先行事例研究3
日本総合研究所
DE&I経営とニューロダイバーシティ
~web3を活用した新たな社会モデルの取り組み~
株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門 コンサルタント
山名 景子氏

株式会社日本総合研究所
創発戦略センター/リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー
水嶋 輝元氏

日本総合研究所は、シンクタンクとして共生社会をどのように実現していけばいいか考え、そのアプローチとして企業の人事戦略におけるダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいる。さらには、ニューロダイバーシティ人材も含めた多様な人材を社会として受け入れていく取り組みも展開する。
山名氏
当社はシンクタンク・コンサルティング部門のパーパスとして「次世代起点でありたい未来をつくる。傾聴と対話で、多様な個をつなぎ、共にあらたな価値をつむいでいく」を掲げ、ありたい未来の一つとして、ニューロダイバースも含めた誰もが生きやすい共生社会、「自律協生社会」の実現を目指している。
当社が考えるDE&Iに配慮した共生社会へのアプローチのベースにあるのは、障害とは個人の特性でもたらされるものではなく、社会における制度や慣行、偏見といったバリアによって生まれるもの(=社会モデル)という考え方だ。このバリアを取り除き、職場や働き方を個人に合わせて柔軟に変えていける形を目指している。
自律協生社会を目指す中で、DE&Iを人事戦略として考えたとき、誰一人取り残さない社会をつくるために企業は何ができるのか、この問いにしっかり向き合っていくことが重要だ。
この自律協生社会を人事の観点で考えると、結果としてビジネス上の収益や評判といった成果につながることは期待しながらも、根本的な目的は誰もが働きやすい組織、活躍できる組織の実現に置くべきだと考える。
とはいえ、日本の雇用制度や人事制度は多様な人材を包括できる状態になっていない。厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査を見ても、精神障害・発達障害を持つ方の6割以上が非正規雇用であるのが現実であり、採用のプロセス以前に制度の部分が追いついていないことが分かる。そんな中でも先進的な企業では、特定の部署でのみ行っていた障害者雇用を全社に広げ、それに合わせてジョブマッチングを重視した制度に変えていくといった取り組みを行っている。
重要なのは、まず現状をしっかり把握し、課題を明確にしていくことと、個人に焦点を当てたアプローチになっているかの2点である。
水嶋氏
当社が市民参加型で取り組むweb3を活用した新しい社会モデルのプロジェクトを紹介する。「Good Job! Digital Factory」という、障害のある人もない人も誰もが参加できるデジタルコミュニティーの取り組みで、奈良の障害福祉事業所に当社が伴走する形で開始した。活動の背景には、障害者は8割がわずか4分類の職種に就職している実態と、多くの企業が障害者を雇用しない理由として適した業務がないことを挙げているという事実がある。
そこで検討したのが、自律分散的に新しい仕事をつくり出すことだ。運営主体である障害福祉事業所と共に「アートとデジタルの力で、障害のある人とともに、社会に新しい仕事・文化をつくる!」というミッションを制定。次世代型インターネット活用の考え方であるweb3における分散型やブロックチェーンの要素を活用し、仕事の創出にチャレンジしている。web3により今後柔軟な働き方が生まれ、時間や場所に縛られない非対面中心の自由な働き方が障害者にも訪れると考えた。
web3の考え方をベースに立ち上げた障害福祉NFTプロジェクトでは、障害者とボランティアがキャラクターを作り上げた。それぞれが顔や手、道具などを好きなように描き、それらをアーティストが描く服などと組み合わせる形でキャラクターが生まれる。
現在、このコミュニティーには約300人が参加し、障害がある人もない人も個性を発揮しながら、新しい仕事づくりを進めている。デジタルだけでなくボールペンやTシャツなどフィジカルなモノ作りも行われている。
障害者雇用の課題を真正面から取り上げるだけでは、人の持続的な巻き込みは難しい。「面白い」「好き」という共感のもとでコミュニティーやムーブメントを参加者全員で盛り上げることで、継続的な巻き込みも可能になる。産業界での雇用の取り組みと、社会の中での市民による自律分散的な取り組みを両輪で推進することで、相乗効果が生まれるのではないかと考える。

