デジタルガバメントが実現する豊かな未来

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Vol.3 行政サービスを
リデザイン
「豊かさ」を実感できる
社会を実現する

様々な環境課題や社会課題に直面している今は、時代の変曲点にあるといえる。そんな時代に人々が幸せに暮らす未来を考えたとき、大切になるのが「心の豊かさ」だ。そして、人々が「豊かさ」を感じるには、国のサービスをデジタルでリデザインし、個人のニーズに即して課題を解決できるものに変えていくことが重要になる。では、富士通はデジタルガバメントの実現に向け、どう支えていくのか。行政システムのデジタル化を支える富士通の執行役員常務でJapanリージョン副部門長(公共・社会インフラ担当)の林恒雄氏に聞いた。

林 恒雄

 

富士通
執行役員常務
Japanリージョン副部門長
(公共・社会インフラ担当)

「豊かさ」を実感できる行政サービスが重要に

――世界は今、様々な課題に直面し、先行きが見えなくなっています。日本の現状をどう見ていますか。

 まずはじめに、私たち富士通は、ウクライナの状況を深く憂慮しています。影響を受けた多くの方々に心を寄せ、一刻も早く困難な状況が解決され、平和な日常が戻ることを心から願っています。

 現在は地球規模の気候変動に代表される環境問題や、少子高齢化の進展、新しい働き方の追求、そして新型コロナウイルスのパンデミックなど様々な課題が重層的に起きており、まさに時代の変曲点にあります。そうした時代だからこそ、「豊かさ」を実感しながら日々幸せに暮らしていくことが一層大切になります。

 ところが、日本の人々が感じている幸福度は、世界的に見ると高くありません。国連による「世界幸福度ランキング」(2021年度版)では、日本は56位とかなり低い順位にあります。この調査で1位はフィンランド、2位はデンマークですが、フィンランドの駐日大使はその理由を、教育や医療といった行政サービスのデジタル化のレベルが高く、国民が安心して生活できるからだと語っています。このデジタルというキーワードに関しても、実は日本は2021年版の「世界デジタル競争力ランキング」で28位と低く、課題は山積みだといえます。

――幸せに暮らす未来を考えたとき、重要になるものは何でしょうか。

 未来に思いを馳せると、幸せに暮らすには「豊かさ」が重要です。では「豊かさ」とはどういうことでしょう。幸福学がご専門の慶應義塾大学大学院・前野隆司教授ともお話しさせていただいたのですが、「主体性」、すなわちやりがいを持って自己決定できる喜びと、「利他性」、すなわち他の人々とのつながりから生まれる幸福感によってもたらされるものだと私は考えています。つまり、選択できることと、つながりを軸に他者への貢献を行うことが、心の豊かさ=幸福を感じるには必要だということです。

 一方、豊かさを幸福度の視点から考えてみると、コロナ禍で人と直接触れ合い、話す機会がなくなったことで、心の深いつながりが減り、幸福度が下がってきているという調査があります。豊かさを感じ、幸せを実感するには、やはり人間的なつながりが必須ということでしょう。

 そして、国民が「豊かさ」を感じる暮らしを実現するためには、国のサービスをデジタルでリデザインし、個人のニーズに即して課題を解決できるものに変えていくことが重要です。2021年9月に設置されたデジタル庁では、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」というミッションを打ち出し、取り組みを始めています。

「取りに行く」サービスから、個人に合った情報を「届ける」サービスへ

――誰一人取り残されない行政サービスを実現するには、どのような課題がありますか。

 これまでの行政サービスは、行政が一気通貫で画一的に提供してきました。しかしそもそも人が豊かさや幸せをどう感じるかはそれぞれの価値観によって様々ですし、今は多様化・複雑化も進んでいます。人々の心の豊かさを高めるには、個人個人に合ったサービスを提供していかなければなりません。

 個人個人に合ったサービスを提供するには官と民がしっかり連携することが不可欠であり、“官・民・個”の三位一体で従来の「公的サービス(Public Service)」を新たに「共的サービス(Common Service)」へとリデザインする必要があります。具体的には、国民が「取りに行く」サービスから、個人個人に合った情報を「届ける」サービスへとスタイルを変えなければなりません。

