2027年4月に適用開始を迎える新リース会計基準。大幅な基準変更によってリースの概念が変わるため、財務・会計に関わる実務や経営戦略に大きな影響が出ることも想定しておく必要がある。準備を進めるにあたりどのような点がポイントになるのか、具体的にどのような観点を意識しておくべきなのか。2025年11月18日に開催されたオンラインセミナーにて示された論点や準備の勘所を紹介していく。
オービックビジネスコンサルタント
AI×奉行クラウドで
新リース会計基準の
対応コスト削減
TOKIUM
新リース会計基準における
2つのつまずきポイントを
AIで克服
プロシップ
スムーズな新リース
会計基準対応のカギを握る
方針整理の秘訣を公開

基調講演:

会計教育研修機構
リース期間見積もりの3ステップ

公認会計士 一般財団法人 会計教育研修機構 シニアフェロー 井上 雅彦氏
公認会計士
一般財団法人 会計教育研修機構
シニアフェロー
井上 雅彦
 基調講演では、「迫る!新リース会計基準適用―実務に効く重要論点」と題し、公認会計士で、会計教育研修機構のシニアフェローを務める井上雅彦氏が登壇。

 井上氏は、借り手の立場から認識しておくべき新リース会計基準対応の重要課題として、「リースの識別」「リース期間」「簡便法と簡便的取扱い」「会税不一致」の4点を挙げ、とくに重要な項目として、「リースの識別」と「リース期間」について重点的に語った。

 リースの識別については、「まずは網羅的な洗い出し、次にリースか非リースかの識別、2段階での対応が必要です」と説明。さらに識別における実務については、勘定項目からアプローチする方法と調査票を活用する方法を紹介し、識別判断の流れについてフローチャートを用いて解説した。

 続いて井上氏はリース期間について、「これまでは解約不能期間がリース期間とイコールでしたが、新リース会計基準では延長や解約といったオプションも反映した期間を見積もる必要があります。オプションによっては当初計上した資産や負債が変化し、P/L(損益計算書)にも影響が出るため、事後的な見直しや変更もあり得ます」と難しさを指摘した上で、「これに対応するには、契約状況をタイムリーにモニターできる仕組み作りが必要になります」と語る。

 少なくとも重要なリース取引におけるリース期間をどう見積もるかについて井上氏は、「経済的インセンティブの考慮」「シナリオ分析」「『合理的に確実』の判断」の3つのステップを挙げる。さらに井上氏は、その流れについて、「延長や解約で生じるコストをはじめとする経済的インセンティブ要因を明確にし、様々な要因をベースにどのようなことが起こり得るかをシナリオとして分析した上で、『合理的に確実』かどうかの判断をします」と説明。

 井上氏によると、この「合理的に確実」というのは、一定程度蓋然性が高いことを示す物差しだ。また、ここで井上氏が挙げたシナリオは、リース期間の判断や事後の契約見直し、検証など、あらゆるフェーズや監査においても必要となるため、「文書化しておくことが重要です」と井上氏は言う。

 最後に井上氏は、新リース会計基準が借り手経営に及ぼす影響についても触れ、「オペレーティング・リースがオンバランス化することで明示的な投資管理の対象となり、経営戦略や企業価値にも影響を及ぼすことになります。そのため、これまで以上に資産効率や投資効果を意識した経営が必要になります」と語った。

特別講演:

川口宏之公認会計士事務所
隠れリース検出の仕組みを構築

川口宏之公認会計士事務所 公認会計士 川口 宏之氏
川口宏之公認会計士事務所
公認会計士
川口 宏之
 特別講演では、公認会計士の川口宏之氏が登壇し、新しいリース会計基準における「隠れリース」の判定と対応の重要性について、「ご用心!『隠れリース』に潜む罠と、対応策とは」と題したプレゼンテーションを行った。

 川口氏は、リースの定義を「特定された資産を使用する権利を一定の期間にわたり、対価と交換に移転する契約または契約の一部」と確認した上で、「新リース会計基準では、これまでリースとされなかった取引がリースに該当する可能性があるため、隠れリースを洗い出す必要があります」と指摘。

 新リース会計基準では、契約書に「リース」「賃貸借」と明記されていなくても、契約実態として借り手が資産を支配していればリースに該当し、これまでオフバランス処理だった契約がオンバランス化される可能性がある。この可能性を見落としてしまった場合に発生するのが隠れリースだ。


 川口氏は、隠れリースが発覚した際のリスクについて、「例えば、監査法人からの指摘で発覚した場合、財務諸表の修正対応で決算発表が遅れるといったリスクもありますし、監査法人の意見不表明となると隠れリースがあるかどうかも確認できないため、市場からの信用にも悪影響が出かねません。また、隠れリースによって数値が大きく変わった場合、経営戦略の見直しにも発展する恐れがあります」と指摘する。

 続いて川口氏は、リース識別の事前の洗い出しについて解説。「洗い出しのステップは3つあります。ステップ1は資産の特定、ステップ2は経済的利益の有無、そしてステップ3が指図権の有無です」(川口氏)。このステップは順番が重要で、ステップ1から3にかけてリースに該当するかどうかを逐一確認していく必要があるという。とくにステップ3の指図権の有無の判定には困難が伴うことから、電力供給契約という具体的なケースを基に、隠れリースを避けるための洗い出しの手順を詳細に示した。

 講演の後半で川口氏は、新リース会計基準への対応準備についても語った。まずは契約書の管理状況を把握し、チェック方法の確認、社内ルールの整備、監査法人との合意形成といったポイントについて紹介。さらに、「今後、新たに契約を締結する際にも隠れリースを検出できるような仕組みを構築しておくことが必要です」と解説を加えた。

 川口氏は、「2027年4月の適用開始はすぐにやってきます」とした上で、このような大きなルール変更では、期限ギリギリになって外部コンサルティング会社に駆け込むケースが多発することも指摘。「直前ではコンサルティング会社も対応が難しい。早い段階で関係者を巻き込み、事前準備を進めることが重要です」と呼び掛けた。