データ分析から得られた知見や主張を外部に伝える最も一般的な手法は、Microsoft PowerPointを使ったプレゼンテーションだろう。データを可視化したグラフをスライドに表示し、現状の分析や将来の予測について説得力を持つ形で伝える。こうしたプレゼンを得意とする外資系コンサルタントの多くが愛用しているのが、データによるストーリーを簡単に増強させるPowerPointの拡張ツール「think-cell」だ。そのツールを開発・提供しているthink-cell日本法人の松塚 展国氏がビジネスプレゼンテーションにおけるデータ加工のポイントを語った。
2002年にドイツで創業し、PowerPointのプレゼンテーション用データ可視化支援ツールを20年以上提供してきたthink-cell。データ加工したグラフをスライドで表示するだけでなく、そこに意味づけを加えて、一瞬でデータの価値が伝わる形に変身させる。これを『データの言語化』と表現し、簡単かつスピーディーに使えるツールの提供を通じて、企業によるデータ活用のコストパフォーマンスを向上させる。“人に伝える”というデータ活用の最後の局面を支えるのがthink-cellだ。
think-cell Japan
代表取締役社長
松塚 展国 氏
データ駆動型組織の成功のカギを握る専門家以外の社員

データ活用に優れる企業を表す言葉として、米調査会社のフォレスター・リサーチは“データ駆動型組織”を定義している。
「データ駆動型組織は4階層に分けられ、一番下からデータを集めて整える基盤層、データ分析を手掛ける層、データに基づく議論を交わす文化を持つ層、データに基づいて意思決定する層とわたしなりに解釈しています」(松塚氏)。
基盤層と分析層には、ITエンジニアやデータサイエンティストなどの専門家が担当するケースが多い。だが「上位の文化層や意思決定層には専門家ではない社員も多く含まれ、この層がホワイトカラー労働人口の96%を占めています。文化層・意思決定層の働きがデータ駆動型組織の成否を左右するのではないでしょうか」(松塚氏)という。この層をデータ活用人材に変身させるカギとなるテクニックが『データの言語化』だ。
『データの言語化』が意思決定を引き出す

データの言語化により、データの分かりやすさを向上させた具体的な例を見てみよう。
日本の広告市場推移について、PowerPointのスライドを使って説明する状況を想定する。メディアの種別ごとに十数年間の広告費をまとめた表を示したとしても、数字を羅列しただけの状態では各メディアの増減の傾向を理解しづらい。
では、メディア種別ごとに色分けして、1年ごとに広告費を積み重ねた棒グラフにしてみるとどうだろう。広告市場全体に占める各メディアの広告費の増減は可視化できても、凡例を見てグラフの色とメディア種別を照合する手間がかかり、瞬間的にはデータの意味が伝わりづらい。解釈も聞き手によって様々となりそうだ。
そこで、棒グラフの中で、注目したいインターネット広告のブロックを緑色でハイライトし、日本の広告市場の年平均成長率の変化を矢印の傾きと数値で明示する。そうすると、聞き手に解釈を委ねず、プレゼンする側が本スライドのメッセージとして伸び率の変化を正確な数値で伝えることができる。次に、同じデータを横軸に対前年比の成長率、縦軸に広告費を取り、各メディアの位置づけをプロットした散布図に加工する。こうすると、インターネット広告の存在感が高いなかで、テレビやラジオと連動したデジタル広告の市場が急激に伸びていることが分かり、棒グラフとは異なる論点でデータを言語化することができる。
こうしたプレゼン資料を提示して、経営層が分析に時間をかけることなく広告施策の意思決定までできれば、社内でデータの言語化が成功したことになる。「この例に限らず、データの分かりやすさは意思決定のスピードに直結します」と松塚氏は強調する。
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厄介なメッセージ加工を短時間で

データの言語化で注意したいのは「可視化」との違いだ。データ活用の初期では、データを項目ごとに分類し、グラフなどに加工、それらを整理して並べる。ここまでは、データの可視化の工程である。ここからさらに、データで伝えたい意図やメッセージをグラフなどに加えることが「言語化」となる。
「言語化」の工程は次の4ステップだ。
- ①
- データの意味や位置づけを分析して解釈する
- ②
- 組織内や社外に伝えたいメッセージをまとめて、シナリオを構築する
- ③
- データを加工・編集してビジュアライゼーションし、メッセージとして伝えたい情報を加える
- ④
- プレゼンテーションで伝える
データ言語化の肝となるのは、データのビジュアライゼーションとメッセージを加える③の工程だ。ビジュアライゼーションでは、データに適したグラフを選択し、伝えたいメッセージに合わせてグラフを調整する。注目してもらいたい箇所をハイライトし、重要な数値には解釈を加えていく。
ここで難しいのは、メッセージを伝わりやすい状態に加工することだ。操作に手間取っている間に時間が経ってしまい、メッセージが十分に伝わらない状態のスライドでプレゼンした結果、プロジェクトの進行が遅れることもあり得る。
think-cellはこうした問題を解決し、PowerPointのスライド作成を効率化するためのアドインツールを提供している。例えば、グラフ上でマウスを使ってクリックした2点間のデータの差分や変化率を自動計算し、その値を挿入したデータ解釈のメッセージを簡単に追加できる。また、スケールの目盛りをドラッグ操作で調整することも可能だ。プロジェクトの説明用スライドでは工程管理スケジュールをまとめたガントチャートを示すことが多いが、その期間や終了日の変更に応じた調整もマウスで簡単に操作できる。
スライドの自動作成や共有などAI機能対応へ

データの言語化をスピーディーに実行できるthink-cellはコンサルティング会社などから好評を得ており、世界で2万5000社以上が導入している。「有効なプレゼン資料を短時間で作れる“サクサク感”が売りで、PowerPoint業界のiPhoneと説明しています」(松塚氏)。
さらに同社は、PowerPointに特化した2024年内にAI(人工知能)機能のリリースを予定している。例えば、全社員が作成したスライド資料をページ単位でAI解析してデータベース化し、このような資料というテキストや絵などで検索すると関連度が高い順に並べた形で抽出できるなど、資料作成効率化を組織レベルで支援する予定だ。

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