デジタルガバメントが実現する豊かな未来

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Vol.6 豊かでサステナブルな社会に向けて
「Fujitsu Uvance」の挑戦

人々の満足感を掛け算で最大化することが社会の豊かさにつながる――。富士通の執行役員SEVP JapanリージョンCEOの堤浩幸氏はこう話す。こうした社会を実現する上で、富士通が今、注力するのは、ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューション「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」である。Fujitsu Uvanceは、豊かでサステナブルの社会を目指し、2030年からバックキャストして7つのキーフォーカスエリア(重点注力分野)を定めたという。日本社会の課題と可能性、Fujitsu Uvanceが目指す姿、そして富士通はどう具現化していこうとしているのか。日経BP 総合研究所フェローの桔梗原富夫が堤氏に聞いた。

堤 浩幸

富士通 執行役員
SEVP JapanリージョンCEO

きっかけを与えれば、日本の持つポテンシャルを引き出せる

――富士通はデジタルガバメントへの取り組みにおいて、大切にする価値観として「豊かさ」を掲げています。まず、富士通の考える豊かさとは、どのようなものでしょうか。

 一人ひとりが高い満足感を持って生きることです。そのために、デジタルにできることは多い。私たちの役割も大きいと思います。富士通はデジタル化、DXを支援していますが、その中心には「人」がいます。デジタルを活用して、ヒューマンセントリックな社会づくりに貢献したい。それが、豊かで個人が輝く社会へと通じる道だと考えています。

 個人の満足感を集めたものが社会の豊かさだとすれば、集め方が足し算か掛け算かで結果は異なります。社会を構成する人々の満足感がすべて1なら、足し算の結果は人数と同じ。掛け算なら結果は1です。ところが、満足感が1.1に上がればどうでしょう。人数が多くなれば、掛け算の結果はとてつもない大きさになります。私たちはデジタルをオープンかつ、フェアに活用することで、社会に掛け算の効果をもたらすことができると考えています。

 その際、注意すべきことがあります。仮に誰か1人でも満足感が0なら、掛け算の結果は0になってしまう。これでは豊かな社会とはいえません。満足感0の人をなくすには、何をすべきかを、私たちは真剣に考えなければなりません。

 また、今日は満足している人も、明日には不満足になるかもしれません。明日も今日と同じように満足してもらいたいし、できれば少しでも満足度を高めてもらいたい。富士通がサステナビリティを重視する背景には、このような願いがあります。DXを推進することで、SX(Sustainability Transformation)も加速すると私たちは考えています。

――先行きの不透明感が増すなかで、日本社会に対する悲観的な見方が強まっているように感じます。足もとの円安も、その表れかもしれません。

 確かに、為替レートは日本に対する期待値を反映する1つの側面と言えるでしょう。しかし、それが全てではありません。私自身は、日本のポテンシャルは非常に大きいと考えています。ただ、ポテンシャルを生かし切れていないようにも感じます。単発でよいものができても、それを使って最大限の効果を引き出そうという発想が薄いのかもしれません。素晴らしいアイデアに汎用性を持たせて世界に展開する、あるいは、それを応用して別の領域に適用するという努力がやや足りないように思います。

 しかし、高いポテンシャルを持つ集団に、何らかのきっかけを与えれば爆発的に伸びる可能性がある。そのきっかけになり得るのが、他社(他者)との交流や協業です。とりわけ地域活性化などの社会課題に向き合うことを考えれば、富士通を含めて、これからは1社だけで解決策を提示できるような時代ではありません。パートナーやユーザー、社会など関係者すべてがWin-Winになれるようなエコシステムをいかに構築するかが問われています。

