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自治体DXフォーラム 2025 組織で挑む「タテ×ヨコ」DX
川口弘行

生成型AIで変わる公共調達の未来
職員の負担を抑えた公正な仕組みを実現する

自治体の調達業務は公正であることが必須になる。談合はもちろん、ベンダー側の誘導に乗せられることやプロセスの不透明化をどう回避するかが、自治体の重要課題となっている。この状況に対し、生成型AIの活用による公正な調達の実現を提案しているのが川口弘行合同会社だ。同社 代表社員の川口 弘行氏が、その狙いや具体的な活用方法を紹介した。

発生頻度は低いが責任重大
それが調達業務の難しさ

川口弘行合同会社 代表社員 川口 弘行氏
川口弘行合同会社
代表社員
川口 弘行
 地方創生に向け、カギを握るのが地域産業の育成だ。これを推進するためには、自治体が地元の事業者に積極的に仕事を配分することが重要になる。「実務の提供を通じて事業者を『打席に立たせる』。良き発注者になることが、自治体の持続的発展に向けて不可欠です」と川口 弘行氏は語る。

 一方、あらかじめ委託先ありきの発注では、互いに甘えが生じてしまう。公正な競争のもと、緊張感を持った取り引きを実現しなければ、地域産業の真の成長にはつながらない。

 「その意味で、自治体職員が行う調達関連業務は、難しく責任重大な仕事です。ところが、調達業務は発生頻度の低い仕事であり、在任中に一度も経験しない職員も少なくありません。責任重大な仕事を素人がやっている。ここに課題が存在します」(川口氏)

 責任重大な仕事の場合、仮に担当者が不慣れであっても、そのことを周囲には言いにくいものだ。熟練者のように振る舞ったり、ミスに気付いても見なかったことにしてしまったりするケースは少なくないという。

 「また、より重要なことは、担当者が法的にグレーな行為や違法な行為に手を染めてしまうリスクがあることです。例えば、ほかの自治体が作った調達仕様書をそのまま流用していないでしょうか。あるいはベンダーに仕様書を書かせたり、特定のベンダーに偏った仕様書を書いたりしてはいないでしょうか。自治体組織は、このような“調達の闇”に職員が落ち込まないで済む環境を整える必要があります」と川口氏は強調する。

公共調達に必須の仕様書を
生成型AIを使って作成

 まずやるべきは、調達プロセス全体を可視化して、トラブルの原因になるポイントを明らかにすることだ(図1)。  「予算編成を行う前には複数の事業者から参考見積もりを取り、これを財政部門への説明資料として使用します。参考見積もりのためには、調達の条件を記した『仕様書』を事業者に示さなければなりません」と川口氏。ただ、いきなり仕様書を作成するのは職員にとってハードルが高いため、お勧めなのはその前段階として「情報化企画書」を書くことだという。これを基に自治体内でディスカッションを行うほか、事業者からもRFIで意見をもらって仕様書を仕上げていく。

 「しかし現実には、このプロセスを適切に実践できている自治体は多くありません。そこで提唱したいのがAIを使うことです。人間とAIがタッグを組んで、仕様書作成作業を自動的かつ効率的に行える環境を整えるのです」と川口氏は述べる。

 同社が開発・提供しているのが「procureTech(プロキュアテック)」というサービスだ。推論型AIと生成型AI(ChatGPT)を組み合わせることで、自治体向け情報化投資事業や業務委託の調達仕様書作成業務を大幅に自動化する。

 初期条件を設定することで、調達仕様書の90~95%を自動的に作成できる。「100%ではないところが重要で、これをたたき台にして、様々な立場の職員の目線で仕上げることが肝心です」と川口氏は話す。

 同社の知見に加え、自治体向けの技術文書を参考にした情報も組み込まれているため、精度の高い仕様書を作成可能だ。具体的にはIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「情報システム調達のための技術参照モデル(TRM)自治体編」や「非機能要求グレード」などが含まれているという。

 「初めてでも1時間程度で仕様書のたたき台を出力できます。初版の作成を早めることで、調達プロセス全体の進捗を早めることができます。従来は1回しか回せなかった書類確認プロセスを2回、3回と回せるようになれば、仕様書の品質向上にもつなげられるでしょう」と川口氏は紹介する。

チャットベースのやり取りで
文書をブラッシュアップできる

 プロキュアテックの代表的な機能は大きく2つ。1つはチャットボット機能「プロキュアテックナビゲーター」だ。  「情報化企画書をつくるといっても、自分たちがどのような仕組みや製品を求めているのかを明確に言語化できない担当者は多いと思います。そこで、書きかけの情報化企画書をプロキュアテックナビゲーターに読み込ませて会話を重ねることで、ブラッシュアップしていくことができます。内容も最後に生成型AIがまとめてくれるので、文章作成が苦手な方でも心配いりません」と川口氏は紹介する。

 もう1つは「プロキュアテックAIエディタ」。これは情報化企画書と資料などを読み込ませることで、調達仕様書やRFI、見積費用総括表、プロポーザル審査表などを自動生成する機能である。こちらも、生成されたものを基にAIとの対話を行いながら編集することが可能だ。

 「さらにAIアシスタントという機能を使えば、ほかの自治体の仕様書を読み込ませて、機能要件などを抽出して参考にすることが可能です。複数の自治体の仕様書を複合的に参照しながら、質の高い仕様書を作成できるでしょう」と川口氏は付け加える。

 プロキュアテックは2025年4月にLGWAN-ASPに対応予定だ。サービス提供に当たっては、複数の自治体でCIO補佐官を務める川口氏自身の経験・知見に基づくアドバイスや支援サービスもセットで提供していくという。また、将来的には調達仕様書だけでなく業務マニュアルやセキュリティー実施手順書など、ほかの文書作成にも活用できるようにしていく計画だ。

 「プロキュアテックを導入することで、職員が“調達の闇”に踏み込んでしまうリスクを低減できます。このような仕組みを整えることが、地方創生を志す自治体にとって、非常に重要なのです」と川口氏は言う。地域事業者との良好な関係性を築き、良き発注者になる上で、プロキュアテックは自治体に多くのメリットをもたらすソリューションといえそうだ。
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