個別の業務改善を目的として、組織ごとに最適なSaaS(Software as a Service)などのサービスを導入するケースが増えている。だが、全社のデータ連携には至らず、それぞれのデータが孤立するケースも少なくない。こうした問題を解決するのが、簡単 な操作でデータ統合を実現できるクラウドサービス「iPaaS(Integration Platform as a Service)」だ。ユーザー評価の高いiPaaSを提供しているBoomi日本法人の中川 和芳氏が、データ統合の検討ポイントやそのサービスを語った。
2000年に米国で創業し、分散したデータを統合するためのiPaaSを24年前から提供しているBoomi。エンジニア以外の社員でも容易かつ迅速にデータ統合できるツールを提供する。iPaaSのカテゴリーにおいては、第三者の評価機関から10年以上にわたって高い評価を受け続けており、データ統合環境の一元化に悩む企業から注目を集めている。
Boomi Japan
チーフテクノロジーオフィサー
中川 和芳 氏
個別データにアクセスできない「データの迷路」

社内でデータが分散し孤立した状態だと、どのような弊害があるのか。中川氏は「データの迷路」と、こうした状態を表現する。
例えば、人事や営業、マーケティングなど異なる部署でそれぞれ異なるサービスを利用してきた企業が、全社的なデータ分析に取り組むことになったとしよう。この場合「すぐには利用したいデータにアクセスできず、データ抽出にコストがかかって分析が困難になり、業務効率化や生産性向上の機会を逃す場合があります」と中川氏は指摘する。
こうしたデータの迷路を解消するには、まず社内で利用しているサービスのデータを統合することで“どうなりたいか”という目標を定める。「初めから厳密に定めなくてもいいが、ゴールを設定しないと動けない。目標を定めることが一番重要です」と中川氏は強調する。
その次の段階として、社内外の関係者を巻き込み、彼らが持つデータの提供に合意してもらうなど、協力体制を整える。これにより、ビジネスプロセスの確認やITインフラの評価など、各部署の現状を全社的に把握する作業に取り組める。
現状把握ができたらデータ統合の作業となるが、一度にすべてのデータを統合するのは難易度が高い。フェーズを分ける形で計画を立て、ステップバイステップで進めるのが望ましい。そして、データガバナンスの社内体制やデータ漏洩のセキュリティ対策など、統合されたデータの運用環境を整える。「ツールの評価や選択は、開発や運用保守などの方向性が定まった後に行うのが賢明です」(中川氏)。
各フェーズの統合されたデータを検証し、問題がなければ次のフェーズへ移っていく。
BoomiのiPaaSで最適な既存設定を活用

このようなデータ統合を支援すべく提供されているのが、iPaaSと呼ばれるクラウドサービスだ。クラウド間だけでなく、クラウドとオンプレミス、個別部署内のシステム、外部のパートナー企業、ユーザーなど多様なデータを統合できる。定型的なデータ連携・変換などは、設定したスケジュールやイベント発生に応じて自動的に処理が可能だ。iPaaSの利用によって、統合されたデータによる容易な分析が各部署で可能になり、データベースのメンテナンスやガバナンスも効率的になる。
BoomiはこのiPaaSを「Boomi AtomSphere Platform」という名称で提供し、データ統合を効率よく進めるための機能を多く盛り込んでいる。注目したいのは、生成AIによって統合したいデータの内容に最適な設定の提案を行う機能だ。そのほかにも、社内で既に作成されたプロセス(部品)の共有や、Boomiが用意した主要なサービス向けの一般的なプロセス(レシピ)、機械学習によってデータマッピングの提案を行う機能などを提供している。
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データ漏洩を防ぐセキュリティ機能にも特徴がある。データ統合の自動化プロセスの作成を終えた後は、日々のデータ統合処理を運用しなければならないが、「Atom」という実行環境は、クラウド上や社内のオンプレミス環境など、あらゆるシステム拠点に配置できる。「Atomの柔軟性はデータ連携基盤のあらゆる要件を満たします。加えて、Atomが処理するユーザーデータはクラウド側に決して保存されません。この柔軟性と機密性を備えているのはBoomiの特徴です」(中川氏)。
さらに、「海外ではホットな話題」(中川氏)でBoomiの特徴となっているのが、社内の各部署が行うデータ統合を全社的に管理するガバナンスのための機能だ。データ統合の開発をIT部門だけに委ねるのは非効率と考え、各部署で開発業務を行う体制に移行する企業が増えている。Boomiならば、IT部門以外の人でも、ドラッグ&ドロップの直感的な操作でデータ連携のプロセスを開発できる。また、すべてを自分で作るのではなく、例えばIT部門が作った部品を再利用して組み上げることもできる。さらに今後は、生成AIの強力な支援により、利用したいデータを誰もが活用できるようになる。
ただし、全社員が自由にやりたいことを実行する状況では、システムやセキュリティなどに関するトラブルを引き起こす恐れがある。このためBoomiでは、各部署にデータ統合の自主性を与えながら、開発や運用のルールを策定し、全社的なガバナンスを管理する機能を提供している。
データを分析し顧客を満足させるツール開発につなげる

最後に中川氏はBoomiを使い顧客データの統合・分析に取り組み、顧客満足度を大きく向上させた通信会社の事例を紹介した。
この通信会社のインターネット接続サービスが不通になるトラブルが生じた際に、顧客で故障の原因を突き止めるのが困難で、カスタマーサポートの電話もつながりにくいという問題があった。そこで、顧客と同社サポートチームが求めているものを検討し、通信トラブルの原因を自身でも確認できる顧客向けツールを提供した。具体的には、顧客の通信機器や途中の経路にある機器の状態をリアルタイムのデータから判断できる機能を提供し、顧客がサポートに問い合わせなくても、発生した問題を的確に確認できるようにした。この結果、顧客満足度は向上し、電話の問い合わせも大きく削減できたという。
iPaaSの市場は、クラウドサービスの利用拡大とそれに伴うデータ統合の需要とともに増加傾向が続いている。「社内で導入済みのツールを安易に使い続けるのではなく、データ連携の開発、運用、保守、拡張性など、多方面から比較検討して選ぶことをお勧めします」(中川氏)。