 まずは、多様な選択肢から個人にパーソナライズされた情報をプッシュ型で発信し、個人のライフスタイルに合った情報を選べるようにします。さらに何らかの手続きを行う際は1カ所で、しかも1度だけ行えば済むようにする。その結果、使い勝手の良い行政サービスが現実のものとなり、これまでのように国民が複数の行政組織へ情報を「取りに行く」サービスから、個人個人に合った情報を国民に対して「届ける」スタイルのサービスへと変わっていくと考えています。

国民が「取りに行く」サービスから「届ける」サービスへ
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――「届ける」サービスを実現するためには、他にどういった取り組みが必要になると考えていますか。

 デジタル庁のミッションにもある通り、あらゆる人がデジタル化の恩恵を享受できるように環境を整備する必要があります。そのためには、国民が社会生活で抱えている個人では解決できない課題を捉え、その解決につながる行政サービスをデザイン思考(※)の考え方で開発・提供することが求められるでしょう。さらには、利用者中心(人間中心)のサービスデザインの確立、サービスの利便性の向上なども必要になります。

(※)デザイン思考とは、すでに見えているニーズだけでなく、まだ言語化されていないニーズもつかみ、その先を見通したアイデアを創出して、試行と改善を繰り返しながら完成させていく思考法

先進のデジタル技術でデジタルツインを実現

――富士通はデジタルにおける強みを生かし、どのようにして新しいサービスの実現を支えていくのでしょうか。

 私たちが目指しているのは、オープンデータや個人が持っている大量のデータを活用して、都市や人の流れをデジタルツイン上に写像することです。デジタルツインを実現するためには、大量のデータ処理や、シミュレーションを効率的に行うためのハイパフォーマンスコンピューティング技術などが必要になります。また、複雑な社会課題の解決に寄与する最先端デジタルテクノロジーと人文社会科学などの知見を融合させる新たな技術(コンバージング技術)も重要になります。富士通はこの2つの技術に大きな強みを持っています。

 さらに、デジタルツイン上にデータが集まり、活用されるようになるには、個人だけでなく参加する関係者の全てが心理的な不安や抵抗を感じることなく、データの提供や流通を行うことができるセキュアな環境が必要です。そのような分野横断的なデータ連携基盤の前提となる重要な要素が「トラスト」、すなわち信頼です。そして、この基盤上で、役所や企業、個人が保有するデータが分野横断で有機的につながり、それをオープンに相互活用することで価値創造と社会課題解決につなげられる世界を目指しています。富士通はトラスト技術にも強みを持っており、データの真正性の保証と安全な流通に寄与する技術を提供できます。

 こうしたデジタルテクノロジーを活用したデジタルガバメントの取り組みを、富士通ならではのデザイン思考のアプローチで推進していきます。

健康・医療・介護、インフラ、防災、モビリティ、スマートシティに注力

――政府の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では準公共分野のデジタル化の重要性についても言及しています。

 富士通は準公共分野で豊富な実績を持ち、今は「健康・医療・介護」「インフラ」「防災」「モビリティ」、そして「スマートシティ」に注力しています。

 「健康・医療・介護」では、個人のデータを病気の予防や適切な治療に活用する取り組み、最新デジタル技術を応用するライフサイエンスイノベーションの取り組みなどを行っています。「インフラ」「防災」では、バーチャル空間でのシミュレーションや行政・民間の連携により、強靭な社会インフラを作り上げる施策を進めています。また「モビリティ」では、自動車や道路のリアルタイムデータを基に物流、道路管理などに役立つサービスを提供しています。そして、これらの取り組みの成果を融合し、総合的に活用することで「スマートシティ」の実現にも挑戦しています。

――最後に、現状を踏まえ、今後目指していく姿を教えてください。

 これまでのところ、利便性の向上、ひいては「豊かさ」を実感できる社会の実現に、富士通が十分に貢献できているとは思っていません。今後は行政サービスのリデザインによる共的サービスの意義を社会に広め、豊かな未来の実現に向けて主導的役割を果たしていきます。富士通は、先に述べた“官・民・個”の「民」のひとつとして、少しでも多くの国民に、少しでも早く、豊かさを実感いただけるような取り組みを進めたいと思っています。「民」によるそのような取り組みの積み重ねが、最終的には誰一人取り残されない、豊かな社会の実現につながるものと信じています。

 ただし、この未来像を現実のものとするには、富士通だけの力では不十分です。同じ志を抱き、同じ「北極星」に向かって取り組める仲間と一緒になって取り組んでいきたいと考えています。

人の生活を起点としたデジタル・ガバメント
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