ようこそ、九州・別府の超グローバル大学へ。立命館アジア太平洋大学 APU  近藤祐一入学部長に訊く九州・別府からの挑戦!世界のどこでも生き抜ける学生が育つ大学とは? 

「絶対無理!」を実現したAPUの教育法

立命館アジア太平洋大学 APUでは、学生の約50%が世界およそ80ヵ国からやってきた留学生である。教員も外国籍が50%。日本の大学界においては、圧倒的にグローバルな教育環境を実現している。

が、それゆえに、APUを知らない人は疑問に思うだろう。

いったいどうやって授業を行い、学生たちを育てているのか、と。

全国から集まった日本人と国連並みに多国籍な留学生とが入り交じるキャンパスで、大学としてのプログラムを遂行しているのだろうか、と。

留学生と日本人学生が一緒に学ぶのがAPUの授業の日常です。

入学式の翌日、2015年4月2日のキャンパス風景。
日本人学生も留学生も、新入生が皆オリエンテーションに参加して、APUでの生活が始まる。

そんな疑問に答えてくれるのが、入学部長の近藤祐一教授だ。

「留学生の受け入れから、教育カリキュラムの構築、さらには大学教員の教育能力を高めるためのファカルティ・ディベロップメントの計画から実施まで、APUの教育全般に関わっています」

近藤さんがAPUに赴任したのは2006年。それまでは愛知県の大学で新学部の創設の仕事に携わっていた。2000年にAPUが開学した当時、近藤さんは、どう見ていたのか?

「いやあ、絶対失敗するだろうな、と思っていました」

いきなり留学生が50%の大学なんて、絶対に無理!?

なぜ?

「私自身、前の大学で国際教育を研究対象としていたので、大学を国際化することについては当事者だったんです。逆にいうと、日本の大学の国際化はだいたいどのレベルが限界か、という"目安"が頭のなかにありました。留学生の比率や英語授業の比率などに関してですね。で、APUはその"目安"からすると、むちゃくちゃ無理をしていると思ったからです。常識はずれだ、突飛すぎるぞ、と」

APUのどこが常識はずれで、どこが突飛な発想、というのだろう?

「開校と同時にいきなり全学生の50%を海外からの留学生としたこと、です。それまでの日本の大学では、国際化が進んでいる学校や学部でも、海外からの留学生の比率は、当時でせいぜい10%です。留学生の比率が50%ともなると、今までの日本の大学教育の常識が一切通用しなくなります」

世界中の国からやってきたAPUの留学生たちにとって、どの国から来ようとも「英語ができること」は入学時の必須条件だ。その一方で、日本語ができるかどうかは問われない。実際、2000年の開学時はもちろん現在にいたるまで、APUの留学生の大半は、入学時にほとんど日本語ができない。

では、彼ら彼女らはどうやって授業を受ければいいのか?

ご存知の通り、日本の大学は、トップ校にいたるまで、授業のほとんどが日本語で行われる。教科書も補助教材も大半が日本語版だ。

初年次教育の一つ、「FIRST」とよばれる海外学習プログラムの授業風景。指導しているのは、近藤先生。
日本人も留学生も、APUの新入生は初年次教育のなかで、
多国籍な環境での過ごし方、教員との接し方、そして自らの学習目標を見つける。

そこでAPUでは、半数を占める留学生の存在を念頭におき、もちろん半数の日本人学生のことも考えながら、英語と日本語で、オリジナルの教育システム、教育プログラム、テキスト、そして教員のラインナップを用意することにした。

もちろん、すべてゼロからの設計である。お手本がどこにもないのだから。

と、考えると、開学当時のAPUを見て、「失敗するだろうな」と感じた前の大学に在籍していた頃の近藤さんの思いは、多くの大学関係者の共通認識だったというのもうなずける。

ところが、それから数年……。

APUは失敗するどころか、学生の数を順調に増やし、進学先としての人気もあげていった。マルチリンガルで独立心あふれる学生たちが採用できるとあって、企業からの採用ニーズも高まるばかりだ。

近藤さんは振り返る。

「APUはまるで"国際教育の実験場"であり、ある種、教育のベンチャーでもありました。国際学生の比率が50%。教員の外国人比率も50%。学生の出身国は50ヵ国以上――――。こんなむちゃくちゃな目標を掲げ、いきなり実行し、なんとか軌道に乗せているわけですから」

これは面白いぞ、そう思った近藤さんは、2006年にAPUに移り、国際教育カリキュラムの構築を担うことになった。

はじめて訪れたAPUの印象は、というと、「関西弁で言うところの"けったいな"大学、ですね」と笑う。

「とにかく意思決定が速いんです。これまでの大学がせいぜい『急行』くらいだとすると、それが『超特急の新幹線』になったくらいけた違いにスピード感がある。私はAPUにきて1年目で、新規の教育プログラムを2つ実施したのですが、通常の大学だったら3年経っても動いてなかったかもしれません。このスピード感は、教職員が新しいことに物怖じしないからこそ、実現できているのだと思います」