世界的なエネルギー需要は増大の一途をたどり、太陽電池をはじめとした再生可能エネルギーへの期待がますます高まっています。その基幹電源として期待されるメガソーラープラント(1MW以上の大規模太陽光発電)は世界各地で急激に増大。市場は欧州だけでなく、中国、米国、東南アジア、インドへと拡大しています。
国内でも再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が施行されてからこれまでに、メガソーラープラントの計画や建設ラッシュが続いてきました。より効率のよい太陽光発電用パワーコンディショナの需要拡大も加速する中、国内最大手となる東芝三菱電機産業システム株式会社(TMEIC)は市場をどう予測し、戦略を立てているのでしょうか。
海外市場の動向・戦略について産業第三システム事業部 環境・エネルギー事業第二統轄部 第三ユニット ユニットマネージャーの田中修司氏に、国内市場の動向・戦略について産業第三システム事業部 環境・エネルギー事業第二統轄部 第四ユニット ユニットマネージャーの小暮洋氏に話を伺いました。

――著しい成長で、主要な電力供給源となりつつある太陽光発電(PV)ですが、現在、世界ではどれくらいの電力が創出されているのでしょうか。
EPEA(European Photovoltaic Industry Association、2014年3月発表データ)よると、2012年の世界のPV導入量は約30GWでしたが、2013年は約37GWと更に拡大し、世界のPV累積導入容量は136.7GWに到達しました。この導入容量は、1 GWの発電容量を持つ石炭火力発電所または原子力発電所の約20基分の年間発電電力量に相当します。
――PVの世界市場の動向についてお聞かせください。
再生可能エネルギーによる電力を、電力会社が長期間決まった価格で買い取る制度(FIT制度)が各国で導入され、PV市場は強力に推し進められてきました。ここ数年は、これまで市場を牽引してきた欧州の市場が減退傾向にあり、中国やインドをはじめとする新興国、北米や日本などの導入が好調です。特に海外で元気がいいのは米国で、中国も昨年は8GW、今年は14GWの計画で大幅に伸びていくと予測されています。そして、技術力を含めて世界的に注目されているのは間違いなく日本だと言えます。
――市場を牽引していた欧州が減退傾向にあるのは何故なのでしょうか。
相次いで固定価格買取制度の買取価格が引き下げられたことや、補助金の削減などが主な原因です。欧州での設置は非常に下火になっており、欧州のデベロッパーやEPCは欧州以外の市場を求めて海外展開しているのが現状です。
――PV導入には、どんな国や地域が適しているのでしょうか?
広くて平らな土地が安く手に入る場所や、年間を通して日照時間が長く、温暖で降雨量が少ないところが適しています。ただし、いくら条件が揃っても、そこに送電線がなければ事業としては成立しません。送電線など電力会社の電力系統に接続しないものを一般的にオフグリッドと呼びますが、電力会社の系統に属さないものに関しては市場が非常に小さいので、ビジネスとしても小さいと言わざるを得ません。
また、タイなどの東南アジア各国も勢いがあり、1件1件のプラントはかなり大きい容量ですが、国のトータルで見た場合はさほど大きい市場ではないと感じています。MEA(アフリカ、中東)、中南米のチリなども注目はされていますが、まだ右肩上がりにぐっと盛り上がってきている、というところまでは来ていません。デベロッパーも、我々サプライヤーもまだ様子見という状態です。
――拡大が予想される中国や米国は、国土が広いため地域によってもPV設置のための条件が変わってくると思いますが、建設場所の偏りなども出てくるのでしょうか。
塩分を多く含む潮風の影響を避けるために海に近い地域を避ける、ということはあります。また、設置にあたっては先ほどお話しました送電線の問題も絡んできます。
一例をあげるとすると、中国の西側内陸部ではメガソーラー建設の話があるのですが、なかなか具体的には進みません。なぜならば、送電線の系統が弱いという問題がある上に、100MWあっても実際は半分しか売電できないなどの制約がでてくるからです。そのため、中国に関しては送電線もあり電力消費地が近い東側のプラント建設が盛んというのが実情です。
――グローバル規模でPVが拡大すれば、パワーコンディショナ(PCS)の需要もさらに増えていくと予測されます。TMEICの海外展開についてお聞かせください。
今後、更なる拡大が見込まれる中国、米国、インド。海外ならばこの3つが最大のターゲットとなります。さらに、短納期・低価格化をどの市場でも要求されますので、現地で生産するローカライゼーションは計画に盛り込んでいます。中国には既に現地法人があり、インドは2014年度中に立ち上げる予定です。更には、それぞれの国の規格に対応させること。ここまでが海外進出の前提条件です。
前提条件をクリアしたうえで、海外進出において重要視しているのは「差別化」です。我々はPCSだけで戦えるとは思っていません。モニタリングやプラント制御システムの技術と組み合わせて、いかにエンドユーザーに対してkWh(キロワットアワー)を多く取れるようなシステムを提案できるか、これに尽きると思います。PCSの効率だけの勝負は終焉になりつつある今、システム全体で高効率な発電を追求することに力を注いでいます。加えて、風力を含めた不安定な再生可能エネルギーの電源をいかに安定操業させるかが課題です。今はまだコストがかかるため、もう少し先だと思いますが、二次電池との組み合わせのニーズも出てくるはずですので、それに備えて素早く対応できるような準備をしていきたいと思っています。
――TMEICは2012年7月に国内で固定価格買い取り制度が始まる前から、海外でのメガソーラー建設の動向を見て、大型PCSの開発・製品化に着手していました。当時まだ日本では注目されていなかったPV事業を推進してきた理由や、今後の目標についてぜひお聞かせください。
もともと京都議定書を研究していたこともあり、地球温暖化や日本の資源問題に関しては個人的にも関心を持っていました。PV事業に関して提案したのは2008年です。再生可能エネルギー市場は必ず成長すると考え、地球規模でのエネルギー問題に貢献できると確信し、推進してきたというのが経緯です。最初に海外でPVビジネスの経験を積んだおかげで、国内でもそのナレッジやノウハウを活かすことができました。日本ではPV事業は初めてのお客様ばかりですから、「こうあるべき」「この機能が将来的に必要」という具体的な提案ができ、スタートダッシュでの差別化につながったのだと思います。
今後、TMEICとしてPVだけで終わるつもりはありません。太陽光発電などの再生可能エネルギーの発電コストが、通常の系統電力のコストと同等となることをグリッドパリティと言うのですが、日本国内での太陽光発電のコストは、おおよそ30円/kWh。グリッドパリティ達成にはあと一歩といった状況です。これから何段階かに分けてグリットパリティが達成されてコストダウンが進めば、再生可能エネルギーを含む分散電源や蓄電システムなど多様化が進みスマートグリット市場が本格的に立ち上がってくるはずです。
その時にTMEICがどうなるか、どういうビジネスを展開できるかが勝負だと思っています。イメージとしては5~10年後を見据えて、戦略を立て実行しています。ビジネスで一番大切なのは、連続的なイノベーション。新しいものを取り入れ、変わり続けなければ事業が止まってしまいます。これからも、ユーザーに対してどういう価値を提供するか、にこだわり続けていきたいと思っています。