堤 浩幸氏

満足感を掛け算で最大化することが
社会の豊かさにつながる

2030年からのバックキャストで生まれた「Fujitsu Uvance」の7つのエリア

――コロナ禍は日本社会に大きなダメージを与えましたが、見方を変えるとポテンシャルを引き出すきっかけになるかもしれません。

 確かに、私たちはコロナ禍によって、働き方を含めて様々な変化を経験しました。それは、ものごとを大きく変えるきっかけにもなります。よく言われることですが、何もしないリスクは何かにチャレンジするリスクよりもはるかに大きい。富士通もそう考えて、自身のDXをはじめ様々なチャレンジを加速しています。

――富士通が2021年10月に打ち出した「Fujitsu Uvance」もそうしたチャレンジの1つとして位置づけられるのでしょうか。

 その通りです。富士通は「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスを定めていますが、これを実現するために、ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューションが「Fujitsu Uvance」です。2030年の社会を想定し、バックキャストで「いま何をすべきか」を考えて策定されました。Fujitsu Uvanceは「あらゆる(Universal)ものを、サステナブルな方向に前進(Advance)させる」という意味を持たせており、「ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューション」であると定義しています。新しい時代に向き合う富士通の事業ソリューションですが、ビジネスモデルという言い方もできるかもしれません。

 未来からのバックキャストで考えれば、その途上に多くのギャップがあることに気づきます。そのギャップを分析し、乗り越えるための解決策を模索する中で新たなアイデアやソリューションが生まれるでしょう。分析や解決の手段としては、AIや様々なデジタル技術を有効に活用することができる。こうして生まれたソリューションの中には、グローバルに展開できるものもあるはずです。

社会課題に挑むソリューション Fujitsu Uvance
Vertical Areas、Horizontal Areas、Key Technology
[クリックすると拡大表示されます]

――具体的には、どのような分野でFujitsu Uvanceを展開しているのでしょうか。

 Fujitsu Uvanceには、社会課題を解決するクロスインダストリーの4分野(Vertical Areas)と、それらを支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal Areas)の7つのキーフォーカスエリアがあります。Vertical Areasは「Sustainable Manufacturing」「Consumer Experience」「Healthy Living」「Trusted Society」、Horizontal Areasは「Digital Shifts」「Business Applications」「Hybrid IT」です。こうした分野を中心に、現場の皆さんやパートナーとともに新たな価値をつくりたい。その活動を下支えするのがデジタルの力です。私たちはコンピューティングとネットワーク、AI、データ&セキュリティ、コンバージング技術という5つのキーテクノロジーに注力しています。

Fujitsu Uvanceの全体像
サステナブルな世界を実現する7 Key Focus Areas、5 Key Technology
[クリックすると拡大表示されます]

官民がつながって生まれる新たなエコシステムの可能性

――Fujitsu Uvanceの方向性を示す、具体的な事例などがあれば教えてください。

 この9月に発表したばかりですが、ウェルビーイング社会の実現に向けた東北大学との戦略提携が分かりやすいでしょう。最初に取り組むのはヘルスケア領域です。医療データをもとに発症や重症化などを予測するAIモデルを共同開発するほか、患者への最適な医療提供を目指すデジタルツインの構築など共同研究のテーマは様々です。患者さんのデータを扱うので高度なセキュリティが求められますし、アナリティクスやAIなどにおいても最先端の技術が活用され、世界をリードするような研究が行われることでしょう。

 ヘルスケア領域は第1ステップであり、今後は全学的な教育・研究をデジタルでサポートする予定です。さらに、社会における大学の役割として、社会との共創も視野に入っています。私たちは東北大学におけるデジタルユニバーシティへの挑戦に伴走し、全力でサポートしていく考えです。Fujitsu Uvanceの考え方やフォーカスエリアと、東北大学の目指す将来像がうまく合致した結果、今回の戦略提携につながったのだと思います。

――東北大学との戦略提携による成果を楽しみにしています。大学も公共的な存在ですが、次に政府や自治体との関係についてお聞きします。デジタルガバメントは、Trusted Societyと重なり合う部分が大きいように見えます。ガバメント向けとしては、どのような施策を考えているのでしょうか。

