日経ビジネスオンラインスペシャル

TOPICS2019.6.27

実力派ジャーナリストが新作時計を語りつくす!腕時計選びのキーワード「インフォーマルウォッチ」とは何か

クオーツ時計は新たなステージに

広田 実用性の向上といえば、今年、カルティエが「サントス デュモン」のクオーツモデルを出しましたね。しかもバッテリーが6年間も持つ。あとシチズンもクオーツで年差±1秒という「ザ・シチズン」を発表しました。あれも実用性を追求する方向性の一つだと思います。

安藤 しかもその高精度を、電波やGPSに頼らず自律的に達成しているのがすごいですよね。クオーツは完成したもの、と考えがちだけれど、実はまだまだ進化する余地があるぞと。シチズンは近年、クオーツの可能性の追求に対して、非常に挑戦的になっている気がします。

篠田 カシオの「オシアナス」も薄さ9.5㎜のケースを発表しましたよね。あれも、今までは技術を突き詰めるためにサイズ感を犠牲にするのは仕方がないと考えられていたけれど、その思想を変えてきた。GPSを取っ払い、スマートフォンと電波との連動だけに割り切ることで、使いやすいサイズになったわけです。技術が進化した結果、次に目指すべき新しい道が見えてきたんでしょうね。

広田 今までクオーツ時計は機械式との差別化のために多機能化ばかりに注力してきたけれど、両者の垣根はだんだんなくなってきたような気がするんですよ。結果としてベーシックなモデルも、ちゃんと作れば高く売れるんじゃないかと。

篠田 実際「ザ・シチズン」とかホワイトゴールドの無垢で、すごくきれいですよね。180万円という価格も、その価値に見合うものだと思いますし。

広田 性能だけでなく見た目や実用性もかなり高水準に達した感のある高級時計業界ですが、僕はここ数年の動きを見ていて、もう一つのトレンドを感じています。それは、多くのブランドが「インフォーマルウォッチ」に流れているということ。つまりスポーツウォッチではなく、ドレスウォッチでもビジネスウォッチでもない、絶妙な立ち位置の時計です。

安藤 確かにオーデマ・ピゲの「ロイヤル オーク」やパテック フィリップの「ノーチラス」は、その世界観に当てはまりますよね。近年の人気は、特にすごい。

広田 かつてはそれらを「ラグジュアリースポーツウォッチ」と定義したけど、あれもインフォーマルウォッチの先駆けだったのかなという気もしているんです。今、多くのブランドがその方向に進んでいると思う。ピアジェの「ポロ S」とかもそうだし、ウブロの「クラシックフュージョン」もそう。

篠田 それこそ究極系は、ヴァシュロンの「オーヴァーシーズ」じゃないですか? メタルとラバーのストラップが付いていて、替えられるわけですから。

安藤 なるほど、それらはある意味、1本あればあらゆるシーンで役立つ時計とも言えますよね。つまり、費用対効果の高い時計ということ。

篠田 その代わり、単価は高くなる。でも、だからこそ最近、特定モデルばかりに人気が集中するのかもしれない。

安藤 実際、その傾向は顕在化していると思います。常に品薄というモデルも少なくないし。

広田 結局、スマートフォンの普及で腕時計をする必然性がなくなり、機械式時計も完成された今、「カッコいい」とか「1本で足りる」とか、要するに時計の本来的な性能以外の要素で選ばれる可能性が高くなったということだと思います。

ビジネスパーソンに薦めたい4本

安藤 最後に、ビジネスパーソンにお薦めの時計をそれぞれ挙げてください。

広田 一つは今年新しくなったシャネル「J12」。これもインフォーマルウォッチの極みです。ビジネスでしてもいいし、200m防水だから泳いでもいい(笑)。本当によくできているんですよね。あとはモンブランの「1858ジオスフェール リミテッドエディション1858」。

安藤 ブロンズケースでグリーン文字盤のモデル。あれは確かにカッコいい。

広田 オタク心をくすぐる見た目だけれど、ちゃんと使える実用的なデュアルタイムウォッチに仕上げられている。両者のうまい接点を見いだした、今っぽい時計だなと思います。

篠田 僕は「ザ・シチズン」を挙げたい。年差±1秒まで突き詰めるなんて、機械式時計だけじゃなく、クオーツだって極めていけばすごいものになるぞという意志を感じます。あと、カルティエの「サントス デュモン」のクオーツ、それも小さい方のSMサイズ。インフォーマルを求める時代だからこそ、小さくて端正な時計を自分なりにどう遊んでいくのか。もちろんタキシードやスーツに着けてもいいし、デニムでもいい。いろいろと楽しめるんじゃないかと思います。

安藤 篠田さんのセレクト、どちらもクオーツというのが面白いですね。今日はありがとうございました。

Hirota's Recommendation

[左]シャネル J12 [右]モンブラン 1858ジオスフェール リミテッドエディション 1858

[左]シャネル J12
高精度と約70時間のロングパワーリザーブを実現した新ムーブメントを搭載。インデックスの書体など細部も改良した。自動巻き、セラミックケース 、径38mm、63万2500円

[右]モンブラン 1858ジオスフェール リミテッドエディション 1858
経年変化を楽しめるブロンズケース。北半球と南半球による24時間表示、9時位置に第2時間帯表示も備える。自動巻き、ブロンズケース、径42mm、71万円、世界数量限定1858本

広田雅将(Masayuki Hirota)
時計ジャーナリスト、時計専門誌『クロノス』日本版編集長。一般企業での勤務を経て、現職。共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞社)など。

Shinoda's Recommendation

[左]シチズン ザ・シチズン
昨年のバーゼルで発表された、年差±1秒のエコ・ドライブムーブメント「キャリバー 0100」を搭載した最新作。クオーツ、18KWGケース、径37.5㎜、180万円、世界数量限定100本、今秋発売予定

[右]カルティエ サントス デュモン
2針のシンプルなフェイスを持つ、新作クオーツ時計のSMサイズ。新開発のクオーツムーブメントで、約6年間という長寿命を実現。クオーツ、18KPG×SSケース、縦38×横27.5㎜、55万7500円

篠田哲生(Tetsuo Shinoda)
時計ジャーナリスト。講談社の雑誌『ホット ドッグ・プレス』を経て、フリーランスとして独立。著書に、『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)がある。

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