGrid to Chip、Chip to Chillerの双方でポートフォリオを持ち、全体を最適化できることが強みだ」と青柳氏は語る。
こうした複雑な設計を実装するには、機器をそろえるだけでは足りない。シュナイダーは、電力や冷却の状態をソフトウェアで可視化し、設計時のデータを運用にも生かして全体効率を高める。電源や冷却設備を組み込んだモジュール型設備で建設期間の短縮にもつなげる。さらにNVIDIAと共同でAIデータセンターの標準的な設計指針を公開し、導入の迅速化を後押ししている。
半導体工場では、電力品質の監視と脱炭素が重要になる。多数の装置が稼働する工場内では、電圧や周波数の乱れが発生しやすい。わずかな異常でも生産停止や歩留まり低下につながるため、電力使用量や品質をリアルタイムに可視化し、トラブルを未然に把握する仕組みが欠かせない。さらに上流のテック企業の多くが2030年にScope3ネットゼロ目標を掲げるなか、サプライヤーにも再生可能エネルギーの導入が求められる。同社は半導体バリューチェーン向けの脱炭素プログラム「Catalyze」を国内にも展開する。
100カ国以上で事業を展開する同社にとって、日本は単なる市場ではない。国内企業の技術力や現場力と、シュナイダーのエネルギーマネジメント、デジタルの知見を掛け合わせる場でもある。青柳氏は「一方的に海外の仕組みを持ち込むのではなく、新しい価値や成長を一緒に支えていきたい」と語り、国内のデータセンターや半導体工場の高度化に加え、日本企業の海外展開や現地の脱炭素対応も支援していく考えを示した。