 中央省庁、各自治体と連携しながら、すでに様々な取り組みを進めています。現地をつぶさに見て課題を洗い出し、解決アプローチを地元の方々と一緒に考える。こうして、ソリューションやサービスメニューを開発しています。

 自治体ごとに別の仕組みを用意するのではなく、標準的な大きな枠組みの中で共通サービスを利用できるようにする。その一方で、自治体ごとの個別ニーズに対応するためのメニューもそろえる必要があります。つまり、共通のスタンダードと自由度の高い個別サービス、その両方を提供するエコシステムづくりが重要です。パートナーの皆さんと一緒に、こうした方向を目指したいと考えています。

 また、エコシステムにおいては、住民などのユーザーはもちろん、自治体や官庁の職員などがストレスなく活用できる環境が重要になります。使い勝手は生産性にも影響しますから。具体例を紹介すると、富士通と富士通Japanは岡山県吉備中央町の「吉備高原都市スーパーシティ構想」に参画しています。国家戦略特区諮問会議において、同町は「国家戦略特別区域(デジタル田園健康特区)」として指定されました。私たちとしては、ヘルスケア領域を中心にできる限りの貢献をしたいと考えています。

――Fujitsu Uvance のHealthy LivingとTrusted Societyは密接に関係しそうですね。

 その2つのフォーカスエリアだけではありません。7つのエリアは、やがてはすべてがつながるでしょう。人々の利便性や豊かさを実現するためには、つながなければならないと思っています。東北大学との戦略提携においても、フォーカスエリア間の横断的なつながりは強く意識しています。

 「つながる」は、Fujitsu Uvance の大きなポイントです。つながるためには、スタンダードが重要です。Trusted SocietyとHealthy Living、それぞれのサービスメニューがつながり、地域住民の安全・安心とヘルスケアをサポートする。そうしたエコシステムを実現するためには、企業と企業がつながる必要があるでしょう。

 そのためにも、エコシステムに参加するパートナーを含めて、オープン、スタンダードといった方向性を共有することが重要です。それが日本全体でつながり、まとまれば、グローバルスタンダードへの道が開ける可能性もあると考えています。

 冒頭、日本のポテンシャルは大きいと言いました。災害や高齢化など様々な社会課題に向き合ってきた日本社会が、その経験からノウハウを抽出してソリューション化すれば、海外でも通用するものは多いと思います。

カギを握るのは人材、DX推進と人材育成を両輪で進める

――富士通はIT企業からDX企業になると宣言しています。そのためには人材がカギを握っていると思います。

 私たちはDX企業への変革と人材開発/育成はクルマの両輪だと考えています。そこで、ジョブ型人事制度やポスティング制度を導入しました。また、私もその1人ですが、社外の人材登用も積極的に進めており、組織の多様性を高めようとしています。特に、DX人材の育成は重要です。コンサルティング能力を強化しつつ、お客さまやマーケットへの理解をさらに深める必要があるでしょう。同時に、AIなどの専門人材の育成も進めています。

 人材育成は当社だけでなく、あらゆる組織、社会全体にとっての課題です。その意味では、私たちが社内で経験したこと、得られた知見を生かせる場は少なくありません。例えば、デジタルで学習効果を高めるといった提案だけでなく、全国の自治体と一緒に新しい学びの機会をつくりたいと思っています。

堤 浩幸氏

「Fujitsu Uvanceに解決策がある」と
思ってもらえるようにしたい

――新しい時代の教育においても、エコシステムづくりが重要になりそうですね。

 教育を含め、あらゆる分野で言えることだと思います。官庁や自治体などの行政機関、民間企業などの関係者がそれぞれWin-Winとなるエコシステムをいかに構想し構築するか。こうした取り組みを、Fujitsu Uvance のもとで推進します。政府や自治体、企業のみなさんに何か困ったことがあれば、「Fujitsu Uvanceに解決策があるのではないか」と思ってもらえるようにしたいですね。

富士通が考える
デジタルガバメントのあり方

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